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鈴を持つ者たちの音色  第四十八話 ”引力の谷”

”スズモノ”達の地上の旅が始まった。
これだけの強者が揃って旅をするのは先にも後にもこの機会だけになるだろう。
皆そう思っていた。

朝露は光に反射して煌めき
葉露から溢れる
光の玉が連鎖して躍動する。

風が吹き
背の高い樹木が
枝で団扇を仰ぐように
左右に巨体を揺らす。

WO(女)の長い髪の毛からは
風に乗って良い香りがした。
花々は様々な色を被り
季節と共にその被り物を変えるという。
華やかな模様をした蝶が
花々を独占しようとハタハタと
目の前を覆っていく

大空では壮大な青に線を引くように白鳥が列をなして飛行している。時折声を発してリズムをとっているようだ。

天から地へ
360度の世界全てが美しい。

地球とは
地上とは
こんなにも美しいものだと
変え難い責任感の様な物に支配される。

ME(男):「どこを歩いても、どこにいても美しい場所ばかりだ。」

WO(女):「美しい。とても美しいわ。この世界。目に入れても痛くない景色とは、こんな時に言うのかしら。」

BOO(武):「山の稜線がくっきりと空に型抜きされている。」

GQ(自給):「今後”グランドライン”に移り住む歴史になるなんて、到底思えない。」

GA(我):「誰がこの地球を奪う?」

WA(輪):「誰がこの”美しさ”を奪う?」

GO(豪):「どちらも”アイツラ”が奪う。」

WO(女):「そうよ。」

”スズモノ”一行は大人数で歩く為目立った。
鳥や虫、獣達はそんな光景を見ている。
その”生き物”の中にも”アイツラ”に”同調”された目を持っている生き物がいた。たぬきだ。
たぬきの目からすぐに”アイツラ”へと情報が流れた。
GA(我)が話しかけた鳥が、それを教えてくれた。
その鳥はGA(我)の肩に留まりしばらく”スズモノ”一行と行動を共にした。

鳥:「今日の天気は晴れ。晴れ」

ME(男):「おー。便利だね。天気予報まで教えてくれるんだ。」

WA(輪):「鳥よ。なぜ動物の一部は”アイツラ”の監視下になっている?」

鳥:「一部はカメラ。一部は録音。となっている。両方は無い。さっきのたぬきはカメラ。目を”同調”された者だ。誰もが”アイツラ”に”同調”されるわけでは無い。”アイツラ”は怪しい機械人間だってことは動物達の方が人間より察するのは早い。それでも”アイツラ”に買われるやつは交換条件を持ちかけられたのさ。」

BOO(武):「なんだよ。その交換条件って」

鳥:「人間になりたい願望を持った者さ。」

GO(豪):「はぁ?人間になりたい?そんな願望を持った動物がいるってのかい?」

鳥:「少なからずいます。動物にだって”欲”張りなやつがいるんです。人間になって女の子と遊びたい。とか、偉くなって人を従わせたい。とかね。」

WO(女):「それで?交換条件を結んだやつは人間になれるの?」

鳥:「まさか。なれません。”アイツラ”は部分的に”同調”させ、その次いでに暗示をかけるのです。”人間になったと思わせる”暗示を。」

ME(男):「見た目はそのままなのに、本人は”人間”になった。と思い込んでいるのか。」

鳥:「そうです。最も悪いパターンです。人間達がたまに”妖怪”の話をしますよね?正にその”妖怪”の話の出元が、この”思い込み人間”から来たのです。”妖怪”の実際の姿は人間にちょっかいを出す”動物達”なのです。」

GQ(自給):「ほほー。なるほどね。筋が通った話ね。でもがっかりだぁ。僕”妖怪”好きで信じていたのになぁ。」

大叔母:「”アイツラ”に情報が流れた。という事は地雷をひとつ踏んだも同じ。
備えよ。”アイツラ”は来る。」

GE(ゲン)が何かを察して飛び出した。
一行の前方で剣の弾く音がした。
GE(ゲン)が何かと交わっている。
姿を確認した。
”アイツラ”だ。
GO(豪)も飛び出す。

