ともきんぐ

元々文章を書くことなんてしてこなかったのですが、あることをきっかけに妄想爆発。時々オリ…

ともきんぐ

元々文章を書くことなんてしてこなかったのですが、あることをきっかけに妄想爆発。時々オリジナルもありますが、朝ドラスカーレットを中心に妄想二次小説を書いています。妄想なので、本編とは全く関係ありません。 とても短い話なので、よかったら読んでください。

マガジン

  • つよがり

    松下洸平君のデビュー曲つよがりから派生したお話を集めてみました。 「つよがり」の歌詞から広がるみなさんの世界が素晴らしいこと、素晴らしいこと。

  • 恋と愛〜最愛サイドストーリー〜

    ドラマ最愛の優の初恋の話です

  • 松下洸平ツアーP2Pより

    松下洸平ツアーP2Pより、セットリストからお話を書きました。

  • 体温より

    松下洸平さんのシングル、体温からインスパイアされたお話です。

  • 写真集「体温」より

    松下洸平さんの写真集体温からインスピレーションを受けて作ったお話です。

最近の記事

短編小説:やわらかもん(4)

自分はこの『市松屋』で何をしたいのか?何が足りないのか? 自問自答の日々が続いた。 あまりに考えすぎて、身体はどんどん硬くなり、頭はガンガン痛くなる。胃もキリキリと痛くなり所謂満身創痍、と言う状態になっていた。 そんな中、野田が会社の帰りにご馳走してくれると誘ってくれた。 正直、そんな体だった為、何か食べ物を食べたい。そう言う状態ではなかったが、野田に誘われるとなんだか断れない和樹がいて、素直についていった。 連れて行かれたのは、メニューが肉うどんのみしか無い古びたお店

    • 短編小説:やわらかもん(3)

      「あかん。無理に決まっとる、お父ちゃん気でも触れたか?!」 息子の和樹が、青ざめた顔で隆太郎にそう訴えた。 それは、パン事業の危機を数年かけて乗り越え、市松屋の新たな支店を難波にどうですか?と言う銀行からの打診に応え、隆太郎が出店を決めた、その翌日の話で、隆太郎はその店を、息子の和樹に任せる。そう言い出したのだ。 「お父ちゃん、第一俺、まだ大学生や。働いたこともない。そんな人間になんで任せられる?」 あわてる和樹に、隆太郎はにっこりと笑う。 「お父ちゃんかて、アホやな

      • 短編小説:やわらかもん(2)

        あったかいの食べたら、うまいんちゃうかなーと言う、少年の何気ない言葉に、隆太郎は雷に打たれたような感覚になった。 そうや、そうや!そうや!!そうや!!! 何で自分はお菓子を作っているのか? 幼い頃屋台で食べた玄米パンが出来上がる過程を見つめながらワクワクしながら食べた、あの時の自分のような顔を見たかったから。 そして、奉公先で初めてカステラを食べた時のあの柔らかい食感が忘れられなかったから。 お菓子は、出来立ての温かい時と、少し時間がたって冷めた時では別物のように味が変

        • 短編小説:やわらかもん(1)

          カランカランカラン!! 焼きたてのチーズケーキの出来上がりに鳴らす鈴の音だ。 お客様は、その音を聞くだけで、あのチーズケーキの柔らかい感触が、口の中いっぱいに広がるとおっしゃってくださる方が多い。 ありがたい ────────ありがたさと共に、僕はその音を聞くたびに、自分がリヤカーを引いて、洋菓子を手売りしていたあの頃を、思い出す───── 昭和31年 世の中は好景気に湧く中、隆太郎は1人打ちひしがれていた。 リヤカーの中にある売れ残った菓子たちを眺め、ため息をつく。

        短編小説:やわらかもん(4)

        マガジン

        • つよがり
          22本
        • 恋と愛〜最愛サイドストーリー〜
          4本
        • 松下洸平ツアーP2Pより
          11本
        • 体温より
          9本
        • 写真集「体温」より
          5本
        • 月の裏側
          3本

