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会津のモノづくり文化の“ハブ”。ヒューマンハブ天寧寺倉庫をご紹介します!

福島県会津若松市天寧寺町に、会津のものづくり文化の“ハブ”となっているユニークな複合施設があるのをご存じでしょうか?
 
ヒューマンハブ天寧寺倉庫(Human Hub Tenneijisoko)」(以降、HHT)は、漆器業・関美工堂さんの旧本社・工場をリノベーションし、2022年11月に開業した施設です。会津漆器に代表される地域のアナログ伝統産業とスマートシティとして先行するデジタル技術が融合し、モノづくりやコトづくりに関わるさまざまな人々が、出会い、刺激し合う場(Human Hub)となっています。
 
関美工堂さんの志に賛同したエプソンはHHTに参画。ICTオフィス「スマートシティAiCT(アイクト)」内に拠点を置く「DXイノベーションラボ 会津」のメンバーが中心となり、オープンイノベーションによる社会課題解決とサービスの社会実装を推進してきました。今回、関美工堂さんとエプソンとの取り組みを含めて、会津出身でエプソン社員の五十嵐えりがHHT内をご紹介します!!

観光地の鶴ヶ城や飯盛山、東山温泉などから立ち寄りやすい通りに位置するHHT。 延床面積は340坪。工場をリノベーションしただけにクラシックな外観。

入り口。おしゃれなものが見つかりそうと胸を弾ませながら店内へ。



▼ HHT内の施設をご紹介

【1F】 ストア/カフェ

天井の一部は吹き抜けとなっていて、明るく解放感がある店内。 会津塗、会津木綿、地域食材など、「会津ならでは」の商品が並びます。

HHT開設の狙いについて、株式会社関美工堂 代表取締役社長 関昌邦さんにお話を伺いました。
 
店内に並ぶ魅力的な会津関連の商品。これらのものが「この場所でしか手に入らないことに意味がある」と強調する関さんは、かつてセレクトショップを運営していたご経験を踏まえてのことだと言います。
 
「オシャレなセレクトショップは世界中にあり、まねたところで劣化コピーとなってしまう。それだとすごくカッコ悪いよね。だとすれば、ぐっとローカルに、会津に特化した方が世界で唯一の存在になれると思ったのです」
 
「例えば、これまで年に2回の受注会でしか買えなかった会津木綿ブランドである“YAMMA”さんの商品。HHTであればいつでも買って帰れます。これは唯一無二の価値です。そして会津木綿だけで9社の生産者さんと取引があり、このお店で一挙に販売しているのです」と、HHTならではの魅力を語ります。

会津塗の伝統工芸士と若手職人がつくりあげた“アウトドア漆器”の「NODATE mug」。
「漆器は高価な美術工芸品」「普段使いはもったいない」という固定概念をくつがえし、カジュアルで機能性に優れたデザインに。堅牢性・抗菌性に優れた漆器本来の特長はそのままに、アウトドアでも気兼ねなく使える画期的な商品。使い込めば艶が増し、経年進化を楽しめます。塗り直しや修理も可能です。

「NODATE mugがHHTのコンセプトの元になった」と関さんは言います。
 
「地球のリズムで生まれた漆を使ったNODATE mugを通じて、人と地球の関わり方を大切にする人々とのつながりが生まれたのですね。例えば、土地本来の力を引き出して無農薬野菜を作っている農家さんとは大切にするものが一緒です。同じ価値観を共有するもの同士が交流し、コミュニティーが出来上がりました。この関係性があったからこそ、モノづくりやコトづくりに関わるさまざまな人々が、出会い、刺激し合う場というHHTのコンセプトができたのです」
 
コンセプトに共感しつつ、関さんと一緒に店内を回ります。

【1F】 シェア工房

漆器の木地師、塗師、蒔絵師として自立を目指す職人向けのスタートアップシェア工房。
職人さん達の叡智と技術を結集したものづくりを見ることができます。
 
開設の狙いについて関さんは「漆器業は需要減少に伴って工房も減少、若手職人が修行する場が減っている。学校を卒業しても、弟子入り先のない人々の受け皿としてシェア工房を設立したのです」と説明します。