GE(ゲン)は”大丈夫だ。ひとりでやらせろ!”と言っている。
GO(豪)は剣を終いGE(ゲン)にその場を任せた。

それにしても来るのが早い。
たぬきから”スズモノ”の映像が”アイツラ”に届き、数分後にはこうして”アイツラ”がやってくる。
それだけ”アイツラ”の数が多くどこにでもいる?それとも何かしらの瞬間移動的なものが”アイツラ”にはあるのか?
それか、偶然的に近くにいた?
どの線も想像し難い。

そういえば貨物船に”同調”してやってきた半身体は去る時にすぐにいなくなった。

もしかしたら”アイツラ”は時空を行き来できる能力があるのかも知れない。
もしもそれが本当なら、ここへ送り込まれた”アイツラ”は今は一体だが、一度に数十、数百体だって出現可能なかも知れなかった。
そうなると厄介だ。

GE(ゲン)は易々と”アイツラ”をやってのけた。

大叔母が回収機を呼ぶ。
破壊した”アイツラ”を再利用する。本部へ集配しキックスコーポレーションの開発材料とする。
宇宙向けのロケットも”アイツラ”を解体した部品を集めて造ったものだった。
飛行型の回収機は手際良くバラバラになった”アイツラ”を掃除機のように部品を吸引し去っていく。
僕らが来た方向だ。

WO(女):「灯台の方向ね?」

大叔母:「そうじゃ。灯台の”ゲート”を通して本部へ集配する。」

ME(男):「なるほどなぁ。確かに海底に沈んだ船の部品だけじゃあんなに色んな物を造れるはずがないんじゃないか、と”グランドライン”にいて思ってたもんな。こういう事だったんだ。」

大叔母:「建前じゃ。海底に沈んだ部品だけを集めて造ってる体(てい)にした。その方が皆んなにしっくりくる。」

WA(輪):「矛盾してるわね。”アイツラ”が多ければ多いほど地球を荒らすけど、こっち側から破壊できれば、それは貴重な材料となり成長効率を上げることができる。」

GQ(自給):「‥叔母。”アイツラ”を回収して配送するのは”現世”だけ?ここ”過去の世”や、”来世”にも材料は必要なのでは?」

大叔母:「いいとこつくわね。そう。必要としているのは”現世”だけじゃない。この世でも必要としているし、”来世”にも必要なの。
1番優先的に配送しているのは”グランドライン”よ。しかし、いきなり”グランドライン”を近未来的にバージョンアップしたらどう?あり得ないでしょ?一体何の力が働いているか不思議に思い、皆の頭が混乱してしまう。
そこはしっかり”複数の世”のバランスを保ちつつ分散に配送しているの。」

GA(我):「ふむ。ここ”過去の世”にも”アイツラ”の部品が出回っている、という事になればここにも”アイツラ”を改造したバージョンアップした機械人間もあるって事?」

大叔母:「そうじゃ。私と灯台師で造ったものもある。後ろをみろ。」

”スズモノ”一行は後ろを見た。

BOO(武):「いつの間に?」

”スズモノ”の後ろに三体の機械人間が賛同し、ついて来ていた。

大叔母:「一体は私と灯台師が造った。あと二体はここ”過去の世”にいる”モモンガ族”が造った。モモンガ族は優秀じゃ。足がつかない。次から次へと居場所を変える。それなのに標的があると狙いはしっかりと定め離さない。今じゃこのように我らの手伝いをしてくれる。手先も器用じゃ。」

仲間が増える。
心強い。

大叔母:「今晩は”モモンガ族”のキャンプ地で夜を明かす。色々と”過去の世”を学ぶといい。」

【モモンガ族のキャンプ地】
”モモンガ族”のキャンプ地は大樹の上にあった。
”人成らずとも大樹を降りれば野生と成り族士”と志を大きく飾ってある。
人という精神は野生的行動に勝てぬ。という意味らしい。”血”を大事にしているのだ。
”モモンガ族”も時代と共に規模が縮小している。
”モモンガ族”の長隊士は”モモンガ族”も維持できぬなら”機械人間”を製作し、維持していく他に道はない。と大叔母に賛同してきた。
今では何体かの”機械モモンガ族”を所有している。

