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映画・本・ドラマ

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映画やドラマや本について、レビューというより個人的な感想をつづった文章。
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記事一覧

『身体知性』とソフトゾーン

『身体知性』とソフトゾーン

 『身体知性』を読んだ。
 著者の佐藤友亮さんは現役のお医者さんで合気道家でもあるそうで、西洋医学的な観点と東洋医学的な観点、両方にしっかり裏付けされた身体論でとてもためになった。

 私はどちらかといえば、というか、確実に知識よりも感覚寄りで生きているので、解剖学的な用語とか西洋医学的な分析的な文章を見ると、それだけで、うっ、と苦手意識が出てくるのだけれど(一応ボディーワーカーなのに!)、この本

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【本】『メイドの手帖』・お金のこと

【本】『メイドの手帖』・お金のこと

『ブッシュ妄言録』の頃から好きでゆるゆる追いかけてきた翻訳家の村井理子さんの訳が読みやすくて、二日くらいであっという間に読み終えました。

「最低賃金でトイレを掃除し『書くこと』で自らを救ったシングルマザーの物語」という副題どおり、妊娠をきっかけに貧困状態で暮らすことになった著者のステファニー・ランドが掃除の仕事をしながら、一人で娘を育て、書き続け、生きる道を切り拓いてきた道程の物語です。

読ん

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【映画】『ソウルフル・ワールド』

【映画】『ソウルフル・ワールド』

ピクサーの映画は楽しいなあ。
映像の表現が細やかで、音楽も良くて、観ながら自分の魂もよろこんでいる感じがしました。

描かれている世界がきらきらしていて、すごくきれい。
そして、体があるからこそ味わうことのできるいろいろなよろこびや不便さ、ああ、でもこれが生きる醍醐味なんだよね、っていうところが、とても丁寧に描かれているのも好きでした。

この内容は大人向けでは?なんて声もあるけれど、子どもたちの

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【映画】『燃ゆる女の肖像』

【映画】『燃ゆる女の肖像』

 「燃ゆる女の肖像」を観た。

 まさに絵画みたいに綺麗な映画だった。海の青に、緑と赤のドレス。
 見せるところは鮮やかに、大胆に、でも他はきっぱりと切り捨てるミニマリストな感じ、フランスっぽいなあと思った。そして、裸になっちゃうと何かもうあっけらかんとしちゃって、それよりも何気なく過ごしている場面の方が詩的で官能的なところも。
 そして、ラストシーンがすごかった。このシーンのためにそれまでのすべ

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【本】『猫だましい』ハルノ宵子

【本】『猫だましい』ハルノ宵子

 ハルノ宵子さんの「猫だましい」を読んだ。
 それはそれはすごい本だった!文章も絵も素晴らしかった!

 ジャンルは闘病記、なんだけれど、ここまで気風がよくて肝が据わって笑えて生きる意欲があふれてくる闘病記は読んだことがない。
 妹の吉本ばななさんがエッセイや対談で東京の下町で育って~という話をよくされていて、そういう描写を読むたびに何だかワイルドでめまぐるしくて鮮やかな感じでかっこいいなと思いは

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【ドラマ】『40歳の解釈:ラダの場合』

【ドラマ】『40歳の解釈:ラダの場合』

 いきなり、ちがう作品の話からだけれど、この間、Netflixにおすすめされて見た「エノラ・ホームズの冒険」が、変わった母親(ヘレナ・ボナム・カーター)に育てられたシャーロック・ホームズの妹(ミリー・ボビー・ブラウン)が活躍する物語で、それを邪魔する寄宿学校の校長としてフィオナ・ショウも出ているし、設定も役者も「セックス・アンド・ザ・シティ」風の画面に向かって話しかける撮り方も、すべておもしろくな

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ザワークラウトの思い出

ザワークラウトの思い出

 小さい頃、『大どろぼうホッツェンプロッツ』シリーズが好きだった。
 一冊目の表紙には、ばーんとわし鼻でひげぼうぼうのホッツェンプロッツの顔が大きく描かれていて、その鮮やかではっきりした色使いは、家にあったほかのどの本とも違っていた。
 ホッツェンプロッツは悪い泥棒とはいえ、大人になって思い返してみれば結構にくめないキャラクターだったのだけれど、主人公の男の子たちが誘拐されたり殺されそうになったり

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たかのてるこさん

たかのてるこさん

タイから帰国したすぐ後、友だちと企画していたイベントも、申し込んでいた瞑想合宿も中止になって、ぽっかりスケジュールが空いた時期に一気に読んだのが、まとめ買いしていたたかのてるこさんのエッセイだった。

一冊ずつそれぞれの国を訪れるつもりでゆっくり読もう…と思っていたのだけれど、一冊開いたら止まらなくて、一週間足らずでむさぼるように三冊ともあっという間に読み終えてしまった。

体はほとんどずっと家に

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もどってきたアミ

もどってきたアミ

「アミ 小さな宇宙人」の二作目、「もどってきたアミ」を実家で久しぶりに読み返した。

って、今、リンクを貼ろうと思ってアマゾンで検索したら、両方ともすごい値段でびっくり!絶版になってしまったのかしら。とてもいいシリーズだから、復刻してほしいものです。

アミのシリーズを初めて読んだのは多分もう10年以上前のこと。その時は今思えば、すごく頭で理解したつもりで読んでいた。それから、何度も何度も読み返し

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初期設定を思い出す

初期設定を思い出す

吉本ばななさんの『「違うこと」をしないこと』を、読み返していた。
去年の10月に出た本なので、まだ半年も経っていないのに、もう何度目かわからないくらい。あちこち持ち歩いて、お風呂にまで持ち込んでいるので、すでに表紙はひよひよです…。

初めて読んだ時、この本は節目ごとに絶対読み返したくなる本だと確信したのだけれど、半年で、どれだけ節目を迎えているのかという読み返しっぷり。
でも確かに思い返してみれ

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