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お気に入りのエッセイをまとめてみました。
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#小説

共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」①

共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」①

 青春ドラマが苦手である。テレビで目にしてしまったなら、すぐにリモコンの電源ボタンを押すほど拒絶してしまう。
 でもそれは、羨ましいからだと最近ようやく認められるようになった。僕には青春と呼べるほど、美しい時代がなかったのだ。

 愛する人と別れ、病を得て、夢に破れ……いつも憂鬱を抱えていた。振り返ると、後悔ばかりの人生を生きてきた。

 春が青くなかったら、何色になるのか。
 ぱっと思いつくのは

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三鶴✖️仲川光  共作小説 「白い春~君に贈る歌~」 連載開始のお知らせ

三鶴✖️仲川光 共作小説 「白い春~君に贈る歌~」 連載開始のお知らせ

noteの皆様へ

いつもご覧くださり、誠にありがとうございます。

この度、温めていた新企画を謹んで発表させていただきます。

三鶴✖️仲川光🌸
共作小説「白い春〜君に贈る歌〜」5月最終週〜連載開始✨
(週2回更新予定)

【あらすじ】

【三鶴・仲川光🌸の自己紹介】

おそらく、お互いのアカウントには、三鶴をご存知ない方、仲川光をご存知ない方がいらっしゃると思うため、あらためまして2人の紹

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【短編小説】図書室のエミちゃんと友達

【短編小説】図書室のエミちゃんと友達

 今日は週に一度の「出張図書館」の日だ。

 と言っても、大それたことをするわけじゃない。
 〈とある人〉のために、代理で本を選書し、宅配するだけのことだ。

「今回は『友達』をテーマに選書しようと思うんです」
 
 僕がそう言うと、同僚の司書たちは次々に候補を挙げてくれた。

「ねぇ、真野くん、『ふたりはいっしょ』はどう?」
「いいですよねぇ、がまくんとかえるくん。だけど『ふたりはいっしょ』はす

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(読書)嘘つきジェンガ

(読書)嘘つきジェンガ

辻村深月

(内容紹介)

詐欺をめぐる3つの物語。

『2020年のロマンス詐欺』
まさか、こんな2020年の春が待っているとは
思いもしなかった――
大学進学のため山形から上京した
「加賀耀太」だったが、4月7日、
緊急事態宣言が発令されてしまう。
入学式は延期され、
授業やサークル活動どころか、
バイトすら始められない。そのうえ、
定食屋を営む実家の売り上げも下がって、
今月の仕送りが半分に

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(読書)逆転正義

(読書)逆転正義

下村敦史

以前、ヤギの本屋さん・テンガイさんの
記事を読んで面白そう、と購入した。

(内容紹介)

『同姓同名』が中国でベストセラー、
TikTokで話題、中学生ビブリオバトルで
チャンプ本に!
どんでん返しの名手が仕掛ける
常識がひっくり返るエンタメミステリ短編集
SNSにも正義警察、
正義中毒者が蔓延る現代ニッポン!
「あなたはそんなに正しいの?」

どんでん返された回数が多ければ多いほど

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水漬けパスタをレンチンして作った
ナポリタン。美味しい♪
SNSを見ていたら三島由紀夫のことを
ミッシーと書いている人がいて
とてもびっくりした。
ミッシー。。すてき♡
ミッシーの「音楽」という作品が好き。

https://amzn.to/3MbzH7O

共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」②

共作小説【白い春~君に贈る歌~】第1章「ホスピス」②

「失礼します」

「あ。はーい」

 ずいぶん明るい声だ。ホスピス病棟で、こんなに明るい声を聴いたことがあっただろうか。
 カーテンを捲る、ほんの一秒にも満たない時間、上野さんの顔を想像する。なぜかわからないが、昔の恋人がつけていた香水の香りがほんのりと鼻をかすめた。が、もちろん、気のせいだった。
  
 真っ白い肌の女性が、ベッドの頭側を上げて座っている。テーブルで本を読んでいたようだ。ブックカ

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(読書)源氏姉妹・げんじしすたあず

(読書)源氏姉妹・げんじしすたあず

この本はたけうちさんの記事を読んで
購入しました。

ありがとうございます♪

☆☆☆

「源氏姉妹(げんじしすたあず)」
酒井順子

(内容紹介)

私たち、光源氏と「して」しまいました!