ME(男):「なぁ。モモンガ族は樹の上で眠るってほんとうか?」

モモンガ族の士のひとり”ダンテ”は言う。
「そうだ。いつ敵に襲われてもいいように樹の上で眠り、敵が来たらモモンガの様に樹と樹の間を飛び回る。空中戦では負けたことが無い。」

GO(豪):「じゃあ、君らと戦うなら羽を斬り、陸上戦に持ち込めば楽勝なんだな?」

モモンガ族の一味が周囲で笑うのが聞こえた。

ダンテ:「そう思う所が”罠”なんだ。」

GO(豪):「罠?」

ダンテ:「そう。実はモモンガ族が最も得意とするのが陸上戦だ。空中戦に敵なし、と思わせといて”陸”に誘い出す。そしてがぶり。敵は蟻地獄の”蟻”となろう。」

BOO(武):「うむ。本来の戦さの原点だな。人間の考える策というより、野獣の様な野生の戦い方だなぁ。」

GQ(自給):「今夜のベッドはハンモックだ。ユラユラと楽しく眠れそうだ。」

GA(我):「”スズモノ”の中で空中戦得意な”鈴”はいたっけ?」

GO(豪):「そういえば‥いない。」

WA(輪):「大丈夫か?”スズモノ”‥」

GQ(自給):「GA(我)が袈裟で少々飛べるぐらいか」

GA(我):「あれは風に乗るだけ。バッサバッサと鳥のようにはいかないさ。」

GO(豪):「それはまずくない?空中戦だってそのうちあるだろう?もし、今夜。こんな大樹の上で襲われたらどうなる?」

GE(ゲン):「”スズモノ”一行は高所恐怖症で高い所から落とされました。とさ‥end。ってな。」

WO(女):「モモンガ族から1名でもいい。誰か”スズモノ”一行にメンバーとして加わって欲しい。どうだろう?大叔母。」

大叔母:「ダンテ。どう思う?」

ダンテ:「モモンガ族は族員が減る一方。歯止めが効かないのは確か。しかし、大叔母がお困り、この地球の未来の手助けとなるなら眼前で誓いましょう。”スズモノ”一員として。」

こうして”スズモノ”一行はまたひとり仲間を増やした。

次の日は皆を起こさないように暗明かりの早朝にモモンガ族のキャンプ地を出発した。

途中”スズモノ”一行は構造屋グッドの研究所へ立ち寄った。

グッド:「これはこれは大叔母。お久しぶりです。随分と今日は大人数で来られましたね。」

大叔母:「あぁ。今日は地球を救ってもらうべく仲間に、歴史を教えてやってる所じゃ。目的地は”引力の谷”じゃが、その前にここが情報屋である事を知っておかないといかん。」

グッド:「看板は構造屋なのにね。中身は情報屋‥。まぁあなたぐらいですよ。常連さんは。おひいきにどうぞ。
うちの息子たちはどうですか?
”現世”と”来世”でうまくやってるでしようか?」

GO(豪)とGE(ゲン)は皆んなの後ろに隠れて聞き耳を立てていた。

大叔母:「あぁ。とても”良い”。GO(豪)は着実にレベルアップしている。GE(ゲン)だって最近地上に出したばかりなのに、既にGO(豪)に追いつく勢いよ。両方とも特徴が違うから。面白いわ。
あなたの種は万能ね?」

グッド:「ああ、いやいや、、。私は剣はもっぱらなので、、嫁さんに似たのでしょう。」

大叔母:「それで?どうじゃ?ここ最近の動きは?」

グッド:「ええ。”アイツラ”の落ちてくる数はそんなには増えていません。まんまと地球の腹の中に引き込まれてます。しかし、中には引き込まれを逃れ地上に落ちてくる”者”は相変わらずいます。そして、大抵そんな”アイツラ”は強者。まぁ。あれだけの地球の引力をかいくぐる訳ですから”異端児”とも呼べるレベルの”者”ですねぇ。」

