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日本の高校の不思議

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日本の公立高校に13年勤務して感じた不思議あれこれ綴ります。
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記事一覧

自己犠牲が生徒愛ではない

自己犠牲が生徒愛ではない

私は教師の時に自分の子どもの運動会でお休みを取ろうとしたら、自分のこどもは可愛いのに他人の子どもはどうでもいいんですね、と言われたことがあります。

誰よりも生徒を大事に思っていたので、思い出しても悲しい。

私が日本の教育に変わってほしいのはこんなところ。

「できたらすごい」 けど のあとの空気

「できたらすごい」 けど のあとの空気

私は教師時代に色々と提案をして管理職や同僚に「できたらすごいけど、、、」と言われたことが2回あります。

1回目は「それはできたらすごいけど、他の学校でやるもの」といわれました。
2回目は「それはできたらすごいけど、うちでは無理」でした。

学校にお金がないことも、人が足りないことも、生徒に何ができてできないか、など知った上でもっと良い教育を提供するのはと考えて提案するのです。別に行き当たりばった

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キケン!「こども(生徒)のため」論

キケン!「こども(生徒)のため」論

こんにちは。

私は、アメリカの大学院で日本の公立学校の特殊性について「空気を読む」といった点から(特に教員)が教育の質や教員の働く環境にどのように大きな変化をもたらせるか考えています。

今日は、「子どものため」議論の危険性について共有します。

みなさんは気がついていますか。特に公立学校では教員の議論が煮詰まってくると「こどものために」が正当化の盾として使われることがあるということに。そしてそ

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海外経験が活かされない日本の教育現場、は本当だった(のか)

海外経験が活かされない日本の教育現場、は本当だった(のか)

私は2019年度にワシントン州へ派遣教員として1年間赴任し、公立高校🇺🇸で1年勤務しました。教員になる前にもアメリカでMAをとり、帰国後はJICAで勤務。海外経験は平均以上だったと思います。

だからこそ、教師になったらその経験を思う存分届けたいと思っていました。
でも、それができた感覚は低い。

昨日、日本の文献にあたっていて、帰国した海外派遣教員の研究が驚くほど少ないことに気がつきました。

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教員研修の不思議:10年目の研修はアンガーマネージメント!?の謎

教員研修の不思議:10年目の研修はアンガーマネージメント!?の謎

渡米前に、ずっと保留にしてもらっていた10年研修(の一部)をオンラインで受講しました。

指導要領を読み込んで、授業の振り返りをする機会があるのはありがたいものの、全体的になんとなく違和感を覚えるところもあったので、記録しておきます。

それは何かというと、教師のアンガーマネジメント関連の研修が多いということ。
10年研修という特性かもしれませんが、
アンガーマネージメントだけでなく、倫理観の醸成

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6月はプライド月間🌈授業で話してみませんか。

6月はプライド月間🌈授業で話してみませんか。

6月はPride Month と言って、日本でもプライド月間と訳されていますが、LGBTQ+コミュニティについて考えたり彼らの社会に与えるインパクトについて認識する月です。

Googleで”What is pride month”と検索するとハートのアイコンが出てきます。是非、やって見てください。可愛いですよ。
それを押すとたくさんの旗が降ってきますが、その旗の意味をご存知ですか。LGBTQとい

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授業で海外の話をもっとしよう

授業で海外の話をもっとしよう

昨日投稿した話に関連しますが、アメリカの高校の話などをすると生徒は「へ〜!」とか「ほ〜!」とか驚きのリアクションをすることがあります。

例えば、昨日は「アメリカの学校には2ヶ月半ぐらい夏休みがあって宿題がない」と知り、のけぞる生徒が多発しました(笑)

「アメリカの学校の夏休みが長い」とか「宿題がない」というのはもう結構誰でも知っている事かと思っていましたが、意外にもリアクションがあったので、や

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公立教員年休取得マニュアル:独身だからこそ年休を取ろう

公立教員年休取得マニュアル:独身だからこそ年休を取ろう

先日、ツイッターで

「家族もいないのに年休をとっていいのか」というつぶやきを目にしました。

それに対して、「もちろんいいですよ!」というコメントも多かったのですが、「独身だと取りにくい」とか「遊びに行くと思われ」るといったようなコメントもあってと同じ公立高校教諭として気持ちが痛いほどわかりました。

そこで、今日は年休についてのわたしの考えを少しご紹介します。
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批判的思考 VS 空気を読む力

批判的思考 VS 空気を読む力

「批判的思考が低い日本の教師に、批判的思考を育む授業はできない」という記事を見たことがある人も多いのではないでしょうか。ニューズウィーク日本版に出ていた以下の記事です。私も同様のことに問題意識を持っていたので、そういう視点を発信している方がおられることに驚きました。

そして、今日またこの記事を二度目に目にしてまたはっとしました。
それはこの箇所↓。

風変わりなことや批判めいたことを言うと嫌われ

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先生も結構グサッときます

先生も結構グサッときます

今日こんなことがありました。隣の席の先生が生徒に嫌なことを言われたそうでとても落ち込んでいたのです。落ち込んでいたと言うよりは怒っていました。

何十人も、何百人も一人で教えていたら、中には心無い言葉をかけて来る生徒もいます。高校生にもなると相手も一人前です。何を言われても受け止めることができないこともあります。言ったや言わないやで生徒が教室からでて行くこともあります。

かつて教えるのもままなら

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What did you do on the weekend?" に答えられない日本の生徒をどう考えるか

What did you do on the weekend?" に答えられない日本の生徒をどう考えるか

長期休暇や連休後の英会話の授業で良くあるのが、お休み中に何をしたか?というやりとり。

もちろんこれは日常会話では雑談の一種で、コミュニケーションのとっかかりになるようなたわいもないものでもあります。

でも、それが言えない生徒が本当に多い。

そして、私の問題意識は、それは英語の能力の問題だけでないと言うこと。

もちろん文化的な違い(月曜日や休み明けに週末の話や休みに何したかなんてまず話さない

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「自分が何者か」を考える時間を学校でもっと作ろう!

「自分が何者か」を考える時間を学校でもっと作ろう!

アメリカの大学院の授業で「文化」について考える時間が続いています。文化の認識には「他(the other)」の存在が不可欠で、誰に対して説明する必要があるのか、そしてそれはなぜかなど、根本的な言語の定義をする作業です。以下はその作業に連動したメモです。

例えば、私の興味関心であるコンピテンシーの考えは西洋的な考えかもしれませんが、それが日本でなぜ必要かといえば基本的には対外的に必要になる能力だか

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どんな生徒を育てたいかの議論はどこでする?

どんな生徒を育てたいかの議論はどこでする?

教員の働き方改革についての議論は随分と脚光を浴びてきたけれど、現場の教員が本当はどのような生徒を育てたいと思っているかという議論は個人レベルでしかありません。今の学校教育では責任を持って生徒を未来に送り出せないと思っている先生方って、実は、たくさんいると思います。

そのような「声」はどうやって政策に反映されるのでしょうか。

「本校で育てたい生徒像」についての議論をすることが難しいのが公立高校の

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やっぱり愛だね

やっぱり愛だね

教師の仕事って何年も続けてたら、人間相手でも意外に機械的に出来るものなんです。虚しくなるので、あまり掘り下げませんが、授業にしろ事務作業にしろ流れ作業的にできてしまうようになっています。

これも教職を10年以上続けて自分の経験や、周りの様子から見えてきたものです。だからこそ、生徒への声かけも、授業の計画も、授業中にどの生徒に気をつけて進めるかを考えることも、テストの内容も、生徒の名前を覚えるのも

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