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俺たちゲーマーカップル!

休日の昼下がり。空は気持ちが良いほど晴れていて、気温もぽかぽかして気持ちが良くて、風も程よく吹いていて更に気持ちが良い。
外は、だが。
「飲み物持ってきて。」
「今ダンジョン攻略中だから無理。」
その気持ちのいい外とは違い、部屋の中は日差しもなければ風もない。
そう、我々は引きこもっているのである。こんないい天気なのに。
いや、我々にとって天気など関係ない。晴れていようが雨が降っていようが干ばつだろうが嵐がこようが我々の休日引きこもりライフには一切関係ないのだ。
更には前日に引きこもり用の飲み物、カップ麺、お菓子も準備済み。
今日は(今日もだが)一日完璧に引きこもれるのである!

「そういえばさぁ。」
「何?」
「私たち付き合ってどれくらいだっけ。」
加奈にしては珍しい話題だ。我々は付き合って何か月記念日だとか、もっと言えばクリスマスやバレンタインデーとも無縁の付き合いを続けているので、こういう話題がでるのは意外だ。
「ん~1年ぐらいかな?」
「ふーん。」
響きわたるコントローラーを触るカチャカチャという音とゲームのBGM。
まぁ気まぐれということもある。それより今はダンジョンの攻略に集中だ。
「そういえばさぁ。」
「何?」
「あたしたちそろそろアラサーだよね。」
「そういえばそうだな。」
「ふーん。」
なんだというのだ。今日の加奈はどこかおかしい。普段は年齢のことなどこれっぽっちも気にする素振りを見せない加奈が年齢の話題だと?
なんだ、何を伝えようというのだ。まさか…。
「…月のものでも…来たか?」
「…。」
完璧にスルーである。こういう時はちょっと怒っているので、これ以上刺激するのはやめよう。殴られる。
「の、飲み物とってくるね。何がいい?」
「牛乳。」
ダンジョンの攻略も終わり、居づらかったので飲み物を取りに行くことにした。
冷蔵庫からキンキンに冷えたお茶と牛乳をとって戻ると加奈は先ほどと変わらずゲームに没頭していた。
その姿にホッとするとまた定位置に戻る。
「取ってきたよ。」
「ありがとう…。そういえば新イベ開催するらしいよ。」
「マジか。今度こそソーサラーに光が当たるといいけどな。」
「私たち結婚しない?」
「そうだね……え。」
今加奈はなんて言った。
ケ、ケッコン。ケッコン?今やっているゲームでそういうジョブがあったっけ?いや、ゲーム内で結婚出来るという機能が追加されたのを思い出した。その機能を利用すると特典が付くらしい。
「あ、あぁ!そういえばそういう機能追加されたな。試しにやってみるか?」
加奈は黙っている。気持ち顔がムスッとしている。
どうしたと言うのだ今日の加奈は!いつもの加奈ではない!
いつもならゲームの話題に食いついてくるのに、しかも自分から話題を振っているというのに全然楽しそうじゃない。
「ケッコンって…あの結婚?」
加奈の方を見ると表情を変えずに頷いた。
結婚って…いやいや待て待て。今までそんな話一度も出たことがない。昨日も仕事から帰ってくると二人で新作のゲームの話をしていただけで。
け、結婚!?この我々が結婚だと!?
休日は家でゲーム三昧。カップルらしいことなどこれっぽっちもしたことがない。
しいてそれらしいことと言えば、地元のゲームショップへ二人でショッピングに行くことぐらいだ。
「あ…えっと…いやぁ……急に言われましても…。」
また加奈の方を見ると少し目が潤んでいるようだった。
(えぇー!!?)
どどどどうしたらいいのだこの状況。結婚って急に言われても何の心の準備もしていなかった。確かに付き合ってそこそこ経つし、同棲もしているけども!

しかし、ふと考えてみるといつまでもこのままというわけにもいかないかもしれない。
ずっとこのままというのも違う気がする。
カップルらしいことはしてこなかったが、それでも加奈のことが好きなのは本当だ。
加奈は不器用だが、不器用なりに俺のことを想ってくれているのはわかる。
そんな不器用な加奈が、勇気を出して結婚しようと言ってくれたのだ。
普段チキンな俺でもこういう時ぐらいは腹を括ろう。
「よ、よろしくお願いします…。」
再び加奈の方を見ると、少し顔が赤くなっているようだ。それが恥ずかしいのか、ゲーム画面の方をずっと向いている。
部屋に再びコントローラーをカチャカチャする音とゲームのBGMが響きたる。
確かに普通の夫婦とは違う形になるかもしれない。それによって大変なことも多いだろう。だけどそれでいいのだ。よそはよそ。我々は我々だ。
加奈の顔が赤くなっていることには敢えて触れなかった。俺もゲーム画面に顔を向ける。
「まずは…ご両親にご挨拶かな…。」
「…うん。」
さっきと同じ部屋だったが、どこか何かが違っていて、これからこの部屋も変わっていく気がした。

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