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筆が走る。【短編小説#24】

年末年始を十分に休んだ筆が、そろそろ走りたくなってきたと言った。いつ走り出すのだろうかと、丁度気になり始めた頃だったので、丁度よいタイミングだと思い、筆に紐をつけて走らせることにした。

大学ノートを広げて、その上を走らせようとしたのだが、筆が

「こんな狭いところじゃ嫌だ。もっと、自由に、もっと遠くまで走らせてくれ。」

と言うので、好きなところを自由に走らせることにした。

そしたら、何の遠慮もなく家のフローリングに書いたり、壁に書いたり、机の上に書き出したりしたので、これは溜まったもんじゃない、家が真っ黒になってしまうと焦り、家の外に出すことにした。

外の冷たくて、おいしい空気を吸って、気持ちが昂ったのか、ペンはさらに駆け出した。

「どこまでも、いつまでも走れそうだ!よーし!走って走って走りまくるぞ!」と言って、自由に筆を走らせまくっていた。

ところが、10分程すると、トコトコとこちらに帰ってきた。

どうしたんだ、もう辞めるのか。と聞くと

「休み明けから全力で走るのは良くない。明日も走りたいなと思うくらいで辞めるのが丁度良いんだ。」と言って、家の中へ帰っていった。

筆の言うことは間違いない。
今年もぼちぼちやっていこうと、私も早々に暖かい家に帰ることにした。

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