工房内の様子。シェア工房に所属する若手職人は、関美工堂さんと基本的に3年契約を結びます。契約満了までに腕を磨くだけでなく、伝票の書き方、仕入れ先から販売先まで、商売に必要なスキルや人脈を築き、自立を目指します。

【1F】 シェアキッチン

農産物生産者の6次化加工食品(地元の農産物を原材料に用いた加工食品)や、地域の飲食店の加工食品開発をサポートするシェアキッチン。会津の食材を使った食品を最高の状態で愉しんでもらうために、料理人が腕を振るっています。
 
関さんは「シェアキッチンも、コンセプトはシェア工房と同じ。料理人として修行したい人への受け皿としています」

【1F】 シェアカフェ

「シェア工房やシェアキッチンと異なり、シェアカフェは気の合う仲間に働いてもらっています。いつか自分の店を持ちたいと志す仲間の力試しの場として、ステップアップの場となれば」と関さん。

【2F】 コワーキングオフィス

フリーアドレスデスクや打ち合わせコーナーなど多様な業務環境が用意されているコワーキングオフィス。オフィスのみならずイベントでも使える広さを誇り、数々のワークショップが実施されています。

▼ 関美工堂×エプソン 共創の狙い

ここからは、関美工堂さんとエプソンとの共創活動について、事例を交えながらご紹介します。
 
まずは共創の目的について、DXイノベーションラボ 会津 センター長の中見至宏は「関美工堂さんはDXイノベーションラボ会津センターができて最初の共創パートナーです。会津に住む人・訪れる人をリアルに知って、地域の特徴や課題を理解した上で、ビジネスと持続可能な地域社会の両立を目指すという目的のもと緊密に協業しています」
 
「2023年9月に、大きなポスターを印刷できる大判プリンターや、Tシャツやトートバッグにプリントできるガーメントプリンターなど、これまで一般の方々が直接利用できる機会がなかったエプソンの商業向けプロダクトやサービスを利用できる「HHT PRINT Lab.」が開設されました。地域の事業者や子供たち、旅行者などと常に会話できる接点を持ってニーズや価値観の変化をダイレクトに感じることを大切にしながら地域を彩り、住み続けたくなるような循環型の地域社会を共に築いていきたいと思っています」
 

【事例①】 プリントラボ 「HHT PRINT Lab.」(2F)

デジタル・オンデマンドプリントラボ「HHT PRINT Lab.

エプソン製の大判プリンターやガーメントプリンターなどを用いて少量・多種のグッズ印刷を可能にするリアル店舗ソリューションです。店舗オーナーに対するビジネスの可能性を広げ、エンドユーザーの困りごとを解決する実証実験を兼ねています。「HHT PRINT Lab.」のプレスリリースはこちら
 
写真手前が大判プリンター。狭い空間にもフィットするスタイリッシュなデザイン。ロール紙のセットから印刷までの操作が正面で完結。本体はPC作業に適した高さです。天面はフラットで、作業台としても使えます。

「HHT PRINT Lab.」で制作できるプリントのサンプル。
モノづくりに慣れていない方や印刷が初めての方でも、スタッフのサポートを受けながら、安心してデジタル印刷を活用したモノづくりを楽しむことができます。ワークショップイベントの記事はこちら
 

【事例②】 HHT 1周年イベント

階段に掲示したステップ広告

2023年11月3日に1周年を迎えたHHTではイベントを開催。DXイノベーションラボ 会津はHHTと協働でプリントワークショップを行いました。

DXイノベーションラボ 会津 田巻綾子はプリントワークショップの狙いについて「モノづくり体験を通じてプリントの楽しさを知ってもらうことにある」と説明します。
 
ワークショップでは大判プリンターやガーメントプリンターに初めて触れていただくことを踏まえて「これまでにない特別な体験を通じて驚きや感動を提供しています。そしてプリントの楽しさだけでなく、HHT PRINT Lab.の魅力も知っていただく。ブランディング戦略の観点でも有効だと考えています」と語り、参加者から「大変満足した」との声があったと明かします。
 
