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著…梶井基次郎 絵…しらこ『Kの昇天』

 「死」にどうしようもなく吸い寄せられていく哀しい魂たちを描いた小説。

 切ない文章表現と、死の冷たさを感じさせるイラストが美しい一冊です。


 ※注意
 以下の文は、結末まで明かすネタバレを含みます。
 未読の方はご注意ください。


 ある病を抱えて療養地にやって来た「私」。

 「私」はちっとも眠れなかったので、寝床から抜け出し、海岸へと向かいます。

 月夜も随分更けた頃…。

 砂浜をひとり歩く「私」は、一つの人影を見つけます。

 それが「私」と「Kくん」の出会いでした。

 もしもお互いが健康だったなら、二人は巡り合うことも、共感し合うこともなかったかもしれません。

 きっと生者と死者の境にいるからこそ邂逅した「私」と「Kくん」。

 二人は友情を育みます。

 …ある日「私」のもとに「Kくん」の死の一報がもたらされます。

 そして「私」はごく自然にこう思います、

 Kくんはとうとう月世界へ行った。

(著…梶井基次郎 絵…しらこ『Kの昇天』P4から引用)


 と…。

 まるで「自分もそう遠くない将来にそちらの世界へいく」という予感にも似た何かが伝わってきます。

 それは「病に負ける」とか「諦める」とかいったものではなく、きっともっとどうしようもない感情…。


 〈こういう方におすすめ〉
 死について考えるきっかけが欲しい方。
 切ない友情の物語を読みたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間くらい。

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