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【映画】『燃ゆる女の肖像』
「燃ゆる女の肖像」を観た。
まさに絵画みたいに綺麗な映画だった。海の青に、緑と赤のドレス。
見せるところは鮮やかに、大胆に、でも他はきっぱりと切り捨てるミニマリストな感じ、フランスっぽいなあと思った。そして、裸になっちゃうと何かもうあっけらかんとしちゃって、それよりも何気なく過ごしている場面の方が詩的で官能的なところも。
そして、ラストシーンがすごかった。このシーンのためにそれまでのすべてがあって、すべてがそこに集約されている、その迫力と潔さに感動した。
タイトルの「燃ゆる」は比喩かと思っていたら、ほんとうにドレスが燃えていたからびっくりした。あの時代のフランスの女性たちはあんなドレスで走ったり部屋を片付けたり活動していたんだなあ、めちゃくちゃ動きづらそうだ。
日本語字幕で二人の会話がずっと丁寧語だったのが、身分が違うことを表しているんだろうか…と、気になっていたのだけれど、調べてみたら、フランス語でも、二人はずっとちょっと距離のある人に対して使う丁寧な「あなた」を使って話しているのだと書いてあった。
でも、最後の最後、エロイーズがマリアンヌに叫ぶ台詞だけは、友人や親しい者同士で使う「あなた」で呼びかけているのだそう。
思い返せば日本語の字幕でもそれは表現されていたけれど、たぶんフランス語がわかる人が感じるほどの強烈なインパクトではなかっただろうと思うし、英語字幕だったらスルーしていたんじゃないかと思う。
言語って大事!
どんなに強く惹かれ合っても、二人の間には常にその立場の違いを明確にし続ける言葉が立ちはだかっていたのだ。最後の一瞬、エロイーズがその壁を壊すまでは。
だからこそ、言葉のないラストシーンの力強さが際立つんだなあと改めて思った。
以前に、祖母が結婚する前に好きだった人のことを話してくれたことがある。
お見合いして、結婚して、引っ越して、それっきり。今はどこにいるかもわからないけれど、もし会えるなら一番会いたい人かもしれないねえ、と言っていた。
今の時代は自由だし、テクノロジーも発達しているから、人との関係性や思いをどんどん深く追い求めていくことや、終わらせずに何となくつなげておくこともずっとやりやすくなっている。
でも、昔は、昇華されないままの思いや完了しないまま、始まりもしないままの関係がもっとたくさんあったのだろう。それは切ないことでもあるけれど、すごく好きだった誰かを、その人と過ごした人生のひと時とその人への気持ちを、純粋なままで自分の胸の中だけに抱いて生きていく、それもある意味、豊かで幸せなことでもあったんじゃないかなあ、と、ないものねだりかもしれないけれど、今の時代に生まれた私は思うのだ。
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