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鈴を持つ者たちの音色

【あらすじ】
太陽が大地を、人を、焼き尽くし、生き残った民は海底へと逃げるように生活の拠点を移した。
”生きよう”とする力は無限だ。
知恵を身体を使い、人と人とが生きる為に協力し合う。それは人間らしさという根底にあった核を呼び覚ますきっかけともなった。
人は文明の進展により弱く、
文明の停滞により強くなる。矛盾した生き物だ。
「人間ってのは…」
良くも悪くもなる。それは環境論が精神論か、はたまた僕らには見えない糸が付いていて、何者かに操られ、誘導されて世界は作られているのか。
どちらにせよ、人は”生きる”為に努力する生き物である。それには時代が変わろうとも変わらない”人間らしさ”である。

【【剣士の男】】
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、という足音で目が覚めた。ここはどこだ?
照りつける太陽は真上にあり眩しく、ようやく薄目を開けてまわりを確認する。
大きな木製の荷車の上に寝かせられている。 
毛布に隠された食料が見えた。飲み物もある。僕はその一部になったように、この木製の荷車で今運ばれている。
誰だろう。
僕が乗せられた荷車を引っ張ってくれている。
力強さは乗せられた荷台からも伝わってくる。
僕の為に引いてくれている。申し訳ない。が、身体は言うことをきかない。なぜこんなにも身体は疲労しているのか、覚えがなかった。
それにしても、チラリとしか見えないが荷車を引くその腕はあからさまに人間離れしている。
人間の通常の腕の太さを倍以上に超える太さだ。

人の気配がする。
荷台上から、疲労した身体をようやく捻り、視線を外へ向ける。
荷車をぐるりと囲む兵隊のような筋骨隆々な男衆が、何十人も列を成し同じ方向へと無言で足音だけを打ち鳴らし、前へ前へと進んでいた。
「一体これは?」
兵隊の被るヘルメットは目深い。
ひとりひとりの顔もよく見えない。
鼻もふさがれている。
どこから歩き、どこへ向かっているのだろう?
まわりは建物ひとつ見えない。
陸続きで路面は荒れていて樹木さえ生えていない。
時折り荷車が大きく跳ね上がる。
彼らの疲労の跡は感じられない。
僕はひとり荷台上に居て、楽をしているようで気まずかった。
一旦まわりを確認したら余計恥ずかしく、寝たふりをする。
僕の腰には長いソールドが刺さってある。
ヘルメットは無く、長い髪は乱れ、顔をゆっくり拭うと酷い汚れの跡が袖に付いた。
僕は剣士なのか?
それさえも思い出せない。
身体は疲労の影響で重かった。腹筋を使い、上体を持ち上げるだけで精一杯だ。
荷車を取り囲む者達にも腰にソールドをぶら下げているのを見た。
鋼のような鎧を着てヘルメットも被る。
腰にはソールド一本。武器はそれのみ。

周りの状況を全く理解出来ないまま、荒い荷車の振動が心地よく、身体の疲労感を感じながら、僕はそのまま寝落ちしてしまった。

【【水の者】】
もう何年になろうか。
太陽の光を避け、我らは水の中に逃げ込み、そのまま陸へは上がらなくなってしまった。
下へ下へ太陽の光が届かなくなるまで我らは海底へと潜り、そしてこの場所を見つけた。
”グランドライン”そう名付けた。

今も顔を焼かれて皮膚が焼け落ちた者が数多くいる。それは過去に太陽光で焼かれた跡である。神聖な水に顔を浸せば治るという、その聖水をさがしているが、まだ見つからない。
我らの任務のひとつに聖水探しがある。
聖水探しのメンバーに”GO(豪)”という名の青年がいる。ここではその彼に物語の続きを解いてもらおう。

”グランドライン”の説明はいるかい?