大叔母:「分類表はできているか?」

グッド:「ええ。大まかなものですけど、参考になるなら。どうぞ。」

大叔母:「うん。なかなか良く分類されておる。もらっていくぞ。」

グッド:「ええ。どうぞ。息子達が世話になってるもんで。こんなの容易いですよ。」

大叔母:「そうだ。人質みたいなもんじゃろ。笑引き続き頼むぞ。」

グッド:「ええ。任せて下さい。(そう言いながらお気に入りのハットの下からチラリとGO(豪)とGE(ゲン)の姿を確認する。)」

エキゾチック
マッスル
スモールワールド
戦闘機
剣士
超合金
レディース
キューブ
電磁波
吸引力
スリープモード
レンジャー


”引力の谷”へ向かう途中に大叔母はグッドが書いた分類表に目を通した。
相変わらず”グッド”にしか分からない表現書きだった。わかりづらい‥

5日目にして一行は”引力の谷”へ着いた。

茂みを掻き分け足場の悪い岩地を進むと、何日か前に”引っ張られた”宇宙船が”引力の谷”へ突き刺さっていた。
”アイツラ”の姿は今は無い。

GQ(自給):「おおー。これはなんてどデカい宇宙船なんだ。」

GO(豪):「やはり地球以外の星に住む”者”が実際いたんだ。」

ME(男):「何日か経つと、こんなどデカい宇宙船でさえも地球は完全に腹の中へ入れてしまう。それがここ”引力の谷”の不思議なんだ。」

その時WA(輪)が気付いた。
光が鏡で反射するようにキラリと光ったものがある。

WA(輪):「スナイパーよ!」

WA(輪)が叫ぶと同時に既にBOO(武)が勘づき樹木の上から狙っている”スナイパー”に蹴りつく。
野性の勘だ。
”スナイパー”は自ら樹木の上から身を投じBOO(武)の蹴りを交わすが、そのまま落下していく。
”スナイパー”はそれでも落下しながら銃口で狙いを定め引き金を引いた。

「ズギュン!」

弾道は1発のはずだったが、”アイツラ”の放つ1発だ。そう簡単には行かない。皆身構える。
1発は膨れあがりボール玉の大きさになった。
一行の手前まできた。その時前方に出たのはGA(我)だ。袈裟を体前で広げトランポリンのように銃弾玉を真上へ抱き弾く。
遠くで弾かれた銃弾玉が暴発した。
その暴発したタイミングとほぼ同時に落下した”スナイパー”は海モグラに抱えられバックドロップで上半身が地中に既に突き刺さっていた。

大叔母:「おかしい。ここ”過去の世”へ来てから”アイツラ”が襲ってくるのがいつも一体。これは試されてるとしか思えない。どこかで何かがデーター取りをしているのかも知れない。」

それにしてもグッドの”分類表”は出鱈目じゃないが穴がある。”スナイパー”?って分類はどこにも書いてない。

大叔母:「”アイツラ”はもうここには出現しないだろう。宇宙船を教材として分析しよう。」

GQ(自給):「この材質は‥(GQ(自給)は小型のルーペを出して表面を見る。)炭?いや岩が焦げた無機質な材‥何にも化学反応しないゼロ機質じゃないか?」

ME(男):「ゼロ機質?」

GQ(自給):「そう。例えばロケット。ロケットは燃料、機材、パネル、断熱材、配線など様々な材質を必要とする。しかし、この”ゼロ機質”は何物にも属さない。いや、属した物質だが、焼け焦がれた為に何にも属さない物質となり、その物質だから宇宙をとんでこれる。
僕が思うところ、この機質は宇宙空間漂う物質と反響し、その反響力を推進力に変えとんできた。と推測する。だからこんなに巨大なのにここまで最速で来れる。軽量化、無燃料、移動スピード。”ゼロ機質”は宇宙を移動できる最高のエコ船となる。」

