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幸せはどこから来るの?

幸せはどこから来るのだろう。歩いてはやってこないというから、自分から歩いていかなければならないのは何となくわかる。

そんなことより、目の前の中間テストのことだったり、彼氏を作ることを考えた方がよっぽど建設的だと思う。ただ家に帰ってきて、自分の部屋の机でボーっと考え事をしている時は大体こういう曖昧なことを考えてしまう。

「杏奈―!ごはんよー!」

「はーい!今行くー!」

何を考えるにせよまずはご飯だ。お腹も減ったし、腹が減ってはなんとかだ。

「幸せがどこから来るかって?」

「うん、どこから来るのかなって。」

今日の夕飯はアジフライだ。アジフライとご飯とみそ汁とサラダ。私はお母さんのこういうバランス感覚が大好きだ。

「またアンタそんなこと考えて。それよりそろそろ中間テストなんでしょ?勉強はできてるの?」

「ちゃんと勉強もしてるから大丈夫でーす。」

お母さんは毎日の生活を大事にする人だ。疎かにするとうるさく言ってくるのがたまに傷だ。

「まぁまぁ母さん。このぐらいの年の子はそういうことを考えるのも大事だよ。幸せがどこから来るかねぇ。」

お父さんはお酒を飲みながら考えているようだ。お父さんは夕飯の時にお酒を飲む。お父さん曰くそっちの方が健康にいいそうだ。本当かどうか知らないけど。

うちの家族はなんだかんだ言って私の考え事に付き合ってくれる。

夕飯の時なんかは、家族皆でああでもないこうでもないと言うのが日課みたいになっているし、私はそれがとても嬉しい。

「幸せねぇ。お母さんなんか今幸せだけど、ここまで来るのに色々大変なこともあったから、自然と手に入るものでもない気がするけどね。」

「まぁ色々あったよなぁ。」

そこからお母さんとお父さんの思い出話、いや苦労話が始まりそうだった。やばい!

「な、なんかの曲で幸せは歩いてこないって言ってたよね!」

「そうだなぁ。どちらかというとこっちから向かっていくものなイメージはあるな。」

危ないところだった。お母さんとお父さん二人の思い出話のデュエットは長いのだ。

「うん、そうだな。幸せは歩いてこない。どこからか来るもんじゃなくて、こっちから向かっていくものなんだな。昔の曲は良いこと言うなぁ。」

「そういうものなのかなぁ。」

案外今回の考え事は早く終わってしまいそうだ。少し物足りない。

「ただな。」

お父さんが私の目を見た。こういう時はしっかり話を聞くことにしている。

「幸せに向かっていくことは勿論いいことだが、今の幸せをしっかり受け止めることも大事だぞ。」

「幸せを受け止めること?」

「あぁ、そうだ。」

お父さんはそういうとお酒を一口グイっと飲んだ。

「確かに今の自分にない幸せを求めるのは悪いことじゃないが、足元が疎かになってはいけない。お母さんみたいに今の幸せを大事にして、守って育んでいくことも大事だからな。」

今の幸せを大事にするのは何となくわかる。今こうしてお母さんとお父さんと話をすることは、私にとってとても幸せなことだ。まだ私には出来るかわからないけど、守っていきたいとも思う。

だけど「育む」というのが、いまいちどうすればいいのかわからなかった。

「育むっていうのはよくわからないなぁ。どうすればいいのかなぁ。」

「アンタにもそのうちわかる時がくるわよ。」

お母さんが食べ終わった食器を片づけ始めた。一旦ここで考え事は終わりのようだ。

「そういえば今日の学校はどうだったんだ?」

「そうそう聞いてよ。今日学校でね…。」

そうして今日もお父さんお母さんと話をしながら、夜は更けていった。

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