HHT PRINT Lab.は実証実験を兼ねていることから「参加者の貴重な声は社内にフィードバックし、ソフトウェアの開発に活かしています」と付け加えました。

【事例③】 会津木綿ワークショップ

2024年1月20日、会津木綿の織元である「HARAPPA」様とHHT PRINT Lab.がコラボレーションし、自分だけの会津木綿をつくるプリントワークショップを開催しました。エプソンのガーメントプリンターを用いて会津木綿に直接プリントし、自分だけのオリジナルポーチを作るイベントです。



参加者からは「世界に一つしかないオリジナルを自分で作れるのが魅力です!会津木綿にプリントできるなんて知らなかったです!」といった感想があったとワークショップをサポートした田巻は振り返ります。
 
「会津木綿のワークショップは、伝統文化とデジタル技術を融合させた新しい価値を多くの人に知ってもらうきっかけとなりました。これからも地域の皆様とともに、持続可能な取り組みを通じてプリント体験の価値創出を追求していきます」

【事例④】 7.4m x 2.5mの大画面スクリーン(2F)

喜多方市と遠隔空間接続し、「次世代育成プロジェクト」現代版組踊「會津宰相氏郷」の公演練習に励むチーム獅Leoの子供たち。

エプソンの高光束プロジェクター2台を用いた国内最大級の315インチ(7.4m x 2.5m)大画面スクリーン。人物を等身大で写し出すことも可能で、遠隔地にいる相手と、あたかも同じ空間を共有しているかのような体験もできます。

【事例⑤】 天寧寺倉庫シネマ

2024年1月より、HHTの2Fに設置された大画面スクリーンを利用して「天寧寺倉庫シネマ」がオープンしました。社会課題やSDGsをテーマとした作品を中心に上映予定です。詳細はHHTの店頭・Instagram・LINEなどで告知しています。
 
天寧寺倉庫シネマの音響はスピーカーづくりの職人が手作りした真空管アンプを利用。ほのかに灯る光とともに、あたたかみのある音を奏でます。

関美工堂 小林駿さんは「映画をきっかけとして、人々が集まり、出会いの場に。映画を起点に、価値観の近い人同士が親交を深めて、新しい物事が始まる場所にしたい」と今後の抱負を語ります。
 

▼ エプソンとの共創で広がる可能性とは?

最後に、エプソンとの共創について関美工堂スタッフでデザイナーの小柴英里佳さんにお話を伺いました。
 
「エプソンさんとの共創が始まってから、イベントの告知方法が変わりました。これまでメインだったSNSに加えて、大判プリンターを使ってポスターを作成するようになりました。ポスターは視覚的に分かりやすく、興味をそそるレイアウトにすることが重要です。そこで、デザイナーとしてのスキルを存分に活かすことができ、告知のクオリティを高めることができたと感じています」とにこやかに語ります。
 
会津若松という土地柄、観光客の方が多く訪れることを踏まえて「思い出の品を気軽にプリント体験できるようなプログラムを考えています。観光客の方々がお土産を買ったり、ご飯を食べたり、さらにモノづくりも体験できる。旅の思い出づくりにHHTが貢献できると嬉しいですね」
 
店内は会津にゆかりのある商品が多く並んでいることもあり、お客様の年齢層は高めです。HHTをさらに発展させていくためにも「地元の高校生とか、もっと若い人達が気軽に立ち寄れるようなお店にしたい」と抱負を語り、「HHT PRINT Lab.やコワーキングスペースがある2階は、デジタルをコンセプトに据え、自己表現したい若い人達に目を向けてもらえるような空間にしていきたい」と締めくくりました。

五十嵐えり

皆さん、いかがだったでしょうか。
ぜひ、会津に立ち寄られた際には、HHTを訪れてみてくださいね!


【HHT/住所】


【HHT PRINT Lab.】


【HHT/Instagramアカウント】


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