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短編小説

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日野あべしの短編小説をまとめたマガジンです。 短編小説を読んでくれた方で、他の短編小説を読んでみたいという方は是非ご活用下さい。
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#小説

満足、不満足

満足、不満足

歓楽街のチェーン店の居酒屋で二人の男が飲んでいた。片や穏やかに、片や熱を持って話をしている。
正反対の性格をした二人だが、二人は同じ会社の同期で、同じ営業職に就いていた。性格が真逆ではあるが、不思議と二人は歯車のように嚙み合っており、昔からこうして週末には二人で飲み、語るのが決まりのようになっていた。

「だから今の俺らのポジションじゃあ満足に働けねぇだろ!」
「まぁまぁ。とりあえず落ち着きなよ。

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不幸を願う

不幸を願う

「それじゃこの件よろしくな。」
「うっす。」
今日も佐山は不愛想だ。ろくな返事も出来ない。
入社して3年目だが、まだ口の利き方も覚えないらしい。
仕事もそこまで出来るわけではなく、それに加えぶっきらぼうな態度を取る。
正直俺はこいつのことが嫌いだ。もし俺がこいつの面倒を見る立場になかったら絶対に関わらない。
だが現実はそうもいかず、若干イライラしながら仕事に行く毎日だ。
それが積もり積もって、あぁ

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吊り橋

吊り橋

「俺は絶対落ちぶれたりはしないからな!」
「わかったって。お前少し飲み過ぎじゃないか?」
ここは駅前のバー。バーと言ってもカウンター席だけではなくて、テーブル席もあり、落ち着いた雰囲気を漂わせつつも程よく賑わいのあるバーだ。
この二人の片方修人は、明日が休日だからなのか少し飲み過ぎているようで、もう片方の男にくだを巻いているようだ。
片やもう片方の明は修人に少し辟易した様子だが、そのままその席を抜

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魔物

魔物

「よーし、帰りのホームルーム始めるぞー。」
教壇で喋っているのは担任の高橋先生だ。いつも通りのホームルームの時間。皆学校の終わりで、少し浮足だっているようだった。
「この後どうする?」
「今日部活なんだよなぁ、めんど。」
「ほらぁ、騒いでるといつまでたっても終わらないぞー。」
はーいと気だるそうに返事をするクラスメイト達。これもいつも通りの光景だ。何事もない光景。こういう時、いつも僕はムズムズする

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中二病の悩み

中二病の悩み

日も落ち始めた夕暮れ時。カフェオレがおかわりできるというドーナツ屋にて、二人の学生がお茶をしていた。
片やなんの変哲もない、なんのやんちゃもしたことがなく、なにも拗らせることもなく、すくすくと育ったような黒髪の男子学生。
片や髪色を銀髪にし、瑠璃色のカラーコンタクトを入れ、片腕に包帯を巻いた男子学生。誤解してはいけないのは、彼は怪我をしているわけではない。いわゆる色々拗らせた中二病なのである。

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俺たちゲーマーカップル!

俺たちゲーマーカップル!

休日の昼下がり。空は気持ちが良いほど晴れていて、気温もぽかぽかして気持ちが良くて、風も程よく吹いていて更に気持ちが良い。
外は、だが。
「飲み物持ってきて。」
「今ダンジョン攻略中だから無理。」
その気持ちのいい外とは違い、部屋の中は日差しもなければ風もない。
そう、我々は引きこもっているのである。こんないい天気なのに。
いや、我々にとって天気など関係ない。晴れていようが雨が降っていようが干ばつだ

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惜別

惜別

私の故郷は冬になると雪が沢山積もる。だけど春になれば雪がとけて、夏になれば綺麗な緑が生い茂る。

「おーい、待ってくれよ。」

旦那が駅の改札から少し小走りで出てきた。

私の旦那、聡は少しどんくさい。見た目も華がある方でもないけど、とても思いやりがある。

一緒に買い物に行ってくれるときは荷物を持ってくれるし、私の誕生日には仕事を早めに切り上げて帰ってきてくれる。いつもありがとうと言ってくれるし

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私の狭い世界

私の狭い世界

私はどれ程のものなのだろう。

私を必要としてくれる人はいるの?私を愛してくれる人はいるの?

