yoshida saburou

とある教育者、海外教育大学院への進学に向けて勉強中!/「Leadership, Org…

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とある教育者、海外教育大学院への進学に向けて勉強中!/「Leadership, Organizations, and Entrepreneurship」/全人格教育、民主主義教育、言語技術、読書教育、教育哲学など興味関心多め/趣味で短編小説書いてます!

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シン・桃太郎【短編小説#30】

「はい。・・・・・・・・・流しました。・・・・・・・ええ。間違いなく。・・・・・・そうです、鬼ヶ島に桃を流しました・・・・・。」 むかし、むかし、鬼ヶ島にはお爺さんとお婆さんが山に住んでおりました。 鬼ヶ島には、鬼が住んでいるという噂がありましたが、鬼などは住んでおりませんでした。ただ、鬼を信仰の対象とする人間が住んでおりました。 ある日、お婆さんが川で洗濯をしていると、どんぶらこ、どんぶらこ、と上流から大きな桃が流れてきました。 お婆さんは驚いて、その桃を拾い上げ、

    • できれば仕事のできる猫の手を借りたい【短編小説#39】

      猫の手も借りたいというが、誰でも良いという訳ではない。 ある程度知見があって背景も理解していないと、逆に説明が必要になったりして手間を取られることがある。 とは言え、猫の手も借りたいほど追い詰められている。人がどんどん居なくなったのに、不足要員を埋めずに、残っている人で業務を分担し、プロジェクトが走っている。 「あー猫の手でも借りたいよ〜。おててを貸してくれるキャワイイ猫ちゃんいないかな〜。」と誰もいない筈のオフィスで嘆いたら、「お貸ししましょうか?」と返事があった。

      • 「宜しくお願い致します。」以外のことば【短編小説#38】

        A氏は今週一回も布団で寝れていない。税理士にとって、2月は繁忙期真っ只中。しかも、中堅中小企業向けのM&Aサービスを展開する企業の代表取締役もしているので、24時間フル稼働していた。 十分に睡眠時間も取れていないので、集中がすぐに切れる。深夜12時頃にメールを打っていると、ふと「宜しくお願い致します。」の文字が気になった。 「宜しくお願い致します。」って形式だよな。ここに想いはほぼ込もっていない。何を宜しくお願いしているのか分からない文面もたまにある。これに代替する言葉は

        • オカカ60%チョコレート【短編小説#37】

          「勝てない。これじゃあ、他の人に埋もれてしまう。」A子は焦っていた。 想いを寄せるB氏に心を込めたチョコを贈りたい。でも、彼は人気者なので、おそらく美味しいチョコが沢山届くだろう。それを思うと、差別化しないと記憶には残らないと思った。 どうすれば頭ひとつ抜けることができるか。少し大人なB氏のことを思い、カカオ含有量60%のハイカカオを考えていた時に閃いた。カカオじゃなく、オカカにすれば面白いのでは、と。 おそらく甘いものばかりで、しょっぱいものが食べたくなる。そんな時に

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        シン・桃太郎【短編小説#30】

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          非暴力のウルトラマン【短編小説#36】

          この星のウルトラマンは暴力を否定する。 暴力では問題の本質を解決できないと考えているからである。 ではどうするか。 まず、ウルトラマンは暴れて言うことを聞かない怪獣を強く抱きしめる。 怪獣は暴れたくて暴れている訳ではない。誰も救いの手を差し伸べず、一人で苦しみ続けたから、自暴自棄になって暴力でしか表現できなくなっているのだ。だからこそ、ウルトラマンは相手を強く抱きしめる。 どんなに暴れていた怪獣も30秒程経つと、不思議と落ち着いてくる。抱きしめられる力が強すぎて、そも

          非暴力のウルトラマン【短編小説#36】

          天国に後悔はあるか【短編小説#35】

          地獄はやったことの後悔が充満していて、天国はやらなかったことの後悔が充満しているらしい。 せっかくなので、天国に行き、直撃取材をしてみることにした。 「あのーすいません。あなたは自らの私財を投じて学校を建てたり、給食を手配したりと、教育者として多くの児童に笑顔を届けた功績で、天国に送られたと伺いました。ちなみに生前の後悔はありますか?」 「そりゃありますよーー。自分の時間がほとんど取れなかったですから。世界遺産巡りとかしたかったですし、常夏のビーチでぼーっと日焼けをしな

          天国に後悔はあるか【短編小説#35】

          朝の一杯は白湯に限る。【短編小説#34】

          80歳を超えるお婆ちゃんが一人で切り盛りする蕎麦屋さんは、朝から客で賑わう。特段美味しくないそば、210円。 しかしほとんどのお客はそばを目当てに毎朝来ていなかった。 そばと一緒に出される、白湯を飲みに来ていたと言っても過言ではなかった。 蕎麦湯などではない、ただの白湯である。特に何もしていない、水道水をやかんにいれて沸かした白湯である。それなのに、家では再現できないような優しい味があった。 お蕎麦以上に白湯がうまいとお客が言うので、怒ったお婆ちゃんが、一時期白湯を出す

          朝の一杯は白湯に限る。【短編小説#34】

          足の小指は自分から角にぶつかっている【短編小説#33】

          もう限界だ。朝からカンカンに怒っている。 カンカンのプンプンである。プンプンのプンスカプンスカである。 朝、目覚ましなしで早起きができた。目覚めも最高。いつもより時間に余裕を持って準備ができたので、優雅な気分で朝ごはんを食べることができた。そろそろ出発しようとして、お皿をキッチンに運ぼうとした、その時!足の小指を机の角にぶつけた。 のたうちまわった。痛過ぎた。血が出てると思った。出てはいなかったが、確実に折れたと思った。それほど痛かった。どうして?どうして、私のテンション

