わたしたちの言葉を

人が好き
なのに人付き合いが苦手で
思い悩んでばかりいるうちに
見失ってしまったわたしを
忘れてしまいそうなあなたを
手繰り寄せるように
思い出して

抱きしめ合えない
わたしたちは
言葉で
戯れるように
たしかめ合ってきたよね

たがいの存在を
たしかなものにしたくて
言葉には
わたしたちだけの
曖昧で満ち足りた
特別な意味があった

だけど、その言葉は
外の世界では
意味をなさず
その孤独を
噛み締めていたら
あなたと交わした言葉を
忘れてしまった

嫌われてばかりのわたしは
あなたと出逢ってはじめて
信じることの
大切さを
知った

わたしたちの言葉を
手放した
わたしは
元どおり
ちょっとおかしな
ニンゲンで

うまく生きられない
うまく付き合えない
そんな、おかしな
ちっちゃな
はみでた
ワタシでしかなくて

あなたはわたしを
ずっと知らなかった
けれど、あなたの知っているわたしは
わたしたちだけの言葉の中に生きていた
わたしの知っているあなたも
わたしの胸の奥に生きていた

ともだちって
そういうことだったな

あなたは、たしかに
わたしを、この世に
見出して
繋ぎ止めてくれていた
そのわたしを
わたしは見出せずに

それはきっと
裏切りだったね

ありがとう
もう、同じあやまちは繰り返さない
わたしがわたしを見出さなければ
あの言葉の意味は取り戻せない
あなたが見出したわたしを
わたしが見出した
わたしの胸の奥の
たしかなあなたを

たがいに触れられずに
紡ぎ出した言葉を

2023.12.12




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