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2024年6月の記事一覧

ハードボイルド書店員日記【192】

ハードボイルド書店員日記【192】

<いずれにせよ>

荻窪にある本屋Titleの店主・辻山良雄さんが書いた「しぶとい十人の本屋」(朝日出版社)が売れた。購入したのは眼鏡をかけた女性。
Titleは私にとって理想的な本屋のひとつだ。思わず話し掛けようとし、カウンターへ置かれたもう一冊に気づく。寄藤文平さんの本。「しぶとい~」の装丁は彼と垣内晴さんの仕事である。
本を買う目的や理由はひとつじゃなくていい。いずれにせよありがとうございま

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「全国チェーン」「街の書店」「コミュニティ」

「全国チェーン」「街の書店」「コミュニティ」

6月14日にオープンした「八重洲ブックセンター グランスタ八重洲店」へ行ってきました。

JR東京駅で降りるのは久し振り。「八重洲地下中央口」を出たら「ゴディバ」や「ゴンチャ」のある方へ向かい「ゴンチャ」の横を通って右折すると右手に見えてきます。他にも「中央口」という名の付く改札があるので注意してください。

同じような広さの他店と比べ、コミックが少な目でした。場所柄や客層に合わせたのでしょうか。

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「読書家レスラー」と「7年前の確信」

「読書家レスラー」と「7年前の確信」

「みんなが本を読めば争いごともなくなると思います」

↑は新日本プロレスの社長・棚橋弘至選手のコメント。書店で働く本好きににとって励みになる一言です。ありがとうございます。

彼はかなりの読書家です。確信したエピソードをひとつ紹介させてください。

2017年の夏に開催されたG1クライマックス。棚橋選手はバッドラック・ファレ選手にリングアウトで勝ち「枯れた技術の水平思考」というコメントを出しました

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「それだけが正解じゃないよ」とささやいてくれる一戦

「それだけが正解じゃないよ」とささやいてくれる一戦

2016年の夏。

プロレスラー・鈴木みのる選手が経営するアパレルショップ「パイルドライバー」へTシャツを買いに行きました。

店番をしていたのは、佐藤光留(さとう ひかる)選手。当時彼は全日本プロレスで青木篤志選手と抗争を繰り広げており、世界ジュニアの王座戦を控えていました。

「自分と青木篤志の試合は、プロのレスリングなんです」

この一言、ずっと覚えています。

先日後楽園でおこなわれたエル

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【アート番組ウォッチ】明日6/9のNHK日美は、高階秀爾回!

見逃し配信化も進んできたので、初放見逃してもなんとかなることが多い昨今ですが。

どの本を読んでも毎回その読みやすさと内容の鋭さ広さに感服し、書き手としての美術史研究家のお手本あるいは最高峰は、この方だろうと勝手に思っている、高階秀爾(たかしなしゅうじ)。

※1冊だけ紹介するなら、私はこれを推したい。『本の遠近法』。

今まで本でしか接したことがなかったのだが(私に限らず大多数の人はそうだと思う

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「失われた時を求めて」を巡る冒険②

「失われた時を求めて」を巡る冒険②

数日前に↓を読了しました。

まさに名作文学。人間描写の厚みというか、誰もが秘める二面性のリアリティが素晴らしかったです。たとえば貴族に批判的でありつつ、実はいわゆるスノッブ(上級国民に憧れ、連中の真似をしたがる俗物根性みたいな意味)の顔も持つルグランダン。しかし語り手は、彼を不誠実な人物とは考えていません。

己のウィークポイントや課題を、案外自分がいちばんわかっていない。

権威を批判し、前例

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