        記事

          短編小説:花が好きな君とそうでもない僕〜YOU&MEより〜

          花屋に勤める君が、すごい花束を抱えて僕のところに来た日を今でも鮮明に覚えてる。 なんなら、花束の花の色までしっかり覚えてる。 それくらいの出会いだった。 部屋の扉を開けると、視界いっぱいに広がる花束が僕を出迎えていた。 「おめでとうございまーす!」 え? おめでとうございます?  なにか祝われるような事があったかな? 僕は眠い目を擦りながら、それでもと朧気な記憶を掘り起こすが、そんな出来事はひとつも思い出せなかった。 「あ、えーと」 「すごいですねー!こんな大きな

          短編小説:花が好きな君とそうでもない僕〜YOU&MEより〜

          短編小説:くらげ〜いちばんすきな花・君を想うより〜

          クラゲは自分で泳ぐことができる。 できるけども、波の力に打ち勝つ事はできず、結局ゆらゆら波に揺られて漂っている様に見える。 でも、実は必死に泳いでいるのだ。 そう見えないだけで。 俺と純恋のようだ。 俺と純恋はトモダチだ。 思い出しても何の話をしたか思い出せないような話をしたりする事ができるし、自分の恋人にも言えないような事を言えたり言われたりする。 もちろんそれで喧嘩したりもするけど、いつの間にかまた元に戻って、何の話をしたか思い出せないような話をする。 だから俺たちは

          短編小説:くらげ〜いちばんすきな花・君を想うより〜

          短編小説:手が届く月(3)〜いちばんすきな花より〜

          久しぶりに2人で向かい合う。 私と椿君が住むはずだった家。 私がこだわって決めた家具たち。 そのソファに、私の知らない3人が座っていた。 それだけで、そこはもう、他人の家だった。 椿君の言葉を聞きたくて、勇気を振り絞って一度来たときは、荷物を纏めるだけで精一杯だった。 最後に「私に言う事ない?」って聞いてみたけど「駅まで送ろうか」と言う、ある意味見当違いな答えだった。 ああ、私ばかりが話をしていたから、いざ話そうとするとこんなにも話せない2人になっていたんだと、現実を突

          短編小説:手が届く月(3)〜いちばんすきな花より〜

          短編小説:手が届く月(2)〜いちばんすきな花サイドストーリー〜

          「純恋??」 森永君に話しかけられて、私はハッとする。 友人の森永君に誘われてご飯を食べて、少し散歩をしていたのだ。 私たちは小さな公園にたどり着いていて、そこには池があった。 今日は月がキレイで、水面に月が映り込んでいた。 「純恋も結婚しちゃうんだなあ。仲間で最後まで残った2人だったけど、ついに俺もひとりぼっちか」 そう言って森永くんは池に石を投げた。 「ぽちゃん」 と言う音と共に、池の月は割れて粉々になる。 「寂しい?」 私は森永くんの隣に座り込む。 「

          短編小説:手が届く月(2)〜いちばんすきな花サイドストーリー〜

          短編小説:手が届く月(1)〜いちばんすきな花より〜

          小さい頃、うんと高いところに登れば、月に手が届くと思ってた。 夜になったらジャンプして月に乗り移ってウサギと一緒に餅つきをする。  そんな事を本気でできると思ってた。 いつかな。 そんなこと、出来なんいんだよ。 そう思うようになったのは。 そんな事が出来ないと知ってから、私はそんな空想をしていた自分を封印した。 恥ずかしいとさえ思った。 いつの間にか純恋と言う名前でさえ、恥ずかしくなっていた。 『純粋に恋をする』なんて、いつまでも子供でいなさいと名前に言われているみたい

          短編小説:手が届く月(1)〜いちばんすきな花より〜

          椿の花言葉〜いちばんすきな花サイドストーリー〜

          「あの花を私と同じくらい愛して」        ────オペラ「椿姫」より 椿の花言葉には、「控えめな優しさ」「控えめなすばらしさ」などの言葉がある。 控えめ、控えめ。 まさに僕の人生を表していた。 昔から大人数が苦手で、大人数になるとマフラーを何重にも首に巻いて、息苦しい上に身動きが取れなくなってしまったかのように、その場でただいるだけの人間になってしまう。 でも、変に思われたくもないので、ニコニコと笑っていられる術は、いつのまにか身につけていた。 そのニコニコは、一

