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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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2021年2月の記事一覧

コンビニバイトの私は、常連さんに恋してる (Twitter140文字小説)

コンビニバイトの私は、常連さんに恋してる (Twitter140文字小説)

 あ、今日もいらした。

 私はいらっしゃいませと、元気に声を張る。

 餡パンと野菜ジュース、スーツがビシッと似合う彼の、いつもの定番だ。

 今日はあっちのレジに行っちゃった、残念。

「釣り銭一円足らねえだろうがボケェ!」

 彼が罵声をあげている。

 しかも一円で。

 こまかい彼もス·テ·キ。

Minority Angel (Twitter140文字小説)

Minority Angel (Twitter140文字小説)

 みんなやってるよ。

 そう言って、友人はおすすめのゲームを教えてくれた。

「ごめ~ん、私はいいや」

 マジョリティには魅力を感じない。

 やるならマイノリティなものだ。

 誰もやらないことを一人で成す達成感は、一度味わうと、もうやめられない。

 だから私は、今日も誰かを天へ召す。

伝説の煎餅 (Twitter140文字小説)

伝説の煎餅 (Twitter140文字小説)

 一口で十年若返るという伝説の煎餅をわしは手にした。

「決して完食してはならん」と魔女は言った。

 三十年分の三口だけかじる。

 美味を超えた神の味。

 よだれが垂れる。辛抱たまらん。

「こやつもおたまじゃくしに戻ったか。強欲な者は自制が効かんな」

 魔女はいつものように鼻で笑った。

涼宮ハ○ヒへの憧憬 (Twitter140文字小説)

涼宮ハ○ヒへの憧憬 (Twitter140文字小説)

「ただの人間には興味ありません」

 新学年の初日の挨拶で、有名ツンデレキャラの台詞を言っている子がいた。

 クラスに馴染まず、校庭にも変な紋様を描くなど問題児だった。

 俺はなんとかしてあげたいと思った。

 担任として中二病の男子を救わなければ。

 あれは女子が言うからこそ尊いんだ!

ソノヒトはやってない (Twitter140文字小説)

ソノヒトはやってない (Twitter140文字小説)

「痴漢!触らないで!」

 女の子が叫んで男性が腕を捕まれている。

「何もしてないですよ!」

「嘘よ!」

 その人はなにもしてない。

 見過ごすのは私の正義感が許さない。

「その人なにもしてませんよ」

 私の証言で男性は解放された。

 冤罪が防げて良かった。

 それにしても、あの子いい感触だったなぁ。

ボクはやってない (Twitter140文字小説)

ボクはやってない (Twitter140文字小説)

「痴漢!触らないで!」

 女が叫び、俺は指先に血が通わなく程の力を込められた。

「何もしてないですよ!」

「嘘よ!」

 冤罪だ。

 俺は触っていない。

「その人なにもしてませんよ」

 駅員に引き渡される直前、別の女性の証言で事なきを得た。

 助かった。

 靴のカメラがバレるところだった。

ロミオとジュリエット.2021 (Twitter140文字小説)

ロミオとジュリエット.2021 (Twitter140文字小説)

 一目で恋に落ちた。
 ロミオの名を持つあなた。
 わたくしはあなたと出会う運命だったのだ。
 嗚呼、ロミオ様。
 貴方はどうしてロミオ様なの。
 わたくしの猛る想いを、どうか受け取ってくださいまし。

「もう、ジュリエットちゃんったら。どうしてこのおうちのワンちゃんにいつも吠えるの?」

吠え、猛る (Twitter140文字小説)

吠え、猛る (Twitter140文字小説)

 十年原稿用紙と闘い、夢の最終選考まで来た。
 勝ち取ればデビューだ。
 発表の日、俺はこのために生まれたのだと世界へ吠えた。
 その夜、友人達が祝宴を開いてくれた。
 知らない番号から着信が入る。
「文団社です」
「はい!」
「発表の間違いで、あなたは落選です」
 俺は吠え、宴は猛る。

君の名は? (Twitter140文字小説)

君の名は? (Twitter140文字小説)

 知らない番号だ。
「もしもし」
「俺だけど!」
 着信拒否したのにしつこい。
 友達の電話でも借りたのだろうか。
「話すことなんか、もうないけど」
「もう一度だけチャンスをくれ!香」
 プツ。
 私は無言で切る。
 いったい何人と関係をしているのか。
 もう私の名前には辿り着けない気がする。

うわきものってなに (Twitter140文字小説)

うわきものってなに (Twitter140文字小説)

 あるところに、わたしとぼくがいました。
 ふたりはそうしそうあいです。
 あるひ、ぼくがほかのことあそんでいました。
 わたしはげきどします。
「うわきもの!」
 ぼくはいいます。
「あきた」
 わたしはきょうらんしてぼくをさしました。

「これが幼児恋愛の推薦図書なの?」
「世も末ね…」

しょうらいのゆめ (Twitter140文字小説)

しょうらいのゆめ (Twitter140文字小説)

 10年後の自分は。
 とてもむずかしい宿題が出た。
 将来なりたいものもまだぼんやりだ。
 重いランドセルを背負う私の未来ってどんなだろう。

 帰ってお母さんに聞いてみた。
 私も昔書いたなぁ、とお母さんは遠くを見ていた。
 なに書いたの、と訊くと薄く微笑んで、「女王様」と囁いた。

あの櫻には近づくな (Twitter140文字小説)

あの櫻には近づくな (Twitter140文字小説)

大勢の報道陣が軒を連ねる。
ある高校で、呪いの噂がある桜から人骨が発見された。
マスコミも注目の事件で今日はその記者会見だ。
「被疑者は高校の校長です」
「被害者の特定は?」
「古い人体模型です」
「は?」
「模型の下から古いポエムが大量に発見されました。読みます。『Hey you…

盗られたおんな (Twitter140文字小説)

盗られたおんな (Twitter140文字小説)

「別れたんだって?」
噂を聞きつけた友人が心配して来た。
原因を訊ねられ「NTR」と答えた。
「彼女、年上が好きだって」
「そうか…」
「体型もぽっちゃりが好みだと」
「何でお前と付き合ったんだ?」
「さあ」
「災難だったな。その相手はわかってるのか?」
「購買部のおばちゃん」

躊躇い (Twitter140文字小説)

躊躇い (Twitter140文字小説)

 淋しい。
 ふっと、その感情が頭を過る。
 全国に拠点を持つ企業は辞令も県を跨ぐ。
 もう半年か。
 仕事と街に慣れるのに精一杯で、余裕がなく八つ当たりした。
 ごめん。
 その送信を躊躇う。
 チャイムに呼ばれ、ノブを回す。
 どうして。
「大丈夫か?」
 私は彼に飛び込み、想いを直に送信した。