私の狭い世界では見つけられない。

私はただ私の狭い世界から、外の世界が流れていくのを眺めているだけ。

なんの感情も持たなくて、ただ眺めているだけ。

外の世界のことなんて私にはどうでもよくて、ただ私のことを見てほしくて。

だけど私は手を伸ばさない。私は私の世界で生きているから。

私の世界は狭くて

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私の道と父の足跡

私の道と父の足跡

『フリーターになる?』
「うん、入りたい会社もないし。私夢があるんだ。」

電話口で父に初めてフリーターになることを打ち明けた時、父はとても怪訝な声だった。

『なんだ夢って。』
「私、小説家になりたいんだ。」

私は小さいころから本を読むのが好きだった。心躍るファンタジー、引き込まれるミステリー、胸が締め付けられるような恋愛。そうした本を読むのが大好き。
中学生のころには頭の中でストーリーを毎日

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運び去る空

運び去る空

強烈で爽快な風が吹く。私の中のすべてをふきとばしてしまいそうな痛快な風。

「おにいちゃーん!ここどこー!」

「しらねーよ!俺がききてーよー!」

そこは山の頂上のようでもあるし、崖の上のようでもあった。

夜寝て、起きたらここに立っていた。全く知らない場所にいるはずなのに、不安感などこれっぽっちもなかった。

「というかコレ俺の夢じゃねぇーのかよー!何でお前がいるんだよー!」

「しらなーい!

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壊れた人形

壊れた人形

ある雪深い街の玩具店。その店の棚に、機械仕掛けの人形が並んでいる。

人気があるからなのか、皆一様に同じ容姿をしていた。

只、その中で一つ不出来な人形があった。同じシリーズなのは見て取れたが、その人形は壊れかけのようだった。それが私であった。

私は壊れた機械仕掛けの人形なのだ。

壊れて他の人形とは違う形になってしまった人形。店先に並ぶ不格好な人形。

表面的に壊れているだけならまだいいが、内

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幸せはどこから来るの?

幸せはどこから来るの?

幸せはどこから来るのだろう。歩いてはやってこないというから、自分から歩いていかなければならないのは何となくわかる。

そんなことより、目の前の中間テストのことだったり、彼氏を作ることを考えた方がよっぽど建設的だと思う。ただ家に帰ってきて、自分の部屋の机でボーっと考え事をしている時は大体こういう曖昧なことを考えてしまう。

「杏奈―!ごはんよー!」

「はーい!今行くー!」

何を考えるにせよまずは

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ばあちゃん

ばあちゃん

「だぁもううるせぇ!」

酔っぱらって帰ってきた俺は着替えもせずベッドに体を投げ出した。

今日は金曜日。今週は毎日が客先からのクレームの嵐だった。

「俺が悪いわけじゃねえんだよくそが!」

クレームの原因はほぼ現場だ。なぜ俺が現場の尻ぬぐいをしなければならないのか。本当はわかっている。自分の立場はそういう立場なのだと。

「ったくよぉ…。」

目を閉じたら、意識が遠のいてきた。

(何で俺がこ

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スマホが壊れた

スマホが壊れた

スマホが壊れた。しかも唐突に。

いつものように学校から帰るバスの中で、友達と連絡を取り合っていたら唐突に電源が切れた。

いくら起動しようとしても、うんともすんともいわない。

帰りにショップに寄って手続きをしようとしたら、親の免許証のコピーとかが必要らしかった。両親はいつも帰りが遅く、今日中に新しいスマホを手にするのはまず無理だった。

仕方なくそのまま家に帰って、いつものように風呂に入り、一

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