WO(女):「どうして、そんな科学的発想ができるの?”アイツラ”はただの”機械ロボット”よ?人間より科学知識が勝るとは考えられない。」

ME(男):「AI機能が人間より高い知能を得た?」

WO(女):「まさか!AIは人間が作ったものよ。その人間を勝るなんてあり得ない。」

ME(男):「”あちら”には”こちら”より勝る何かが備わっているのだろう。」

WO(女):「機械ロボットは既に人間の知能を勝っていると言うの?そんなの認めたくない。」

大叔母:「大丈夫じゃ。もし勝っているとしても、それは一部分じゃ。人間を全てに、おいて勝る事は絶対無い。」

WO(女):「そうならいいんだけど‥」

GQ(自給):「知能だけじゃない。おそらく”アイツラ”のいる惑星は”そんな物質”環境に恵まれている。天然の”ゼロ機質”が豊富にあるのだろう。」

WA(輪):「こうやって”アイツラ”の落とし物に触れると、どんどん”アイツラ”との距離が近くなるわね。」

GA(我):「”アイツラ”の住む惑星は、特別な機質があるのは分かった。しかし、全く”生”の生命体の存在は感じないなぁ。おそらく”ゼロ機質”が有り”ゼロ生命体”。」

ME(男):「元々生命が存在しないのに、どうして”アイツラ”がそこにいる?」

WO(女):「誰かが”導き”創造した。」

ME(男):「いったい誰が?」

大叔母:「…。いいわ。いいわね。あなた達は優秀な子達。いくつかのヒントから想像し、読み取る能力もついてきたようね。」

大叔母:「私と漂流者”Z(ゼット)”との出会いは古い。私は宇宙人の存在を昔から信じていた。
地上生活”ジュン”の時、私は交信車を造り暇があれば夜中に交信電波を発していた。
いつだったか蒸し暑い夏の夜、蛍のあかりをうっとり見つめながら交信電波の異常にすぐに気づいた。
忘れもしない、その夜は蛍が異常発生した特別な夜じゃった。
受信者は”Z(ゼット)”
今でいう惑星アトヨーT星からの受信じゃった。」

WO(女):「”ジュン”は宇宙人に何を期待して交信していたの?交信車まで造って。」

大叔母:「その頃の”ジュン”は、宇宙人に縋る気持ちで交信していた。地球は住む地がどんどん狭められ内戦も多く、日中は太陽から隠れるように暮らしていたから。
宇宙人なら特殊な能力で何とかしてくれるんじゃないかと、ね。神よりも宇宙人の方がいそうな気がして。」

大叔母:「”Z(ゼット)”はアトヨーT星に足を踏み入れた第一号者だった。
”Z(ゼット)”は機械ロボット。
過去に参戦した宇宙戦争で壊され何十年も宇宙空間を漂っていた漂流者だった。
”Z(ゼット)”はたまたまアトヨーT星に流れついた。生存者は誰もいなかったが、過去に世界一を誇る機械会社OYOTAが極秘に惑星試験場として使用している形跡があり、本部シェルターがそのまま置いてあった。
おそらく試験場は中断されたまま放置になったのだろう。
”Z(ゼット)”はかろうじて動くそのカラダで通信機の電源を入れ、宇宙空間を漂う電波を探し、ようやく”ジュン”の発する周波を掴んだのだった。
そこから”ジュン”と”Z(ゼット)”の交信のやりとりが続いた。それはまるで遠距離恋愛のカップルのようだった。
電波のやり取りは単純だ。発する方が探りを入れて法則を作る。
受信するほうは手探りで法則を読み取り、それに答える。そうする事でお互いの”言葉”を通じ合えた。
”ジュン”は受信の相手を宇宙人だと思っていたが、次第に違う、と気付いた。
”Z(ゼット)”がカラダの修理の仕方を聞いてきたからだ。
”ジュン”は修理の仕方を教えて”Z(ゼット)”は元通りのカラダになった。
それから、次第に”Z(ゼット)は”ジュン”のメカ能力に目をつけていく。

”Z(ゼット)”は”ジュン”のメカ能力を利用して自分と同じ個体を造りたい。とのアイディアを持ち出した。
アトヨーT星には”Z(ゼット)”のような機械ロボットが自ずと増え出した。
アトヨーT星には機械を造るには丁度良い資源が豊富にあった。
おそらく機械メーカーOYOTAコーポレーションは事前にアトヨーT星のこれらの資源に目星をつけていた。計算された惑星試験場だった。

