桜庭 紀子

短歌、詩、川柳、その他文章など。X→https://twitter.com/norik…

桜庭 紀子

短歌、詩、川柳、その他文章など。X→https://twitter.com/norikosakuraba

マガジン

  • 短歌五十音

    • 22本

    「短歌五十音」は、中森温泉、初夏みどり、桜庭紀子、ぽっぷこーんじぇるが五十音順に歌人を紹介する記事です。毎月第一〜第四土曜日に更新予定。 画像は桜庭さんよりいただきました。

  • 評論

    主に短歌の評論をまとめていきます。

  • 日記

    写真日記、主にごはんと手芸

  • 短歌

    短歌のあつまり。

  • 散文

    散文のあつまり。

記事一覧

短歌五十音(ぬ)沼波万里子『砂のぬくみ』

今回の歌人、沼波万里子は1921年東京生まれ。歌誌「箒木」を経て「潮音」に入社。1946年、旧満州で夫と一女に死別、引き揚げ。1956年に再婚し、一女に恵まれている。2013年…

桜庭 紀子
3日前
19

短歌五十音(て)寺山修司『寺山修司青春歌集』

寺山修司の歌集を取り上げようと思ったものの、実際に歌集を読んで混乱してしまった。「青春」とタイトルについていて、確かに初期の短歌は青春香るような作風なのだけれど…

桜庭 紀子
2週間前
16

「水沼・桜庭・春木」008

すみません、1ヶ月ほど交換日記を止めてしまいました……。 子供の頃に感じた「交換日記自分のとこで止めちゃってる」というものすごく焦る気持ちを何十年ぶりに再体験しま…

桜庭 紀子
1か月前
16

短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」005

前々回の春木滉平さんの回で、春木さんから『現代短歌』5月号の原稿料で何を買いましたか?と質問を頂いたので、まずその回答から。 (春木さんの回↓) https://kmetpd.

桜庭 紀子
3か月前
16

短歌五十音(そ)染野太朗『初恋』

『初恋』は染野太朗の第三歌集。 恋人のいる「きみ」を思う、行き場のない主体の感情が繰り返し描かれる歌集である。 染野太朗は1977年、茨城県生まれ。高校在学中から作…

桜庭 紀子
3か月前
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短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」002

朝起きると、ブルーライトで目を覚ますためにベッドの中でスマートフォンを触る習慣がある。 たいていXのタイムラインをぼんやり眺めるのだが、ある日の朝、1件のポストが…

桜庭 紀子
3か月前
25

短歌五十音「さ」 笹井宏之『ひとさらい』

今回笹井宏之を取り上げようと決め、歌集を読み返したものの、評を書くのがとても難しい、と感じた。 私は歌集評を書く時に、歌集の中で気になった歌を一度全てWordに打ち…

桜庭 紀子
4か月前
23

短歌五十音(き)木下龍也『オールアラウンドユー』

いきなり表題歌を引く。 主体が詩の神に「あなたはどこにいるのか」と尋ねると、神は「君の周り全てに」と気だるく答えた。 筆者は特定の宗教を信じてはいないが、この歌集…

桜庭 紀子
5か月前
22

短歌五十音(う)内山晶太『窓、その他』

一面に河原を覆うタンポポ。 主体はその景色を、眼を通して胸に写しとり、帰宅する。 静かで、おそらく電気のついていない自分の部屋のドアを開ける。 暗くさびしい部屋に…

桜庭 紀子
6か月前
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「備えねば」気まぐれ日記2024.1.1

災害が突然起こるものであるという当たり前のことを突きつけられた。 日本中の大部分の人がのんびりと過ごしていただろう元旦に、大きな地震。 今のところ津波による大きな…

桜庭 紀子
6か月前
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【短歌】投稿採用歌リスト(2024.3.11更新)

□『短歌』 2024年3月号 角川歌壇 梶原さい子選 秀逸 レモネード割るために買うソーダ水引き立て役の少女期は過ぐ 永井祐選 佳作 闇中の港のように君はいて七年越しの電…

桜庭 紀子
8か月前
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「回帰、お醤油ごはん」

昔、私の実家では炊き込みごはんは「お醤油ごはん」と呼ばれていた。醤油に多分みりんを足したような味付けで、気持ち、普通の炊き込みごはんよりもおこげの濃さや分量が多…

桜庭 紀子
10か月前
42

「文学フリマ大阪」気まぐれ日記2023.9.10(日)

文学フリマ大阪。 私は持病があり、外出先でよく具合が悪くなるので夫に同行してもらう。(ランチをご馳走する約束で) 先に天王寺でランチを済ませる。ビルの地下にある…

桜庭 紀子
10か月前
25

「ギュッとしてる三日間」気まぐれ日記2023.9.9(土)

昨日から明日までボリュームのあるスケジュール。 昨日は大きな病院に行って手術の日程を決め、今日はオンラインの詩の教室の見学、明日は文学フリマ大阪である。 昨日は…

桜庭 紀子
10か月前
15

体調の愚痴 気まぐれ日記2023.9.5(火)

