トゲル / Hiro Iwasawa

岩澤新品種支援事務所代表、聞き書き(生きてきた思いと歩みを聞いて文に書く)ボランティア…

トゲル / Hiro Iwasawa

岩澤新品種支援事務所代表、聞き書き(生きてきた思いと歩みを聞いて文に書く)ボランティア。特に、植物の新品種の開発に努力する育種家の体験を紹介します。熱き心で、夢の実現に挑戦してきた育種家の皆さんをはじめ、頑張って生き抜いてきた方々の体験に感動しながら書かせていただきます。

マガジン

  • 作り出す喜びー育種を語る

    草花、花木、果樹、野菜等の育種家が、品種改良の苦労や挑戦の様子、新品種の特徴と反響、育種の醍醐味などについて、自らが語る品種開発の体験

記事一覧

    凍てつく大地   (3)                青春を奪われたシベリアから帰還して

    話し手   鈴木登    (カバー写真は、葛飾区東立石にあった鈴木さんの牛乳配達店)    ❒解放され、引揚げ船信濃丸に乗船  そこでの生活が1年程経っ…

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    凍てつく大地   (2)                青春を奪われたシベリアから帰還して

 話し手   鈴木 登さん    ❒ロシアの侵攻を無線で知り南への逃走を開始  終戦の年、昭和20年の夏でしたね。ロシアが攻めてくるのも、前の日にわかったんです…

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     凍てつく大地   (1)                青春を奪われたシベリアから帰還して

   話し手   鈴木 登さん   (カバー写真はハイラルでロシア軍の無線傍受をしていた鈴木さん)      《鈴木 登さんプロフィル》 大正12年生まれ、福島県…

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牧之原の生産者がどこよりも美味しいお茶を作り続けるために

 こんにちは~。トゲルでーす。  お茶を育種する水野さんの記事の記事のその2です。2~3日後に投稿しよう思っていましたが、今日投稿したその1は考えていた以上に読ん…

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牧之原の生産者がどこよりも美味しいお茶を作り続けるために

 皆さん、トゲルです。前月は投稿できなかったので、少し時間が開いてしまいましたが、お元気でしたか~。  昨年の3月1日に初めてブドウやナシを育種された芦川さんの…

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生産現場の要望に応え、育種家の少ないアスパラガスの開発に取組む・・・30年以上をかけてグリーン品種と紫品種の6品種を育成

皆さん、こんにちは~。お変わりなく、お元気でお過ごしでしょうか。  新年も早いもので、もう2月中旬となり、東京でも春一番が吹きました。1年で最も寒い月ですが…

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お客の要望に応え、甘みの強い赤ブドウ「紅義」、クリ「黒ちゃん」を育成、ナシ、柿、イチジク等とともに直売

皆さん、こんにちは~!!  今年初めてのnoteの投稿になりますが、今年は辰年、私は年男で張り切っています。昨年3月からnoteへの投稿を始めて2年目となる本年も、何とぞよ…

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果肉まで赤く、甘みの強いイチゴ「真紅の美鈴」が人気品種に

 皆さん、こんにちは~  徐々に寒くなってきましたが、東京でも最高気温が20度近くまで上がる日もあり、寒暖の差が激しくなっています。新年を迎える前に、お互いに風邪…

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リング名を改名し、世界王座を勝ち取ったボクサー

皆さん、こんにちは~。  植物の育種家の体験記事を紹介しているトゲル/ Hiro Iwasawaです。「え?そんな名前だった」と思われた皆さん。私の記事を読んでくれている…

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南アメリカ地域の原生植物を生活に取り込める園芸品種に改良する育種に挑戦

 こんにちは~。  夏の暑さを引きずって秋に入っても暑い日が続きましたが、やっと秋を感じられるようになってきたなと感じますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。夏に…

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食卓やテーブルの上でも楽しめるコンパクトな花にしたいとパンジーの育種に取り組む

私の記事の前で足を止めてくれた皆さん、こんにちわー!ありがとうございます。  今回は、多くの皆さんが庭やプランター等で育てているパンジーやビオラの新品種を作…

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満足しきれない気持ちが育種のモチベーションに・・・夏の暑さに耐えるシャクナゲ等を育成

