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1993年冬、北京ーモスクワ国際列車 女二人の珍道中 時々行商人①
1993年1月20日 1日目
朝5時。目覚まし時計が鳴ると同時に、私はベッドから飛び起きた。
「暖气(ヌワンチー)」という暖房装置が夜通し効いているから室内はさほど寒くはないが、窓際に立つと、隙間から忍び込んでくる冷気が肌を撫でる。薄いカーテンの向こうはまだ暗く、人の気配もなかった。着替えて荷物をまとめ、6時前にアンナの部屋を小さくノックした。
「アンナ、準備はできた? そろそろ時間だよ」
小
1993年1月20日 1日目
朝5時。目覚まし時計が鳴ると同時に、私はベッドから飛び起きた。
「暖气(ヌワンチー)」という暖房装置が夜通し効いているから室内はさほど寒くはないが、窓際に立つと、隙間から忍び込んでくる冷気が肌を撫でる。薄いカーテンの向こうはまだ暗く、人の気配もなかった。着替えて荷物をまとめ、6時前にアンナの部屋を小さくノックした。
「アンナ、準備はできた? そろそろ時間だよ」
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