体調が悪い期に入った。 微妙に、わずかに熱がある。 頭がぼんやりしている。 体が重い。 こうなったら、もう苦手な作業などは一切できなくなってしまうのですっぱりと諦め…

桜庭 紀子
10か月前
13

「字がうまく書けない、について」

美しい字を書くことができない。 字を手書きすること自体は嫌いではなく、ノートに手書きで記録をすることはよくあるが、人に見せられるような字が書けない。手紙を書くこ…

桜庭 紀子
11か月前
23
短歌五十音(ぬ)沼波万里子『砂のぬくみ』

短歌五十音(ぬ)沼波万里子『砂のぬくみ』

今回の歌人、沼波万里子は1921年東京生まれ。歌誌「箒木」を経て「潮音」に入社。1946年、旧満州で夫と一女に死別、引き揚げ。1956年に再婚し、一女に恵まれている。2013年死去。中国残留孤児のボランティア活動も行なった。

歌集『砂のぬくみ』から気になった歌を見て行きたい。

「東京」という連作の中の一首。
頭上注意足元注意〜とたたみかけるように詠み、続く「靴、靴、靴」が、複数人の靴がどんどん

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短歌五十音(て)寺山修司『寺山修司青春歌集』

短歌五十音(て)寺山修司『寺山修司青春歌集』

寺山修司の歌集を取り上げようと思ったものの、実際に歌集を読んで混乱してしまった。「青春」とタイトルについていて、確かに初期の短歌は青春香るような作風なのだけれど、後半の短歌はどこか土臭い、おどろおどろしい世界を詠んでいるからである。初期の作風を脱ぎ捨てて、後の作風に変化していった心境はどんなものだったのかと思うが、今回は前者の歌を中心に書いていきたい。

寺山修司は1935年青森県生まれ。1954

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「水沼・桜庭・春木」008

「水沼・桜庭・春木」008

すみません、1ヶ月ほど交換日記を止めてしまいました……。
子供の頃に感じた「交換日記自分のとこで止めちゃってる」というものすごく焦る気持ちを何十年ぶりに再体験しました。申し訳ございません。

やっと文章を書ける体調になり、水沼さん春木さんの前回の日記を読み直していました。
水沼さんの読書遍歴からの短歌への辿り着き方も、最後の瀬戸夏子さんの歌の引用の仕方もまたカッコ良すぎてずるかったですね……。音楽

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短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」005

短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」005

前々回の春木滉平さんの回で、春木さんから『現代短歌』5月号の原稿料で何を買いましたか?と質問を頂いたので、まずその回答から。

(春木さんの回↓)
https://kmetpd.hatenablog.com/entry/2024/04/03/232206

初めての短歌での原稿料ということでもったいなく思う気持ちもあり、しばらく引き出しにしまっていたのですが、春木さんの質問を受けて使おう!と決

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短歌五十音(そ)染野太朗『初恋』

短歌五十音(そ)染野太朗『初恋』

『初恋』は染野太朗の第三歌集。
恋人のいる「きみ」を思う、行き場のない主体の感情が繰り返し描かれる歌集である。

染野太朗は1977年、茨城県生まれ。高校在学中から作歌を始め、「まひる野」に入会。第一歌集『あの日の海』で日本歌人クラブ新人賞、第二歌集『人魚』で福岡市文学賞を受賞している。

恋の相手の言動によって一喜一憂してしまう心情が描かれる。
1首目、「きみ」のことをまた疑ってしまう。船は猜疑

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短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」002

短歌交換日記「水沼・桜庭・春木」002

朝起きると、ブルーライトで目を覚ますためにベッドの中でスマートフォンを触る習慣がある。
たいていXのタイムラインをぼんやり眺めるのだが、ある日の朝、1件のポストが目に止まった。

「短歌交換日記をやってくれる方をゆる募。週一ぐらいで日記(ないしそれに準ずるテクスト)+一首以上。公開等は三往復ぐらいしてから考えましょう。」

投稿されたばかりの水沼朔太郎さんのポストだった。
やってみたい、とすぐ

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短歌五十音「さ」 笹井宏之『ひとさらい』

短歌五十音「さ」 笹井宏之『ひとさらい』

今回笹井宏之を取り上げようと決め、歌集を読み返したものの、評を書くのがとても難しい、と感じた。
私は歌集評を書く時に、歌集の中で気になった歌を一度全てWordに打ち込んで、その中でタイプ別に歌をカテゴライズする作業をする。
第一歌集『ひとさらい』も、気になる歌をリストにし並べてみたが、彼の歌たちをタイプ別にカテゴライズしていく作業が進まない。
どの歌も並列に並んでいるように見えるのだ。
連作の中で

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短歌五十音(き)木下龍也『オールアラウンドユー』

短歌五十音(き)木下龍也『オールアラウンドユー』

いきなり表題歌を引く。
主体が詩の神に「あなたはどこにいるのか」と尋ねると、神は「君の周り全てに」と気だるく答えた。
筆者は特定の宗教を信じてはいないが、この歌集を読んでいる時間は、神様がソファに寝そべりながら部屋の中にいてくれたような気がした。
この歌集はそんな歌集である。