”ジュン”は地球上からアトヨーT星に機械ロボットが増えていくのを想像し、一つの思惑が生んだ。
「そうだ。その場所をこれからの人間たちの移住先にすればいい」

これまで聞き手だった”ジュン”も今度は”Z(ゼット)”に要望を出す。
酸素を排気する装置の開発
地下水の捻出
気温の安定
重力装置の開発
この4課題を与えた。
人間が住むための4条件として。

”Z(ゼット)”は従順だった。
すぐに「人間が住むための4条件」に向かい動いてくれた。
先ずは硬い大地を耕すところからはじめてくれた。
大地は柔らかくなり掘り出した穴からは地下水が出た。
大気の循環装置を造り地底から出るガスを惑星外に放出した。ガスは溜まらず自ずと大気は清潔になっていった。
残す所は重力装置の開発と、気温の安定までこじつけた。その時だ。

順調に事は進んでいたと思った矢先、反乱が起きた。反乱の元出は”地球”の存在だった。
アトヨーT星を人間が住みよくする労働を強いられた機械ロボットは、「造るより”向かう”方が楽だ」と考える体(たい)があらわれた。

「この場所を変えるより、”地球”という場所を乗っ取った方が早い」

アトヨーT星の機械ロボットはそう考える集団ができしまった。
そして宇宙船の開発だ。
何年か後には反乱集団の方が多くなっていった。
”Z(ゼット)”は捕らえられ別な者が指揮を取るようになる。
地球は目をつけられ反乱集団は地球を欲しかった。そして今に至る。」

大叔母:「分かったじゃろ。事の発端は”私”だ。私が機械ロボットを生み出さなければ。あの時”Z(ゼット)”をけしかけて機械ロボットを増やさなければ、いや、あの時”Z(ゼット)”を修理しなければ‥こうならなかった、、‥悔しい。」

WA(女):「あなたは”欲”を出した。それが、間違いね。あなたの”欲”に違和感を感じた者が”アイツラ”になってしまった。
”欲”はいつの時代も”毒”となる。」

大叔母:「”欲”?私は今でもそれを”欲”とは思っていないわ。私は”希望”として、それを指揮してきた。”欲”?笑。私がやってきたのは人類の”希望”じゃないの?」

WO(女):「そう思いたいわ。けど、今現実を見て!現に地球は壊滅状態。人間はどんどん減っていく。新しい生命は宿らない。
この、どこに”希望”があるというの?!」

大叔母:「ふふふ。それでも”希望”は夢にみたいじゃないか。思い描く美しい世界は、消えてしまったわけじゃない!↓」

WO(女):「あなたは!!190年も生きて何を見てきたの!!甘い言葉を吐いて!
”夢”?”希望”?そんな軽い言葉で皆んなを巻き込まないで!!結局”アイツラ”を生み出したきっかけは、あなた、なんだから!」

「君わー‥ほんっとにこの人の1人娘かいー?血筋が繋がってるわりにーわ‥なーんも‥わかっちゃいねー‥ナァー‥」

誰だろう‥どこから声がする?
はじめて聞く声だ‥
脳内に響く‥

「こんなに‥何百年も‥(泣く)
逃げたくても使命が先行する‥逃げられない‥死ねない‥苦しいが、みんなのために‥逃げられない。それも”現世”だけじゃない。”過去”も”来世”も‥そんなことできる?君たちできる?
痛み、感情、悩み、後悔、悲しみ‥
君らの何倍?3倍?いや、それ以上‥それを生きてきたんだ。そして、諦めない。会えただけで頭があがらない。それがあなたの母親‥みんなの母親‥大叔母さぁ‥迷う必要なんてない!信じて追えよ!」

声は‥海モグラだ。大きな顔面がすっかり濡れている‥。
言葉少なく
それでいてしっかり皆をみている。
残酷な運命を背負ってまでも、こうして大叔母のことを心痛している。

”スズモノ”たちは向かう方向がはっきり見えた。
信じて闘うのは自分じゃない。
”スズモノ”一塊なのだ。
そして地球、グランドラインなのだ。

”スズモノ”はこうして引き合い
一塊となり
”過去の世”を後にした。




















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