”グランドライン”とは僕らが住む海底都市だ。
イメージは海底の山。その山の内側に僕らは住んでいる。
陸地にはエベレストという世界最大の山があっただろう?
ここにある海底の山はエベレストとは比べ物にならないぐらいデカい。エベレストの10倍はあろうか。
海底とはいままで知られていないだけで、もっと未知で無限に可能性がある地球の一部なのだ。
陸地に、いくつもの山が存在するように、海底にも”グランドライン”のような海底都市は他にも存在するだろう。
”グランドライン”の中には空気があり、酸素マスクなしで生活ができる。
太陽の光は届かないから闇に覆われていると思いきや、そうではない。
陸では山の上に上がれば上がるほど酸素は薄くなるが、ここでは逆だ。
”グランドライン”の頂に向かえば向かうほど酸素は濃い。そしてその濃い酸素と深海の光物プランクトンとが共鳴するかのように反応し合い光を発する。その独特の光で”グランドライン”はしっとり明るかった。
プランクトンは酸素と同じく頂に集まり、その集量により光の強さは違った。光の強さは天気ように”グランドライン”の一日を変化させた。
その光がある為に僕らの”グランドライン”は闇に覆われずにすんでいる。
しかし、光は太陽のようには強くない。光から遠くなればなるほど光は弱く行き届かない場所もいくつかあった。その光が行き届かない場所を僕らは「ツーホール」と呼んだ。真っ暗闇に閉ざされた場所「ツーホール」。
「ツーホール」には知的外生命が存在する為、危険だ。陸上に動物がいたように、ここ”グランドライン”にも同じように人間以外の”もの”が存在する。「ツーホール」はまさに、その”もの”にとってはうってつけの隠された場所だった。

「ツーホール」は定期的に巡回員が巡回する。その時に必ず特殊ランタンを所持する。特殊ランタンとは暗がりでも足元が見える手持ちのランタンである。ランタンの中には”グランドライン”の頂から予め採取してきた光物プランクトンと酸素を配合した発光物が入っている。
「ツーホール」への巡回の時に担当者は、この特殊ランタンを”グランドライン”窓口から借りてくる。借りる時は発光していないが、ランタン自体をシャッフルすることでランタンは発光する。強くシャッフルすればするほど、強く発光する便利なランタンである。

”グランドライン”には伝統があり、20歳になった男女はこの「ツーホール」への巡回の儀式をする。というものがある。
通常なら「ツーホール」への日々の巡回は担当者が持ち回りで行うのだが、20歳になった男女がいた場合は特別で、その日1日限り日々の巡回員と共に20歳になった男女が「ツーホール」への巡回を行うのだ。
この”グランドライン”を大人となり、危険性の存在もより知り得る為の恒例の儀式となるのだ。

”GO(豪)”は今年20歳になる。
そして”GO(豪)”にも「ツーホール」の巡回の儀式がまわってきた。
今年は10人の男女が、この儀式に参加となる。
「ツーホール」はこの”グランドライン”の中には数々存在する。その中でも20歳の儀式にはその危険度値、下の下の”α”地帯を巡回課題とされる。1箇所を男女1組のペア。今回は10人なので”α”地帯5箇所に分かれて巡回ということになる。
”GO(豪)”が巡回員の隊長に質問する。
「もし1日以内に巡回からここへ戻って来れなかったら落第ですか?」

隊長:「この伝統には落第というレッテルはない。しかし、時間内に戻って来れなかったら、再度来年も巡回してもらうことになる。それだけだ。」

”GO(豪)”と組む事になっている女子”BOO(武)”が言う。
「あれっ?男女に巡回員1名がサポートで付くのに時間制限があるんですか?時間内で戻れないってこと、あるんですか?」

隊長:「巡回員は各”α”地帯に、お前達を連れて行くだけだ。連れて行ったら巡回員はすぐにここへ戻ってくる。そしてお前達の帰りを待つだけだ。お前達が無事戻ってきたら、各巡回員から私に報告がくることになっている。」

一同:「ええー、、!!そんなの聞いてないよー。」

女子WA(輪):「私こわーい。」

女子ゲイン:「‥‥。」

男GA(我):「”巡回”って言葉が引っかかります。”α”地帯へ置いてかれて、直ぐに引き返して戻ってくれば、誰にも分からないのでは、ないですか?時間にも楽々間に合う。」

隊長:「それをやってしまえば、同じく来年も再度参加となります。”α”地帯は入り口から出口まで通り抜けの洞窟になってなってます。つまり、スタートとゴールがある。入り口に入りもせず、戻ってくるなぞもってのほか。各”α”地帯にはちゃんとキャメラが付いていて、入ってから出るまでの時間をカウントされ、皆さんの映像をこちらの本部で見れるようになってます。あなた達の行動は全てお見通し、ということです。
各「ツーホール」も同じです。
巡回員も危険な目にあいますから。
ちゃんとキャメラで録画もしてある。」

