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鈴を持つ者たちの音色  第二十三話”α”-グリーン①

”グランドライン”は水龍に護られている。という言い伝えがある。

ファーストペンギンのミッションを達成したジュンは水龍の力が無ければのこ”グランドライン”の場所は見つからなかった。とジュンは言い残している。
”ウタバ”の民はこの”グランドライン”を外側から水龍がグルグルと定期的に旋回し、護ってくれていると信じている。
”グランドライン”の外側に関しては人間の力は及ばない。外敵要因に関しては無防備に近い。それなのに長年何も起こらないという事は”何か”に護られているという事なのかも知れなかった。
今回の巡回任務に選ばれた者の中で、特に水龍の存在を信じているふたりがいた。
ME(男)とWO(女)だ。
ふたりは医療系の家系だ。父親が医者、母親が看護士、その当時は理学療法士や作業療法士、福祉衛生士もほぼ医者や看護士の仕事でもあった。更に動物の病気にも詳しかった。生命を護る守護神とも言える立場だった。

巡回員グリーン:「君たちふたりはこれから、特別な場所を巡回することになる。そこは”α”地帯といっても、非常に神聖な場所だから決してふざけた真似などしないように。」

ふたりは開始前からずいぶんと重い話だなぁ。と呆れた。

ME(男):「なんだよ!それ。ふざけた真似って。そんな事するように見える?」

WO(女):「”非常に”神聖な場所。と言うけど、どんな場所なの?教えて欲しいわ。」

巡回員グリーン:「それは行ってから説明する。ここで”ヤツ”を見せるわけにはいかない。皆驚くからなぁ。」

ME(男):「”ヤツ”?やつって何ですか?気になってしょうがない。」

巡回任務にグリーン:「話しててもしょうがない。行きましょう。」

説明少なくふたりは巡回員グリーンに連れられて”α”地帯、それも神聖な”α”地帯へと向かった。
巡回員グリーンの足取りは歳の割に速く軽い。
一歩が三歩ぐらいに感じられる。ふたりはついて行くだけで精一杯だった。
方向的には”グランドライン”の中腹あたりだろうか。中腹には”ウタバ”の民が”グランドライン”へ越してきた時に侵入した”グランドライン”の臍(ヘソ)と呼ばれる屋外からの侵入口がある。

1時間歩くと「石工の部屋」に行き着いた。
この「石工の部屋」は別名”過去に戻る部屋”と言われている。
1m✖︎1mの石で造られたブロックを積み上げて囲んだこの部屋は唯一”グランドライン”の中で海底の圧力を遮断できる部屋だ。”ウタバ”の民はここ”グランドライン”の中で常に海底の圧力や重力の影響を受けて生活をしている。
しかし、誰もがこの圧力や重力を簡単に受け入れられる身体では無い。
時に身体は悲鳴をあげ、拒否反応を示す。
そんな時に一旦身体をオフ(ゼロ値)に回復させる為にこの部屋をつくったのだった。
圧力や重力を遮断する為に1✖︎1のブロックは何層にも重ね、並べてある。
巡回員グリーンはふたりをこの部屋の中へ案内した。人型に切り抜かれた部屋の入り口を入る。

WO(女):「なぜこの部屋には扉がないの?」

巡回員グリーン:「扉をつくってしまえば何か起きた時に中にいる人が閉じ込められる。それを防ぐために扉をつくらなかった。これだけ分厚いブロックを積み上げている。閉じ込められたら出て来れなくなってしまうだろう。」

WO(女):「なるほどね。ここが噂の石工の部屋。別名”過去に戻る部屋”。重力が解かれその時に身体は過去の感覚を思い出し過去の夢を見る、という。」

扉が無い分、入り口を進むと階段があり、数段を降り進む構造になっていた。
その数段の階段を降り切ると目の前にその部屋はあった。

ME(男):「人が…浮いてる??」
WO(女):「えっ?…」

巡回員グリーン:「浮いているように見えますが、ここは無重力では無い。圧力差と重力差が石の反動を伝ってエネルギーを発生させているのです。この部屋は床材を何層にもブロック材で防いでいる関係で、下から上にかけての反動エネルギーが強い。なので、あのように空中に寝そべっている様に見えるのです。」

WO(女):「すごい!こんな部屋があるなんて。これだけの反動エネルギーがあるということは、ここ”グランドライン”は相当深い場所ね。一体私たちはどのぐらいの深さの場所で生活しているのかしら。」

巡回員グリーン:「”グランドライン”の深底度は公表されていませんものね。場所を”アイツラ”に特定されないように。」

ME(男):「”アイツラ”??」

巡回員グリーン:「そう。”アイツラ”…」

ふたりは意味がわからなくなってきた。
ここは医療用部屋という事になるのか‥
3人は、人が浮遊している付近を避けて奥の壁側に移動した。

ME(男):「僕らもあの付近に踏み入ると、その、、”浮く”んですか?」

巡回員グリーン:「”浮く”よ。しかし磁石にS極、N極があるようにME(男)君にも特別な反極材を取り付けないと浮かない。例えば足裏に反極材を取り付けるとしよう。そうすれば空中を歩くように”浮く”。」

