オカカ60%チョコレート【短編小説#37】
「勝てない。これじゃあ、他の人に埋もれてしまう。」A子は焦っていた。
想いを寄せるB氏に心を込めたチョコを贈りたい。でも、彼は人気者なので、おそらく美味しいチョコが沢山届くだろう。それを思うと、差別化しないと記憶には残らないと思った。
どうすれば頭ひとつ抜けることができるか。少し大人なB氏のことを思い、カカオ含有量60%のハイカカオを考えていた時に閃いた。カカオじゃなく、オカカにすれば面白いのでは、と。
おそらく甘いものばかりで、しょっぱいものが食べたくなる。そんな時にしょっぱいチョコを食べると、気が利いているなと彼は喜んでくれるのではないだろうか。
決断は早かった。A子はオカカ60%のハイオカカチョコレートを作り上げた。見た目は悪くない。そして、一口食べた。うまい。これはヒットするかもしれないと思った。何よりも米が食いたくなった。
一見、米に見えるホワイトチョコをセットにすれば面白いのではと思ったので、それも即行動。米に見えるホワイトチョコを作り、オカカチョコレートと一緒に食べてみた。これは違った。オカカを食べた後は完全に口が米の口になるのだ。なのでホワイトチョコは逆に嫌悪感さえ抱いた。
やはり、ここは米を合わせようと思った。美味しい炊き立ての白米を三角形にして握った。よし、これで完璧だろう。オカカチョコレートの後に米を食った。うまい。うまいのだが、何かが違う。
ビターなオカカチョコレートと言えど、オカカではなくやはりチョコレート。口の中で溶けたチョコレートが米と噛み合わなかった。
A子はその後も試作を重ねた。そしてようやく完成した。
次の日。
「暖かいうちに食べてね!」とお昼にA子はB氏に渡した。暖かいうち?どういうことだろう。気になったB氏は早速お昼に食べてみようとした。箱を開けるとそこには、暖かいオカカおにぎりが入っていた。
B氏はお腹が減っていたので、一口食べてみた。美味しい。お腹も空いていたので、ぺろっとすぐにオカカおにぎりを平らげた。
「そうか、カカオとかけているのか」と、B氏は微笑んだ。可愛らしい人だなあと思った。
完
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