・義母なのに迫られ
・人妻なのにムリヤリ
・幼女の頃に見初められ
・帝の女なのにセフレに

光源氏と関係を持った女性たちの視点で描く、
エロティックで新しい、酒井版「源氏物語」

源氏が愛し、源氏が狂わせ

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(読書)十戒

(読書)十戒

夕木春央

(内容紹介)

殺人犯を見つけてはならない。
それが、わたしたちに課された戒律だった。

浪人中の里英は、父と共に、
叔父が所有していた枝内島を訪れた。
島内にリゾート施設を開業するため
集まった9人の関係者たち。
島の視察を終えた翌朝、
不動産会社の社員が殺され、
そして、十の戒律が書かれた紙片が落ちていた。
“この島にいる間、
殺人犯が誰か知ろうとしてはならない。
守られなかった場

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(読書)偽りの眼・下

(読書)偽りの眼・下

カリン・スローター
鈴木美朋・訳

(内容紹介)

23年前の秘密を男はなぜ知っているのか――。
あの日を境にリーはゆっくり壊れていった。
妹のキャリーは薬物依存を繰り返し、
苦学して弁護士になったリーも
また問題を抱えている。
そして今、非道なレイプを繰り返す男を弁護し、
被害女性を貶めて無罪を勝ち取らなければ、
全てを失うことになる。
追いつめられたリーのもとに、
新たな女性が襲われ、
猟奇的

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共作小説【白い春~君に贈る歌~】第3章「繋ぎとめるもの、思いとどまらせるもの」①

共作小説【白い春~君に贈る歌~】第3章「繋ぎとめるもの、思いとどまらせるもの」①

 身体がビクッとして、目が覚めた。
 誰かの声が聞こえたような気がする。上野さんかな。いや、まさか。変な夢を見ていたようだ。
 鼓動が高鳴っている。誰かに不審に思われていないかを確認した。
 
 目の前では、医師と看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーがテーブルを囲んで話をしている。
 ここは、ホスピスのカンファレンス室。毎日、昼休憩の後には会議が行われている。
 手元にリハビリカルテ

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(読書)三面記事小説

(読書)三面記事小説

角田光代
(電子書籍)

(内容紹介)

「私は殺人を依頼しました。
恋人の妻を殺してほしいと頼みました…」
誰もが滑り落ちるかもしれない、
三面記事の向こうの世界。
なぜ、姉夫婦の家は
不気味な要塞のようになってしまったのか? 
家出少年を軟禁する主婦の異常な執着心。
「死んでしまえ」と担任の給食に
薬物を混ぜる女子生徒。
平穏な日常が音をたてて崩れてゆく瞬間の
リアルな肌触り、
追いつめられて

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(読書)深爪

(読書)深爪

中山可穂

以前にも書いたけれど
ちゃんと感想を書いていなかったので。

(内容紹介)

翻訳家のなつめは、
人妻・吹雪と激しい恋に落ちる。
吹雪の家で逢瀬を重ね、
子供の昼寝の間に快楽をむさぼる日々。
女同士の恋、家庭を壊すつもりなどなかったのに、
会えば会うほど溺れてゆき、
愛するがゆえに傷つけあわずにはいられない。
一方、吹雪の夫・マツキヨは、
幼い息子を守るため、そんな妻を受け入れ
家庭を

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Kindle本の出版計画 ~届けられなかった本~

Kindle本の出版計画 ~届けられなかった本~

「先生の半生って、おもしろいことばかりだね。ねぇ、先生。先生の半生をもとに小説を書いてよ。俺、先生が書くものだったら読んでみたい」

 私の職場であるホスピスの、患者Jさんからいただいた言葉である。

「いやいや、無理ですよ。僕なんかが書けるわけないじゃないですか。読む専門ですよ」

 私は照れる気持ちを隠しながら返答した。

 Jさんは、日本文学をこよなく愛し、私が病室を訪ねるといつも本を読んで

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