WO(女):「この部屋どこでも反極材を使うと”浮く”のですか?」

巡回員グリーン:「そうだ。」

部屋はL字に左側へ曲がり、浮遊治療者の姿はこちらからも、向こうからも、見えなくなった。

巡回員グリーン:「さぁ。ここだ。。下から、、えっーと、ふたつ…め。」

巡回員グリーンは先っぽに大きな吸盤の付いた、折り畳まれたステッキを背中のリュックから取り出した。シャキーン!とコンパクトな長さから1Mぐらいに伸ばす。そして両掌ぐらいの大きさの吸盤を目の前の1✖︎1の石のブロック中央に貼り付けた。石と吸盤は同じ仲間同士のようにピッタリとくっつき合った。ステッキが手放しで真っ直ぐに反り立つ。
巡回員グリーンはその反り立ったステッキを列車を動かすレバー操作の様に、左にカクンと折り曲げる様にレバーを入れる。
すると1✖︎1の石のブロックはゆっくりと左へ移動した。目の前に1✖︎1のブロック分、穴ができた。
次に彼は、左に折れ曲がったレバーを真っ直ぐに戻し、グリップ部のスイッチをカチリと押しながらスッポンステッキを取り外した。それを今度は先ほどの穴があいた部分の上のブロックへ取り付け、同じ要領でそのブロックを今度は上へ押し上げた。
彼らの目の前に縦2メートル、横1メートル分の開放穴ができた。
巡回員グリーンはスッポンステッキを取り外し、折り畳み、何事もなかった様にそれをリュックに仕舞い込んだ。

巡回員グリーン:「さぁ。僕がお付き合い出来るのはこの辺までになります。ここからは道案内を呼びますので”ヤツ”についていってください。」

巡回員グリーンはヒューイッと指笛を鳴らすと、先ほど開けた開放部から、何やら近づく音がした。その音はこちらに近づくにつれ、どんどん大きくなる。思いの外大きな音だった。ふたりは恐怖を感じ、その開放部から跳ね去り、身構えた。
「ドカッ。ザザッ。ドカッ。ザザッ。」と到着と同時に、その大きな音が止まった。
現れたのは高さ3メートルある巨人?いや全身毛ぐるみの口から2本の牙を突出させた大獣だった。
手にも、口から出ている牙と同質の爪が3本付いている。
”ヤツ”は狭い開放部からニョロリと軟体生物のように抜け出して奇妙に現れた。
こんなに大きく毛ぐるみのなのに、アメーバのように軟らかい。

巡回員グリーン:「びっくりしたでしょ。僕らは”ヤツ”を”海モグラ”と呼んでます。彼は動く地図。この”グランドライン”の至る所を知り尽くしています。
喋れないが”グランドライン”の案内人には最適なのです。そして何よりトラブルにも強い。ここからは”ヤツ”に案内してもらいましょう。」

ME(男):「げげっ。まじで言ってるんですか?”海モグラ”?どう見たって猛獣じゃないですか!僕のこと、食べやしないですか?この、大きな、口で‥」

WO(女):「(ゾワゾワ‥)わたしこわい。」

巡回員グリーン:「大丈夫ですよ!こう見えても”海モグラ”ぐらい性格が良い人(人?)なんて、いませんから。いかにもあなたのことを食べそうに見えるけれども、食べやしません。」

ME(男):「そう言われても、なぁ。あなた達がもし、グルで僕を食べさせようと企んでいるなら‥(あーでもない、こーでもない‥ぶつぶつ‥)

WO(女):「分かったわ。怖いけど。あなたを信じるわ。時間もないし。行くわっ。」

巡回員グリーン:「オッケー。それではこの後の説明をします。君たちはこの恐怖の”海モグラ”へ連れて行ってもらう場所は”神滝の宮”と呼ばれる場所です。その場所へ行き【聖水の壺】を探してきて欲しいのです。”神滝の宮”は一般の人に聞いても分からない。一部の上層部しか知らない場所ですので、くれぐれも他言しないように。」

ME(男):「【聖水の壺】!?【聖水の壺】と言ったら、僕が小さい頃から大人たちがずっと探し続けているという、あの【聖水の壺】??」

WO(女)「なぜ?私たちふたりなの?大人でも探せないものを。私たちふたりだけに探させる意味が分からない。危険過ぎやしない?」

巡回員グリーン:「これには意味があるのです。第一に、時間がない。第二に、あなた達ふたりにしか出来ないこと、が判っているのです。だからお願いしました。」

WO(女):「今回の任務は”α”地帯の巡回よ。今からするのは全く別任務。レギュラー員が行う危険レベルが高い任務と何ら変わりないじゃない?!」

巡回員グリーン:「もし通常任務としてあなた達にお願いすれば、もっと危険が倍増します。年に一度の新人巡回だ、という建前の方があなた達はノーマーク。誰も感知しない。隠れた任務で動ける。ってな訳です。私たち本部はそこを狙いました。」

ME(男):「なぜ、そこまでしてコソコソと隠れて任務を進めることになったの?」

巡回員グリーン:「これから言う事は最重要機密ですから絶対に口外してはいけませんよ。約束して下さい!
ここ”グランドライン”の中にスパイがいることがわかりました。もし、そのスパイに【聖水の壺】のありかなんて知られたら、ここ”グランドライン”は終わりをむかえます。今の所、ここ以外の新天地なんて無い。スパイはここへ生き残った民を”グランドライン”ごと滅ぼそうとしているのです。」



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