 こんにちわー。今回は、7月以来の久しぶりの投稿となってしまいました。9月になっても暑さが下がらない日が続いていますが、皆さんはお元気ですか。台風や集中豪雨等で、…

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イメージどおりの花が咲く一方、見たことのない花も出現・・・世に出る品種はわずかでも、育種は面白く楽しい

 こんにちわー  一昨日東海地方から西側の梅雨が明け、今日は関東も梅雨明けになりそうです。今年は、梅雨明け前から各地で私達の体温と同じような暑さが続いています。…

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江刺をどこにも負けないりんご産地に・・わい化栽培、新品種の育成・導入に精魂を込めて

 皆さん、こんにちわ~  私が書いている育種家の育種体験記も、今回が15人目となります。私が編集委員をしている全国新品種育成者の会は、毎年新時代に向けた優れた品種…

誰もがやらない交配に挑戦してオリジナルな花のクリビアを育成

  ❒ 34歳でクリビアの収集・育種にのめり込んだトラックドライバー                    埼玉県越谷市で妻がやっている介護の仕事を手伝いながら、…

育種とは、個性を伸ばそうと根気よく作った品種をきれいだ!と感動してもらうこと

皆さん、こんにちは~。 植物の育種家の体験記を聞き書きしている岩澤です。 私の聞き書きを読んでくれた数人から、「育種家について、これまでこのような文章が書かれた…

    凍てつく大地   (3)                青春を奪われたシベリアから帰還して

    凍てつく大地   (3)                青春を奪われたシベリアから帰還して

    話し手   鈴木登
   (カバー写真は、葛飾区東立石にあった鈴木さんの牛乳配達店)

   ❒解放され、引揚げ船信濃丸に乗船

 そこでの生活が1年程経ったとき、誰かが新聞にオーストリアの捕虜が解放されたという記事を見て、皆に知らせてくれたんですよ。ロシアではけっこう読まれているウズベスチャという一般紙に出たんですね。それなら、我々日本人も、そのうち解放されるんじゃないかと話しあいまし

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    凍てつく大地   (2)                青春を奪われたシベリアから帰還して

    凍てつく大地   (2)                青春を奪われたシベリアから帰還して

 話し手   鈴木 登さん

   ❒ロシアの侵攻を無線で知り南への逃走を開始

 終戦の年、昭和20年の夏でしたね。ロシアが攻めてくるのも、前の日にわかったんですよ。「ポツダム宣言第何条により、戦争を開始する」っていう電報が出ましたからね。ロシアの国境に日本軍はいなかったでしょ。だから軍の司令部は、後退するしかなかったんですね。我々だって、軍の司令部に情報を送る情報部隊ですから、軍にくっついて

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     凍てつく大地   (1)                青春を奪われたシベリアから帰還して

     凍てつく大地   (1)                青春を奪われたシベリアから帰還して

   話し手   鈴木 登さん

  (カバー写真はハイラルでロシア軍の無線傍受をしていた鈴木さん)

     《鈴木 登さんプロフィル》
大正12年生まれ、福島県郡山市守山町出身
16歳で上京し、中野高等無線に入学。参謀本部の通信士試験に合格。
昭和26年18歳で満州に渡り、ロシア国境に近いハイラルでロシア軍の無線傍受の任務に就く。
昭和20年の夏、満州に侵攻したロシア軍の捕虜となる。ハバロ

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牧之原の生産者がどこよりも美味しいお茶を作り続けるために

牧之原の生産者がどこよりも美味しいお茶を作り続けるために

 こんにちは~。トゲルでーす。
 お茶を育種する水野さんの記事の記事のその2です。2~3日後に投稿しよう思っていましたが、今日投稿したその1は考えていた以上に読んでくれた方が多く、後の記事を楽しみにしているとのコメントもいただいたので、昨日に続いて投稿することにしました。
 今回のその2は、いよいよ「やぶきた」の後継品種を作ろうと育種を開始したところから話が始まります。長い記事ではありますが、ぜひ

