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おすすめの本一覧

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「誰かにおすすめしたい!」と思った本をまとめています。ジャンル不問。
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#小説

著…金蓮花『水の都の物語』

著…金蓮花『水の都の物語』

 題の美しさに惹かれて、図書館の本棚に手を伸ばした。

 それがわたしと『水の都の物語』との出逢いでした。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 ファロン。

 それは水の都の名前。

 けれど、この都には雨が降らなくなってしまいました。

 「水の巫女姫」が何者かに殺されてしまったから。

 新たな巫女姫となるため、サヒャンとリラン、二人の女の子が舞い比べ

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著…太宰治 絵…すり餌『猿ヶ島』

著…太宰治 絵…すり餌『猿ヶ島』

 自分がどこで誰と生き、そして死ぬか。

 それを決めるのは自分自身だ。

 というメッセージ性を感じさせる小説。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 深い霧に包まれて、今が昼なのか夜なのか判然としない。

 木はあるものの、これまで慣れ親しんだ場所とは何かが違う。

 何がどうとは言えないけれど、明らかにおかしい。

 そんな島に、この小説の主人公は辿り

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著…谷崎潤一郎 絵…夜汽車『二人の稚児』

著…谷崎潤一郎 絵…夜汽車『二人の稚児』

 女性という生き物の多面性や、同じように育った人間だとしても考え方が異なるということを描いた小説。

 そして、ダメと言われれば言われるほど気になってしまう人間のサガも表現されています。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 この小説の主人公は二人います。

 千手丸と瑠璃光丸です。

 二人は幼い頃に女人禁制の比叡の山に預けられました。

 いずれも、俗世

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著…太宰治 絵…ねこ助『魚服記』

著…太宰治 絵…ねこ助『魚服記』

 主人公・スワを取り巻く様々な「死」が描かれている小説。

 暗めのイラストが相まって、不穏な雰囲気が渦巻き、先が気になってつい一気に読んでしまいます。

 スワの身に何が起きたのかはっきりとは書いてはいないのに、読者に事情が伝わる文章力が凄い!

 読後感は決して良くないけれど、太宰好きには避けては通れぬ作品。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 まだ幼

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著…谷崎潤一郎 絵…しきみ『魔術師』

著…谷崎潤一郎 絵…しきみ『魔術師』

 どんなに摩訶不思議な魔術よりも、恋する力の方がずっと強くて哀しいのだと教えてくれる小説。

 きっと、恋人たちを引き離すことは、どんなに偉大な魔術師にだって出来ません。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 多くの人を魅了する美貌の魔術師。

 誰もがその魔術師の虜になります。

 主人公も例外ではありませんでした。

 …けれど、主人公の恋人は別。

 

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著…夢野久作 絵…ねこ助『ルルとミミ』

著…夢野久作 絵…ねこ助『ルルとミミ』

 童話のような愛らしさをたたえながらも、非常に悲劇的な小説です。

 そこに可憐なイラストが合わさることで、いつまでも時を忘れて見惚れていたくなる美しい一冊となっています。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 兄のルル。

 妹のミミ。

 2人はとっても仲良し。

 父を亡くして、兄妹ふたりきり、支え合って生きてきました。

 けれど、ある夜。

 ルル

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著…堀辰雄 絵…ねこ助『鼠』

著…堀辰雄 絵…ねこ助『鼠』

 暗闇の底で優しい光に手を伸ばしているかのような気分に浸らせてくれる小説です。

 読むと泣きたくなります。

 まるで綺麗で悲しい悪夢を見ているみたいで…。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 子ども時代に、

 「秘密基地」

 「隠れ家」

 といったものに惹かれた方は多いのではないでしょうか?

 この小説の主人公もまだ幼く、そして、隠れ家と秘密を

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著…萩原朔太郎 絵…しきみ『猫町』

著…萩原朔太郎 絵…しきみ『猫町』

 最近よく異世界モノの作品を見かけますよね?

 漫画、小説、アニメに「異世界」と名のつく作品の多いこと多いこと…。

 このことから、いかに現代人が「異世界へ行きたい」と思っているかがよく分かります。

 きっとみんな現実世界のありさまに辟易しているのですね…。

 さて、この小説の主人公も、まさに現実世界にうんざりしているタイプ。

 ただし、主人公の場合、異世界モノの作品を楽しんでしばしの夢

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著…梶井基次郎 絵…しらこ『Kの昇天』

著…梶井基次郎 絵…しらこ『Kの昇天』

 「死」にどうしようもなく吸い寄せられていく哀しい魂たちを描いた小説。

 切ない文章表現と、死の冷たさを感じさせるイラストが美しい一冊です。

 ※注意
 以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。
 未読の方はご注意ください。

 ある病を抱えて療養地にやって来た「私」。

 「私」はちっとも眠れなかったので、寝床から抜け出し、海岸へと向かいます。

 月夜も随分更けた頃…。

 砂浜をひ

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著…ポー(斎藤寿葉訳) 絵…まくらくま『黒猫』

著…ポー(斎藤寿葉訳) 絵…まくらくま『黒猫』

 アルコールがいかに人を変貌させ、周りの人や動物を傷つけることになるか…。

 その恐ろしさを教えてくれる小説。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
 また、残酷な描写がありますので、閲覧注意です。

 主人公は、元々は心優しく、動物好きな性格でした。

 …ところが。

 主人公は、すっかり変わってしまいました。

 酒乱になったからです。

 妻に暴言を吐

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著…原田マハ『旅屋おかえり』

著…原田マハ『旅屋おかえり』

 旅に出たい。

 しかし、どうしても旅行できない事情がある。

 だから、旅番組を観て、まるで自分が旅をしているかのような気分を味わっている。

 …という方におすすめの小説。

 この小説の主人公は、所属者がたった一人しかいない零細プロダクションにいるタレント・岡えりか。

 愛称は「おかえり」。

 彼女は小さな旅番組に出演していたのですが、その番組は残念ながら打ち切りになってしまいました。

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著…芥川龍之介 絵…げみ『蜜柑』

著…芥川龍之介 絵…げみ『蜜柑』

 あなたは最近、「世の中はまだ捨てたもんじゃ無い」と思ったこと、ありますか?

 あなたが少々イラつきながら公共交通機関を利用していた時、そこでたまたま他の乗客の心あたたまる様子を見て、ほんの少し幸せな気持ちになったことは?

 これはまさにそういう素敵なシーンを描いた小説です。

 主人公と同じ汽車に、ある一人の少女が乗り合わせます。

 少女は三等車の切符を手に持っているのに二等車に乗ってきま

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著…江戸川乱歩 絵…ホノジロトヲジ『人間椅子』

著…江戸川乱歩 絵…ホノジロトヲジ『人間椅子』

 変態による変態のための変態を描いた小説。

 妖しい江戸川乱歩ワールド炸裂!

 どんな風にも解釈出来るオチも含めて、大好きな作品です。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 この作品のタイトルだけを読むと、「まさか人間が椅子になるの…?」と怖くなる方もいるかもしれませんね。

 安心してください!

 ある意味合っていますが、違いますよ!

 人間の皮や

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著…伊坂幸太郎『魔王』

著…伊坂幸太郎『魔王』

 複数の人物の視点で描かれる小説。

 本来、政治は国民の意思が反映されるもののはずですが、一般の国民には正体を知り得ない「何か」が潜んでいて、その意思が働いて政治を操っているような…、そんな不気味さが漂ってきます。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。

 日本国内に反米ムードが異様に広がる。

 アメリカ発祥のハンバーガーショップが文字通り燃やされる。

 

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