男子キックス①:「「ツーホール」は何段階の危険度に分かれていて、どのぐらいこの”グランドライン”に点在するのですか?」

隊長:「3段階に分かれる。最小の”α”から”β”。そして最大の”γ”だ。君達が巡回する”α”の数が最も多く20箇所。最大の”γ”はこの”グランドライン”には3箇所しかない。まぁ、君達一般人には一生の中で”γ”地帯に行く事はほぼ皆無と言っていいだろう。今回の”α”地帯も20箇所のうちランダムで各担当の巡回員が選ぶ事になっている。」

男子キックス②:「おおー!気になるなぁ。俺、どうせなら行ってみたいなぁ。”γ”地帯!」

隊長:「笑。威勢がいいな。しかし命を無駄にするな!”γ”地帯には、ほぼ誰も寄りつかない。巡回もない。今はキャメラだけの監視体制になっている。その、キャメラを設置するだけでも危険だった。以前は無知だった為、巡回もしていた。
その時に何人か犠牲にしてしまった。それからだ、キャメラだけの監視体制にしたのは。
君達は双子か?
通りで(笑)。
顔面は同じだけど、性格は全く別だなぁ。
君ひとりで”γ”地帯に行けば帰って来れないのは明白だ。もし、行くならそっちの同じ顔も連れて行くんだな。双子というのはふたりで一体。別行動は命取りだぞ。これからも覚えておけ。」

男子キックス①:「それじゃあ、今回の”α”地帯の巡回も僕たちは特例の、男✖︎男の組み合わせでもいいですか?隊長自らの口で言ったんです。それでいいですよね?」

隊長:「言うねぇ。まぁ、好きにしろっ。」

一同:「おーいっ。それ、ズルくね?。」

隊長:「(うるさいうるさい、と蚊を振り払うような身振りをして)あと、何か質問はあるか?」

女子ゲイン:「…隊長‥っ。ちゃんと説明した方がいいです。去年のことも。。」

隊長:「ああ、、。うーむ、、。。ゲインの気持ちは分かるけど、、必要か?皆をあまりビビらすような事、言いたくないなぁ。。」

男ME(男):「まだ、何か隠してるんですか?」

女子ゲイン:「隊長が言わないなら私が言います。去年参加した男子がひとり、まだ戻ってないのよ。」

男ME(男):「戻ってないって?その、、去年の”α”地帯からですか?」

女子ゲイン:「そう。」

一同:「ええー!まじか!ほんとうに??やべえじゃん。」

女子ゲイン:「去年の参加者は6人で3組。私は戻って来ない男子と組み(ペア)だった。
そして私は今年、その男子を見つける為に再度参加しました。」

GO(豪):「去年と同じ場所にいくの?」

女子ゲイン:「そう。」

GO(豪):「それじゃ、僕が一緒にいくよ。僕の父はここ”グランドライン”の構造屋なんだ。僕は小さい頃から、父の構造調査を手伝ってきたから、少々なら役に立つかもしれない。皆んなが驚くのもしょうがないよ。この”グランドライン”には何があっても不思議はないんだ。僕達人間が本来住むところではなく、人間が住むところが無くなってしまい、しょうがなくここにお邪魔させて
もらっているような場所だから。僕らはまだ若い。今までは安全な場所にしかいなかったから、危険を知る必要がある。」

女WO(女):「去年は3組と言いましたよね?1人は今ここにいて、ひとりは行方不明。残りの4人は?」

隊長:「去年ひとり行方不明になったので、途中打ち切りになり、特例で4人は大人への条件を獲得しました。ここにいるゲインだけは、それを認めず、去年の彼を探し出して一緒に進級しよう、と懇願してきたのです。ゲインと行方不明の男KNOCK(ノック)だけは去年進級してないので、年齢は君達と同じ20歳という事になっています。」