木下龍也は、1988年山口県生まれ。
2013年に第一歌集『つむじ風、ここにあります』(書肆侃侃房)を刊行、それからの活

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短歌五十音(う)内山晶太『窓、その他』

短歌五十音(う)内山晶太『窓、その他』

一面に河原を覆うタンポポ。
主体はその景色を、眼を通して胸に写しとり、帰宅する。
静かで、おそらく電気のついていない自分の部屋のドアを開ける。
暗くさびしい部屋に一人で入る自分のために、主体は明るく長閑な景色を持って帰って来たのだろうか。

内山晶太『窓、その他』を読むと、生きることの寂しさが詠われつつも、人生に明るさを見出そうとする意思を感じる。
内山は1977年生まれ。
1992年より作歌を

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「備えねば」気まぐれ日記2024.1.1

「備えねば」気まぐれ日記2024.1.1

災害が突然起こるものであるという当たり前のことを突きつけられた。
日本中の大部分の人がのんびりと過ごしていただろう元旦に、大きな地震。
今のところ津波による大きな被害は確認されていないようだけれど、道路に大きなヒビが入ったり、家屋が倒壊して中の人が逃げられなくなったりしている。
地震が起きる直前まで穏やかなお正月だったはずなのに。
私の住んでいる関西は少し長めに揺れたな、というくらいだったけれど、

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【短歌】投稿採用歌リスト(2024.3.11更新)

【短歌】投稿採用歌リスト(2024.3.11更新)

□『短歌』 2024年3月号
角川歌壇
梶原さい子選 秀逸

レモネード割るために買うソーダ水引き立て役の少女期は過ぐ

永井祐選 佳作

闇中の港のように君はいて七年越しの電話をかける

題詠 「未来」を詠う
千葉聡選 佳作

スプーンで抉る南瓜の種とわた良いか悪いか私が決める

□ 『短歌研究』 2024年3月号
短歌研究詠草 米川千嘉子選 佳作

ここが二人の場所であること示すため窓を磨いて

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「回帰、お醤油ごはん」

「回帰、お醤油ごはん」

昔、私の実家では炊き込みごはんは「お醤油ごはん」と呼ばれていた。醤油に多分みりんを足したような味付けで、気持ち、普通の炊き込みごはんよりもおこげの濃さや分量が多かった気がするが、当時の炊飯器の性能によるものだったのかもしれない。具は、にんじん、油揚げ、こんにゃく、鶏肉だったと記憶している。今は簡単に炊き込みごはんができる素がたくさん売られているが、母は一から手作りしていた。蒟蒻を茹でてアク抜きをし

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「文学フリマ大阪」気まぐれ日記2023.9.10(日)

「文学フリマ大阪」気まぐれ日記2023.9.10(日)

文学フリマ大阪。
私は持病があり、外出先でよく具合が悪くなるので夫に同行してもらう。(ランチをご馳走する約束で)

先に天王寺でランチを済ませる。ビルの地下にある、穴場的なお店だった。たっぷりお刺身の定食にしたが、お皿に盛られた色々な魚がどれも美味しくて最高だった。

谷町線に乗って天満橋OMMビルへ。はじめての文フリ。人が多い。でも恐れていたほど鬼混みというわけでもなくて良かった。人混みでしんど

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「ギュッとしてる三日間」気まぐれ日記2023.9.9(土)

「ギュッとしてる三日間」気まぐれ日記2023.9.9(土)

昨日から明日までボリュームのあるスケジュール。
昨日は大きな病院に行って手術の日程を決め、今日はオンラインの詩の教室の見学、明日は文学フリマ大阪である。

昨日はそこそこ家から遠い日赤に電車とバスを乗り継いで行った。初めて来る日赤、でかい&新しい。中に入ってもピカピカで気持ち良い。お見舞いや付き添いでなく自分の診察でこんな大きな病院に来るのは初めてで緊張した。勝手が分からず戸惑うこと多々……。朝8

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体調の愚痴 気まぐれ日記2023.9.5(火)

体調の愚痴 気まぐれ日記2023.9.5(火)

体調が悪い期に入った。
微妙に、わずかに熱がある。
頭がぼんやりしている。
体が重い。
こうなったら、もう苦手な作業などは一切できなくなってしまうのですっぱりと諦めることにした。
出かける用事も、なかなか身支度ができないのでのろのろになる。
家事はギリギリなんとか、洗濯を回し洗い物を片付けている。(食洗機とルンバが大活躍)
絵を描くが、集中力と体力がもたない。柄を描いてもなんだか大きな柄になる。出

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「字がうまく書けない、について」

「字がうまく書けない、について」

美しい字を書くことができない。
字を手書きすること自体は嫌いではなく、ノートに手書きで記録をすることはよくあるが、人に見せられるような字が書けない。手紙を書くことがとても苦手である。
小学生の頃から、硬筆が嫌いだった。そもそもほとんど練習をしないし、気が向いて少し頑張っても、ほとんど褒められない。学校で強制的に応募させられる書道のコンクールも、ずっと「銅賞」ばかりだった。(上手い順に上から特金・金

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