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僕の写真を使ってくれたnoteたち

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みんなのフォトギャラリーで僕の写真を使ってくれたnoteのうち、とくにみなさんに紹介したいnoteを集めました。
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#短編小説

【小説】 組員、全員老人 【ショートショート】

【小説】 組員、全員老人 【ショートショート】

 かつて三百人を誇る組員を有しており、その街を仕切っていた「大隈組」は暴対法の時代と共に規模を縮小して行き、今やかつての勢いは見る影もなく、衰退と共に組は年寄所帯へと成り下がってしまった。 

 会長は今年九十歳になる大隈源次郎。胃ろうの身体をベッドに横たえてはいるが、いつかやって来るその日を待つ眼差しには光の鋭さがわずかに残る。 

 組長山岡は今年八十三歳になるが、身体は草臥れていてもハキハキ

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【エゴ】偏りを海に浸ける【サドマゾ】

【エゴ】偏りを海に浸ける【サドマゾ】

偏りを海に浸ける

夜の浜辺を僕達は歩く。割れてしまった子供用の手鏡に、月がいくつも映り込んでいる。なんでこんな見え方になるんだろうか。この世には不思議でわからないことがありすぎる。寄せては返す波は時折大きく砂浜を侵食し、汀に転がる貝殻がカラカラと響かせる。ここ最近、目の前で次から次へと価値観が通り抜けていくのを見続けていたからか、僕は、僕というモノが何だかよくわからなくなっていた。

海は人間の

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【短編】視野の広さは大切

【短編】視野の広さは大切

MFがするべき訓練は、技術よりも、視野を広げることなのではないか。
それはサッカーをやったことがない私でも、この数週間で気付いた。

サッカーは本当によくできている。
攻めるか、守るかの二極化が激しすぎず、互いが適度に鬩ぎ合いつつ、選択肢を模索する余白が瞬間瞬間に存在する。この余白に、次の進撃への足掛かりを描く役割こそ、MFであるのだろう。
彼らは視野を広げ、様々な選択肢を頭の中に思い描き、最適な

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【過去作】横断歩道にて【垂れ流すPART2】

【過去作】横断歩道にて【垂れ流すPART2】

横断歩道にて

少しずつできないことが多くなってきて、指折りで数えられた不安は、両手の指では足りなくなりました。気づけば頭の中は不安でいっぱいです。最近横断歩道を渡るのがとても怖いのです。歩行者用の信号機の青色には歩き出す人間が描かれていますが、私は本当に進んでもいいんでしょうか?もしかしたら他の人間にだけに向けたサインで、私は渡ってはいけないという意味ではないですよね?もし違ったとしても、注意し

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千字戦(2回戦) お題「開いている」

千字戦(2回戦) お題「開いている」

「検討委員会」(874字/20分)

「それでは、戦略的な資産マネジメントの観点からよろしくお願いします」
と安田が言った。
ほがらかであった。

資産はわかる。
マネジメントもわかる。
資産マネジメントもわかる一応。
しかし、戦略的であることがなんかもうずっといまいちわからない。
だいたい何と戦わねばならんのかおれは、とにがにがしくおもいながらネクタイを直す。資産としての保全、運用についての私見

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短編小説 『だめになっちゃったんだな』

短編小説 『だめになっちゃったんだな』

 いつものように着替えて、いつものように家を出る。会社に行って働いて、うちへ帰ってきて、夕飯を食べて、眠りにつく。このサイクルを週六日繰り返す。休日は木曜日の一日、祝日も基本的に仕事だ。たまに友達と飲みに行く。チェーン店の居酒屋で、五千円くらいで飲み食いする。飲みに行く友だちは年々減ってきた。昔からの友人は、結婚したり子供が産まれたりしたからだ。今ではぼくの周りに残っているのは二、三人くらいのもの

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禁断の研究【短編小説#29】

禁断の研究【短編小説#29】

「何度やってもだめだ。あと少しなのに、何故なんだ。まだ僕にはできないのか。」少年は頭を掻きむしりました。

幼少の頃から神童と呼ばれた少年は、5歳で博士号を取得し、10歳になった今、医学者としてある研究をしています。それは、一度死んだ人間を甦らせる、禁じられた研究でした。

亡くなったおじいちゃんともう一度話をしたいという、純粋無垢な想いがきっかけで研究を始めましたが、うまくは進みません。

死ん

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波打ち際の記憶【短編小説(約5000字)】

波打ち際の記憶【短編小説(約5000字)】

 水平線の先の何もないはずの世界から流れてきたのは、かつての記憶だった。

 突然の大きな音に目を覚ますと、部屋に妻の姿はなかった。きっとまた新たな来訪者とやり取りを重ねているのだろう。相手への答えは、特別な理由がない限り決まっている。拒否された人物が入り口の扉の前で、怒鳴っているのだ。見なくても、彼女のそばにいかなくても、その光景は容易に想像できた。

 溜め息とともに、僕は気付けば時計の場所を

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駅のトイレ。【起】

駅のトイレ。【起】

緊張すると、腹が痛くなる。

電車通勤で会社までは、10駅ある。
毎日、だいたい4つ目の駅ぐらいで腹が痛くなり、8か9つ目の駅で降りてしまう。その降りた駅のトイレで用を足し、また電車に乗り会社へ行く。毎日そんな調子だ。だから、駅のトイレは、僕にとってなくてはならない空間だと思っている。

今日は、電車に乗る前から腹が痛み始め、6つ目の駅で降りた。手早くトイレのマークを探し、早歩きで男性用トイレに入

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【詩】傷口

【詩】傷口

君の気持ちを救ってあげる
君のための精いっぱいの思いを
君だけのために

僕ができるのはそれくらい
僕が辛いときに救ってくれたのは
君だから

君はいつだって素敵な人だ
君の地獄は僕がもらってあげる

僕にはそんな力はないけど
そばにいてあげるよ

僕の不幸な話を一緒に話そう
君の不幸話と一緒にして

いなくなるは僕の口癖
だって今でもこうして生きているから

僕はいつだって気がふれて
大声でいな

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【詩】白線

【詩】白線

最後は最悪だった
今も最悪の中にいる

白線を通り越し
助けに行く
助けに行く自分を
助けに行く

確認作業は自分の中にはない
他の誰かの価値で自分を
確認する

白線を越えて
手を伸ばして助けられたら
その手は何があろうと離さない
相手が憔悴し力を奪われても
まだ離さない

耐えられず逃げ出しても
自分につけた血液の赤で
それさえも許さない

自分以外の景色を見るなら
全ての時間を奪ってでも

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短編小説:くらげ〜いちばんすきな花・君を想うより〜

短編小説:くらげ〜いちばんすきな花・君を想うより〜

クラゲは自分で泳ぐことができる。
できるけども、波の力に打ち勝つ事はできず、結局ゆらゆら波に揺られて漂っている様に見える。
でも、実は必死に泳いでいるのだ。
そう見えないだけで。

俺と純恋のようだ。
俺と純恋はトモダチだ。
思い出しても何の話をしたか思い出せないような話をしたりする事ができるし、自分の恋人にも言えないような事を言えたり言われたりする。
もちろんそれで喧嘩したりもするけど、いつの間

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