          椿の花言葉〜いちばんすきな花サイドストーリー〜

          短編小説:初恋じまい(3)〜体温より〜

          さっきまで抜けるような青空だった沖縄の空が、雲で覆われていた。 「あ、いつの間にか対流雲が出てる。雨降るかもしれない」 紗和がそう言ったと思った瞬間、雨がポツポツと当たってきた。海から上がる頃には、大粒の雨が降ってきていた。 「ちょうど良いな。天然のシャワーだ」 そう言って俺は両手を広げた。 その姿を見ながら、紗和が穏やかな顔をしていた。 「これが、浅い対流雲だよ。温かい穏やかな雨を降らすんだ。ね、敏樹みたいでしょ?」 「俺?」 「うん。今の敏樹の笑顔は温かい

          短編小説:初恋じまい(3)〜体温より〜

          短編小説:初恋じまい(2)〜体温より〜

          「でーと????」 突然の紗和の提案に、俺は少し声を高くして反応してしまい、そんな声を出した自分にびっくりして、なおさら大きな声になってしまっていた。 「うん。やり直すの」 「また付き合うって事?」 「ははは、それも良いかもね。でも、敏樹私の事好きじゃないでしょ?私は好きじゃないよ。ってごめん、嫌いとかそう言うのじゃなくて…えーと、そう、恋愛としての好きね」 「……まあ……10年ぶりに突然会っただけだからな」 「でしょ?だから、やり直すの。1日だけ。こんにちはから

          短編小説:初恋じまい(2)〜体温より〜

          短編小説:初恋じまい(1)〜体温より〜

          「ごめん、俺自信ないわ」 これが彼女との最後の会話だった。 高校2年で初めてできた恋人。 大切で大切で仕方なかったのに、新幹線で2時間の距離に引っ越してしまった。 それだけの事で、俺は彼女と付き合うことを諦めた。 それだけの事。 あの頃の俺には、それだけの事ではなかったはずなのだが、10年経った今では、それだけの事になってしまっていた。 空を見上げる。 いつもの曇り空が、俺の人生を表していた。 ⁂⁂⁂⁂⁂⁂ 「敏樹?」 そう声をかけられて振り向くと、そこには遠距

          短編小説:初恋じまい(1)〜体温より〜

          愛敬

          「愛太郎と名付けたらどうだろう、父さん」 それは健太郎がグアムに収監されてしまう、その朝の出来事だった。 お腹いっぱい食べなきゃダメだ、と朝から繁子さんたちが差し入れを持ってきて、お腹が膨れ上がるほど食べた、その後だった。 正直なところ、自分も健太郎も食事が喉を通らない日々だったが、みんなが食べろ食べろと押し付けてきたものだから、2人で無理して食べて、食べ物が通らないどころか、喉まで詰まってもう食べられない。そんな状態だった。 2人でちゃぶ台を囲みながら傍でスヤスヤと眠る

          キャッチボール〜舞台闇に咲く花観劇感想からのサイドストーリー〜

          灼きつく太陽 垂れてくる汗が勿体無いと思うくらい、喉が渇く。次第にふわりと気が遠くなる。 「パァン」 キャッチャーミットにボールが収まる音が聞こえる。 「ナイスボール!!健坊!」 そう叫ぶが、健坊はいない。 外を守る神田中のナインもいない。 誰もいない。 その時、身体がぶるっと震え、俺はハッとする。 ここは日本ではない、バリ島だ。 俺は捕虜としてバリ島の収容所にいた。 捕虜として生活する中、俺の心が折れそうになる時、必ず思い出されたのは、健坊とのキャッチボール。そし

          キャッチボール〜舞台闇に咲く花観劇感想からのサイドストーリー〜

          小さな花の咲くところ〜舞台闇に咲く花観劇感想からのサイドストーリー〜

          権太郎と名付けた少し色黒の赤子は、私の顔に手を伸ばし「きゃきゃきゃ」と笑った。 この神社、愛敬稲荷神社に捨てられたであろう事など関係なく、笑っていた。 私は目を逸らし、空を見上げると、完璧なまでの夏の青空が私を照らしていた。 私はこの赤子、権太郎の笑い声も、青い空も憎かった。 今の自分には手が届かない、届いてはいけない、見てはいけない。そんな資格はない。 私は私の職務で、この愛敬稲荷神社の光であった健太郎さんを、また失わせてしまったのだ。 そんな自分が憎かった。殺してやり

          小さな花の咲くところ〜舞台闇に咲く花観劇感想からのサイドストーリー〜