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牧之原の生産者がどこよりも美味しいお茶を作り続けるために

牧之原の生産者がどこよりも美味しいお茶を作り続けるために

 皆さん、トゲルです。前月は投稿できなかったので、少し時間が開いてしまいましたが、お元気でしたか~。

 昨年の3月1日に初めてブドウやナシを育種された芦川さんの記事を出してから1年が過ぎました。これまで22人の育種体験記事を投稿し、4月初めまでに1万人を超えるビュー、千人を超えるスキをもらうことができました。

 振り返れば、情熱をもって新品種育成の夢に向かって努力する育成者を励まし、多くの皆さ

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生産現場の要望に応え、育種家の少ないアスパラガスの開発に取組む・・・30年以上をかけてグリーン品種と紫品種の6品種を育成

生産現場の要望に応え、育種家の少ないアスパラガスの開発に取組む・・・30年以上をかけてグリーン品種と紫品種の6品種を育成

皆さん、こんにちは~。お変わりなく、お元気でお過ごしでしょうか。
 新年も早いもので、もう2月中旬となり、東京でも春一番が吹きました。1年で最も寒い月ですが、春は着実に近づいています。乾燥していますので、風邪などにかからぬように、お互いに注意していきましょう。

 さて、私トゲルは、これまで21人の植物の新品種を生み出す育種家の体験記事を書いてきました。花や果物の新品種に取り組む個人育種家

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お客の要望に応え、甘みの強い赤ブドウ「紅義」、クリ「黒ちゃん」を育成、ナシ、柿、イチジク等とともに直売

お客の要望に応え、甘みの強い赤ブドウ「紅義」、クリ「黒ちゃん」を育成、ナシ、柿、イチジク等とともに直売

皆さん、こんにちは~!!
 今年初めてのnoteの投稿になりますが、今年は辰年、私は年男で張り切っています。昨年3月からnoteへの投稿を始めて2年目となる本年も、何とぞよろしくお願いいたします。

 今回紹介する育種家は、大都会横浜の隣の地域で、ブドウ、ナシ、栗、柿、イチジク等を生産し、直売している藤沢市の青木義久さんです。青木さんは89歳になられますが、育種体験記事を書かせてほしいとの私の頼

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果肉まで赤く、甘みの強いイチゴ「真紅の美鈴」が人気品種に

果肉まで赤く、甘みの強いイチゴ「真紅の美鈴」が人気品種に

 皆さん、こんにちは~
 徐々に寒くなってきましたが、東京でも最高気温が20度近くまで上がる日もあり、寒暖の差が激しくなっています。新年を迎える前に、お互いに風邪などをひかないように注意したいものです。

 前回は、私が名前を変更して1回目の投稿記事で育種体験記事を休み、リング名改名五に世界王者となったボクシングのガッツ石松の話を紹介しました。今回からは、フタタ母育種家の体験記事に戻ります。他の

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リング名を改名し、世界王座を勝ち取ったボクサー

リング名を改名し、世界王座を勝ち取ったボクサー

皆さん、こんにちは~。
 植物の育種家の体験記事を紹介しているトゲル/ Hiro Iwasawaです。「え?そんな名前だった」と思われた皆さん。私の記事を読んでくれている方ですね。ありがとうございます。はい。3月1日からnoteに投稿を始めた私ですが、今回の投稿から「トゲル/ Hiro Iwasawa」の名前を使わせてもらうことにしました。

 投稿を始めて9か月、私の記事を読んでくれた

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南アメリカ地域の原生植物を生活に取り込める園芸品種に改良する育種に挑戦

南アメリカ地域の原生植物を生活に取り込める園芸品種に改良する育種に挑戦

 こんにちは~。
 夏の暑さを引きずって秋に入っても暑い日が続きましたが、やっと秋を感じられるようになってきたなと感じますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。夏に集中豪雨にあった地域もあるのに、西日本の各地では水不足が心配されていると聞いて心配しています。
 今回は、福岡県に住む小林泰生さんの体験です。育種家は、だれもがこれまでにない特徴ある品種を作り出すというリスクのある作業に挑戦しているのですが