          足の小指は自分から角にぶつかっている【短編小説#33】

          予行演習殺人【短編小説#32】

          「何故こうなってしまったのか。」 両手両足を縛られた男は必死になって湖の上でもがいていた。 ある時、友人との飲みの場で予行演習の話になった。何の予行演習かといえば、手足を縛られた状態で海に放り出された時に、無事に生還するための予行演習である。 物騒な世の中、何が起こるか分からない。仮に海に投げ出された時に、一度経験があるだけで生存可能性が格段に上がるはずだと友人は言った。 確かに私もそう思った。求められるのは、泳ぎ方などの技術的な面よりか、むしろ何がなんでも生き抜いてや

          予行演習殺人【短編小説#32】

          どこまでいってもカレーはカレー【短編小説#31】

          日本一に輝いたカレーを食べても、残念ながらカレーの範疇を超えない。どこまでいってもカレーはカレーであることに満足がいかなかった。 目から鱗!こんなカレー食べたことない!これは間違いなく一位だ。 というカレーを探し続けたが出会えなかった。 そこで、男は自分が理想とするカレーを自らの手で作ることに決めた。付き合ったらダメな男の3Cは、カメラマン、クリエイター、カレーをスパイスから作る男というのを聞いたことがあるが、そんなの関係ない。 カレーベースに含めるホールスパイスやパウ

          どこまでいってもカレーはカレー【短編小説#31】

          禁断の研究【短編小説#29】

          「何度やってもだめだ。あと少しなのに、何故なんだ。まだ僕にはできないのか。」少年は頭を掻きむしりました。 幼少の頃から神童と呼ばれた少年は、5歳で博士号を取得し、10歳になった今、医学者としてある研究をしています。それは、一度死んだ人間を甦らせる、禁じられた研究でした。 亡くなったおじいちゃんともう一度話をしたいという、純粋無垢な想いがきっかけで研究を始めましたが、うまくは進みません。 死んだ人間が息を吹き返し、話をすることはできるのです。しかし、生き返った人間は、生前

          禁断の研究【短編小説#29】

          地球の心音【短編小説#28】

          ここ最近、地球の心音が著しく弱い。 鼓動が聞こえにくくなっている。 医者の顔が曇っており、その表情を見る国連環境計画の職員も心配な顔をしている。 医者は地面に当てていた、聴診器を外した。 「正直、かなり厳しい状況だと思います。以前は体調を崩してもまた元に戻っていたんですが、ここ一年はずっと悪い調子です。」 動物以外の心音を聞き取れる聴診器を持つ、その医者は額の汗を拭った。地球の心音を聞き取れる場所は限られており、赤道付近とされているが、場所は公表されていない。 職員

          地球の心音【短編小説#28】

          新しい観光地を作る仕事【短編小説#27】

          新しい観光地を作る仕事 いえいえ、こちらこそです!私たちの取り組みが少しでも多くの人に伝われば、これほど嬉しいことはございませんので、遠慮なくご質問されてください。 (質問を受ける) ありがとうございます。 既にご存知いただいているかと思うのですが、私たちは、新しい観光地を作る仕事をしております。新しく作ると言っても、公園を作ったり、博物館を建てたり、お金をかけて一から新しく作りましょうということではございません。誰かの思い出の場所をみんなにシェアしましょう、色んな意味

          新しい観光地を作る仕事【短編小説#27】

          どうして古文を勉強するのか【短編小説#26】

          生徒A「先生、古文なんて学んで、将来何の役に立つんですか?」 待ってましたと言わんばかりに質問に質問を重ねてみる。 先生「では、君は将来役に立つことしか、価値がないと思うのか?将来、プロの演奏者にならないのに、吹奏楽部に入ってるのはなぜだ?一生続ける訳でもないのに。」 生徒A 「吹奏楽は一生、趣味として楽しめます!」 先生「じゃあ、古文も趣味として楽しむ可能性があるだろう。」 生徒A「絶対にないです!休みの日に古文なんて読む人の気が知れません。」 先生「絶対かどう

          どうして古文を勉強するのか【短編小説#26】

          嘘をつく新聞【短編小説#25】

          あの新聞は嘘をつく。 事実ではないので、読むに値しない。 と、創刊当初の評判は散々なものだった。 それが今ではどうだろう。皮肉なことに、大手新聞社と肩を並べる程の部数を誇っている。 紙媒体はなし。全てオンライン上の記事である。 他の新聞とまったく異なる特徴。それは、嘘が散りばめられていることである。書かれているのは、事実と嘘。 例えば、あるQ新聞社が記事にした、東京都で起きた殺人未遂容疑者逮捕の内容。 そこには、殺された男性の年齢と現場の状況、容疑で逮捕された相手の

          嘘をつく新聞【短編小説#25】

          筆が走る。【短編小説#24】

          年末年始を十分に休んだ筆が、そろそろ走りたくなってきたと言った。いつ走り出すのだろうかと、丁度気になり始めた頃だったので、丁度よいタイミングだと思い、筆に紐をつけて走らせることにした。 大学ノートを広げて、その上を走らせようとしたのだが、筆が 「こんな狭いところじゃ嫌だ。もっと、自由に、もっと遠くまで走らせてくれ。」 と言うので、好きなところを自由に走らせることにした。 そしたら、何の遠慮もなく家のフローリングに書いたり、壁に書いたり、机の上に書き出したりしたので、こ

          筆が走る。【短編小説#24】