一同:「…。」

WA(輪):「「ツーホール」をクリアしないと歳も止まってしまうのかよ。」

WO(女):「ずっと子供のままは嫌だな。」

GA(我):「私も彼(KNOCK)を探したいです。」

キックス①②:「おお!それいい!そうだそうだ。この際皆んなその場所へ行って彼(KNOCK)を探そうぜ!うん。うん。それがよくね?」

隊長:「…。皆に話がある。ゲインだけを除いて、ちょっと裏へ来いっ。」

一同:「なんだよ。なんだよ…」

ゲインは皆が居なくなってひとりになった。しゃがみ込み考える。「わたしだって、あの日から自分自身がすっかり変わってしまったのは分かっている。わかってはいるけど、何か身体の半分の意識がどうしても言うことをきかないのだ。あの日から”それ”は制御できない。どうしても‥。」

隊長:「ゲインのことだが…去年彼(KNOCK)が行方不明になって、彼女ひとり戻ってきた時の話だが、、なんだかねぇ、人が変わったように静かになってしまって。。だからね、疑ってるわけじゃ無いのだが、、彼女は何か知っている。
俺はそう感じるのだよ。だからゲインが行く”α”地帯は皆の場所と違って危険だ。だから、皆にはそこには行かせなくない。
ゲインの”α”地帯には今回は特別に巡回員も最後まで付き添わせる。
”GO(豪)”君。今回ゲインのパートナーは君に任せたい。大丈夫か?」

GO(豪):「はい。大丈夫です。やってみます。」

WA(輪):「なんだかGO(豪)君だけ、特別だねぇ。」

ME(女):「まぁ。今回は巡回員が張り付くって言うし任せて大丈夫じゃない?」

隊長:「よーし。それじゃあ、はじめるぞお。
各”α”地帯に案内する巡回員と組みを紹介する。
ゲインとGO(豪) の”α”-ブルー巡回員。
BOO(武)とGQ(自給)の”α”-イエロー巡回員。
WA(輪)とGA(我)の”α”-ゴールド巡回員。
キックス①+②の”α”-レッド巡回員。
WO(女)とME(男)の”α”-グリーン巡回員。
となります。
時刻は今午前10時。
明日の午前10時まで、24H以内にここへ戻ってきた者が大人許可認定とする。
各自、ここにあるランタンをひとり一個ずつ持って行くこと。
※注意事項 
•どんな事があっても”グランドライン”屋外へは出ないこと
•もし水の中に潜ることがあれば、各自持っているプロトスーツを着ること。皆知っている通り”グランドライン”は地底の奥底にある。どんなに浅い水の中でもプロトスーツを着ないと水圧に身体を潰されてしまいます。プロトスーツは必ずいつでも使えるように、ジッパー付き胸ポケットの中に携帯しておくこと。
•武器の使用について。武器は各自ひとつだけなら持参オッケー。基本自分で使いこなせるものなら何でも良し。

武器の使用については予め聞かされていた。
GO(豪)は得意の剣をを持って行くことにした。小さい頃から習っている。
一緒に組むゲインの武器を確認する。ゲインはお手製のブーメランを持っていた。うむ、なるほど。近距離で戦うには女性は不利だ。遠距離勝負という所か。だが、相手が多勢ならどうする?ブーメランひとつは心細いな。と思った。付添人の巡回員ブルーは痩せていて、頭は良さそうだが、頼りなさそうだ。それでも何かしらの経験はあるはずだ。僕らの組みは3人いるから、他のチームよりはひとり分有利なはずだ。でも、ふと考えた。「武器を持って来い」と言う事は、やはり”α”地帯には何かがいるのだ。でも一体、何がいる、、と、いうのか。。他の人の武器を確かめる。ME(男)もWO(女)もGA(我)も武器を持っている様子はない。
WA(輪)は大きめのリュックを背負っている。
あの中に武器が入っているのだろうか。
GQ(自給)の武器は農業用の畑を耕す鍬(くわ)だ。あれは武器というより、道具だろう。それにしても土が無い環境に鍬(くわ)とは珍しい。物がない時代によく手に入れたものだ。
BOO(武)の武器は?どんなに目を凝らしても武器という武器は見当たらない。左右の腕に何かしら変わった腕輪をしているだけだ。。
皆んな、大丈夫なのか。
キックス①②はマシン専門らしい。大きな声を出して自慢げに言うのでマシンを引き連れて”α”へ行くのは皆知っていた。

そして、それぞれの”α”へ向かう。


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