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食卓やテーブルの上でも楽しめるコンパクトな花にしたいとパンジーの育種に取り組む

食卓やテーブルの上でも楽しめるコンパクトな花にしたいとパンジーの育種に取り組む

私の記事の前で足を止めてくれた皆さん、こんにちわー!ありがとうございます。
 今回は、多くの皆さんが庭やプランター等で育てているパンジーやビオラの新品種を作られている育種家を紹介します。

 パンジー・ビオラはかわいい花ですが、育種するのが難しい花なんです。多くの花は同じ花の雄しべの花粉がめしべについて受粉しますが、パンジー・ビオラは別の花の花粉でないと受粉できない(他植性)の花なんです。

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満足しきれない気持ちが育種のモチベーションに・・・夏の暑さに耐えるシャクナゲ等を育成

満足しきれない気持ちが育種のモチベーションに・・・夏の暑さに耐えるシャクナゲ等を育成

 こんにちわー。今回は、7月以来の久しぶりの投稿となってしまいました。9月になっても暑さが下がらない日が続いていますが、皆さんはお元気ですか。台風や集中豪雨等で、被害を受けた皆さん、大変でしたが一刻も早い回復をお祈りしています。
 今回の育種体験の語り手は、三重県津市の赤塚植物園で長らく育種をしてこられた倉林雪夫さんです。これまでは、主に農家などの個人育種家の方々に体験を語っていただきましたが、初

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イメージどおりの花が咲く一方、見たことのない花も出現・・・世に出る品種はわずかでも、育種は面白く楽しい

イメージどおりの花が咲く一方、見たことのない花も出現・・・世に出る品種はわずかでも、育種は面白く楽しい

 こんにちわー
 一昨日東海地方から西側の梅雨が明け、今日は関東も梅雨明けになりそうです。今年は、梅雨明け前から各地で私達の体温と同じような暑さが続いています。これからどうなるのかと思いますが、お互いに熱中症にならないよう気をつけていきましょう。

 九州北部、島根県、北陸、秋田県の皆さん、豪雨の被害は大丈夫でしたか。被害に遭われた方には、心からお見舞いを申し上げます。

 育種家の体験も今回で1

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江刺をどこにも負けないりんご産地に・・わい化栽培、新品種の育成・導入に精魂を込めて

江刺をどこにも負けないりんご産地に・・わい化栽培、新品種の育成・導入に精魂を込めて

 皆さん、こんにちわ~
 私が書いている育種家の育種体験記も、今回が15人目となります。私が編集委員をしている全国新品種育成者の会は、毎年新時代に向けた優れた品種の開発と普及に努めている個人育成の表彰を行っていますが、2021年度に育種賞を受賞されたのが、今回話し手をしてくれた岩手県奥州市の高野卓郎(たかお)さんです。高野さんは、残念ながら今年御病気のため82歳で亡くなられました。心よりご冥福をお

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誰もがやらない交配に挑戦してオリジナルな花のクリビアを育成

誰もがやらない交配に挑戦してオリジナルな花のクリビアを育成

  ❒ 34歳でクリビアの収集・育種にのめり込んだトラックドライバー                  
 埼玉県越谷市で妻がやっている介護の仕事を手伝いながら、クリビア(君子蘭)を育成・販売している佐々木成孝です。始めに言いますが、私は農家ではありません。25年位前に、斑入りダルマ君子蘭▾を見て「鷲が羽を広げているようでカッコいい」と植物に初めて興味を覚え、斑入りクリビアの収集を始めました。

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育種とは、個性を伸ばそうと根気よく作った品種をきれいだ!と感動してもらうこと

育種とは、個性を伸ばそうと根気よく作った品種をきれいだ!と感動してもらうこと

皆さん、こんにちは~。
植物の育種家の体験記を聞き書きしている岩澤です。

私の聞き書きを読んでくれた数人から、「育種家について、これまでこのような文章が書かれたことはない」と言われました。本当かなと思って探しましたが、確かに見つかりませんでした。
これまでになかった新品種、オンリーワンの優れた品種を生み出している育種の記録がなぜ文字に残されていないのか考えてみました。

1つには、「こうやって新

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