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#言葉

残り火

なにをはなしたかしら
思い出しながら
電車は
わたしを運ぶ
あかりの消えた
人のいない部屋へ

雪が降るなか
暖色のひかりの下
六人は
中原中也を追いかけた
周りでは
カフェの客たちが
好きなように
喋り
笑い
そんな声に
負けじと
時に声を張り

ひとりだと
別の銀河ほど
遠かった彼の言葉は
みんなの熱をくぐると
一歩近づいたような気がした

視覚的言語なのに
言葉から映像が浮かばなかった
彼の

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わたしたちの言葉を

人が好き
なのに人付き合いが苦手で
思い悩んでばかりいるうちに
見失ってしまったわたしを
忘れてしまいそうなあなたを
手繰り寄せるように
思い出して

抱きしめ合えない
わたしたちは
言葉で
戯れるように
たしかめ合ってきたよね

たがいの存在を
たしかなものにしたくて
言葉には
わたしたちだけの
曖昧で満ち足りた
特別な意味があった

だけど、その言葉は
外の世界では
意味をなさず
その孤独を

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日常の言葉

日常の言葉は意思だ
自分だ
美しくないなら
それは自分が美しくないのだろう
言葉が弱いなら
それは自分が弱いのだろう
思ったことは言葉にする
世の中の荒波に揉まれながら
自分をしっかりと繋ぎ止めておく方法
自分の気持ちもいいけれど
自分の意思を言葉にしよう
主体的に生きるために
自分以外に揉まれながら
自分の道を歩むために

2023.11.03

言葉の命

言葉の意味とはなんだろう
言葉の命とはなんだろう
言葉にはないきもちを
言葉にしようとする
この試みはなんだろう
ありふれた言葉だっていいじゃないか
けれど言葉に新たな意味を見出したときの
言葉に新たな命を吹き込んだときの
この感覚はなんなのか
言葉が言葉自体
新たな意味を見出すとき
わたしのなかに
あなたのなかに
見えない
新しい命が
生まれるのだ
その命は
いつかの命とつながっているようで

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言葉が言葉を羽ばたくとき
言葉は言葉ならず
ただの離陸点となる
この手をはなれ
羽ばたく言葉の意味するところは
わたしにもわからない空
空が心でつながっていて
言葉のおかげで
それをおもいだす
空を目に映しても
おもいだせない空だけを

2023.10.07

言葉

話すことで
誰かを傷つけてしまう
リスクもある
そんな時は
言葉を信じないで
思いを信じたい
そこに嘘はないから
思いが信じられないと
言葉を疑ってしまう
言葉を疑うと
誤解が生まれる
誤解が生まれると
こころが揺らいでしまう
この世界は時に
言葉を信じすぎるがゆえに
言葉を疑い
言葉を誤解して
相手を疑い
傷つけ合ってしまう
そうして
言葉を恐れている
わたしたちは互いに
相手を敬い
出逢えた喜

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しるし

生きる詩が必要だ
わたしには
あなたには
世界には
生きるしるしが必要だ

かっこつけないあなたが好きだ
裸の心で
それだけで
傷ついても生きるあなたが好きだ
強くなることを諦めないあなたが好きだ

この世界に言葉はまだあるか
氾濫している文字や音はなにか
考えている、
人間はまだいるか
わたしはまだ人間なのか
これは言葉なのか

中が空洞の
文字や音にしてはいけない
生きなければ
生きるしるしは

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夜空

夜空

話すことに頼りだしてから
わたしはわたしを見失っていた
ことばはまわる
わたしとあなたの歯車みたいに
噛み合っても
それは愛じゃないのね
噛み合わなくても
それは不幸せじゃないのね

空はくもり
一番星だけあんなに高く
きっといまごろあなたも見つめている
それだけだったの
ここにあるということを
こころでかんじることは

わたしね
あなたに返事はしない
もうこころでつぶやくだけ

ほら、夜空を

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宇宙

宇宙

わたしの宇宙は
あなたの宇宙を知らない
あなたの宇宙は
わたしの宇宙を知らない

わたしの宇宙は
あなたの宇宙を知りたくて
けれどわからなくて
腹を立ててもがいてる

けれど、それぞれに宇宙があって
それぞれに自然があって
それらはそれぞれ別の次元に存在していて
それだからみんな唯一無二で
それだから美しい

それならば
見つめ合う瞳とか
交わす言葉とか
触れ合う手と手とか
そんなものに
なんの意

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言葉の価値

言葉の価値

人類が生み出した
もっとも素朴で
もっとも偉大な発明は言葉だと思う

どんな人間関係のトラブルも
言葉にすれば
たちまち解決することができる

それは言葉を扱う者と
言葉を受け取る者が
愛を持っているからだ

あなたを思ってこうした
あなたにこう言われて傷ついた
そう伝えることで
相手は自分の気持ちを理解できる
互いに相手の気持ちを正しく理解することが
関係を前へと進めてくれるのだ

けれど、気持

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いいひと

いいひと

「いい子だね」
「いい人ですね」
それって褒め言葉だと思ってた
言われると素直に嬉しかったし
相手へのねぎらいと感謝の気持ちを込めて言っていた
けれどそれは時に呪いの言葉になると
近ごろ、やっとわかった

いいことは
したいからするのであって
ひとたび、いい子でいなきゃならないから
いい人と思われなければ価値がないからと
なにかいいことをした途端に
その人はいいひとではなくなる
それどころか、その

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静けさ

静けさ

静けさが欲しい
ここは煩すぎるから
もうこれ以上
多くを語らないようにしよう
みんなが喋ってもだんまりだった私
それでよかった
人が必要としている時だけ
喋ればいい
話せることが嬉しくて
つい喋りすぎてしまうけれど
もう喋らなくていい
沈黙を共有できるふたりでいい
おしゃべりな猫と住む
無口な人でいよう
心にぴんと水を張って
その水面の揺らぎに耳を澄ませて生きよう
家には静けさを溜めて
いつでも帰

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幼な子

三つ、四つくらいの
幼な子が
道の真ん中で
母の背中に
泣いている

張り裂けんばかりの
大声は
もっともっと
より大きくと
それだけを精一杯
いっしんに
他のことは一切
頭になく
ただただ
もっと大きくと

少し成長した体で
力の限り泣く声は
いじらしい心とは裏腹に
けたたましく

母は
背を向けて
振り返らずに
向こうへ歩いて行く

大きな声で泣けばそれだけ
助けてくれた
ひとりでは何もできな

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7月7日

7月7日

涙の季節にあなたと出会い
以来7月7日は止んでいた
それまで必ず降っていた雨さえ

前日まで晴れていても
必ずその日は雨だった
会いたい人に会えない涙が
空から溢れていた

あなた
わたしの
何もかも変えた
わたしの涙声
悲しかったのに
いつもひとりだったのに
いまわたし、笑ってるみたい

今朝、起きたら
窓の外、雨が降りしきって
あなたとの約束を思った
一年で一日だけ
降らないでと願う日に

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