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鈴を持つ者たちの音色 第三十八話 ”鈴集め⑤”

GE(ゲン)は巨門の前に着くなり、巨門のぶ厚い門の片側を斬り壊してしまった。

RI(凛):「おい。お前は人の話を聞いてたか?」

GE(ゲン):「手懐けるように。って言ってたからさぁ。どうだぁ。見事、剣でキッパリ斬ってやった。これで、人が出入り出来る。」

RI(凛):「なんかお前。他のメンバーと波長が違うな。めんどくさいなぁ。」

GO(豪):「だろう?だから連れてきたくなかったんだ。」

RI(凛):「GE(ゲン)には悪いけど、GE(ゲン)はメンバーと離れて別メニューだな。」

GE(ゲン):「別にぃー。どっちでもいいよ。」

RI(凛):「よし。それじゃGO(豪)はGE(ゲン)が斬った門を開けるどころか元に戻す”同調”をやるぞ。弟の責任は兄の責任だ。」

GO(豪):「ええー!無茶苦茶ですよー。RI(凛)さん。」

RI(凛):「ごちゃごちゃ言ってないでヤレ。まだまだ教えることがある。」

RI(凛)はこう見えても”水龍”に選ばれし者。
GO(豪)とGE(ゲン)は何日かで、巨門を開けるどころか”同調”の力で巨門を元の形に戻せるところまで”同調”のコツを得た。
教える人がいいのか。
教わる人がいいのか。おそらく前者だろう。

ようやく次のステージ。巨門をくぐると巡回員ブルーと大叔母が、出迎えた。

GO(豪):「あれー!?なんで巡回員さんがいるの?」

大叔母:「おいっ。不躾なこと言ったらあかんよ。この方は”グランドライン”本部司令総裁だぞ。つまりこの”グランドライン”で1番偉いお方じゃ。」

GO(豪):「ええー!じゃあ。”α”任務の時は巡回員のフリをしていた?ってこと?」

巡回員ブルー:「ああ。そうだよ。僕は元々現場好きでねぇ。君とゲインとKnockをこの目で確かめておきたかったのだよ。特に”君”。君はまだ”力”をコントロールできていない。
スパイかもしれない”ゲイン”と”Knock”両者に挟まれて心配だったのだ。
もし何かあれば私の出番だったね。」

大叔母:「総裁はこう見えても”同調”も極めているし、”アイツラ”と闘う”力”もあるのよ。まぁ教えたのは私だけどね。だから”RI(凛)”もあえて君達と一緒にここへ、連れてこなかった。総裁はこの場所も”神龍の宮”も自由に行き来できるからね。」

GO(豪):「じゃあ、”α”任務の時に鈴をくれた人は誰?」

巡回員ブルー:「ああ。あれは副総裁だ。僕はこんな感じで現場をあっちこっち駆け回るから、事実上は副総裁が、本部を仕切る時も多いね。」

巡回員ブルー:「それにしても君の”山崩し”の発想は実に驚いたよ。おかげで地上復活への序章ともなりそうだ。”グランドライン”の膿みは取れ海中への酸素量が上がり、それはそのまま地上へと送れた。それはそのまま大地や空気の活性化を生むだろう。」

GO(豪):「ええ。でもあれは偶然でした。あんなにも空間が連なっているとは知りませんでした。」

巡回員ブルー:「この”グランドライン”もまだまだ未知なる場所がある。地球とはひとつの宇宙空間のように未知なる星だ。」

巡回員ブルー:「よし。話はここまでだ。さぁ”GE(ゲン)”おいで。君は僕が担当することになった。みっちり教えてやろう。」

隣で大叔母が頷いている。

GO(豪)とRI(凛)は顔を見合わせた。GE(ゲン)の顔をそっと見た。お互い笑いを堪えるので精一杯だった。

GO(豪):「他の”スズモノ”はもう来ているのですか?」

大叔母:「ああ。WO(女)とGQ(自給)とBOO(武)と”海モグラ”が今来て稽古中じゃ。裏の池にある櫓の中に皆んないる。櫓稽古をはじめて今日で3日目になる。」

GO(豪):「”海モグラ”?」

大叔母:「ああ。そうか。GO(豪)はまだあってないか。GO(豪)以外皆んな会ってるぞ。ちと怖い顔をしているから驚くなよ。お前素直だからなぁ。」

GO(豪)は屋敷の襖の大部屋で大叔母とRI(凛)との稽古。
GE(ゲン)は巡回員ブルーと中庭で稽古をはじめた。

大叔母:「それではGO(豪)よ。ここで”空間斬り”を見せてみなさい。いつものヤツじゃなく、先ほどの巨門を動かしたイメージでやってみて。」

GO(豪):「分かりました。”同調”を使ってやるんですね。難しそうですね。ちょっとイメージさせてください。」

RI(凛)と大叔母は畳の上に正座してGO(豪)を見守る。
GO(豪)の剣は一筋の風を起こした。
GO(豪)が消える。
GO(豪)は先ほどの巨門そばにポカーンと、立っていた。
大叔母のところへ戻ってくる。

大叔母:「今のは”空間斬り”ではない。”同調”と”テレポート”の意識が混在している。”テレポート”の意識が強い。そして巨門の記憶が頭に残りすぎ。
だから巨門前へテレポートしてしまったんだ。
いいか。あくまで”テレポート”は”テレポート”だ。”同調”とは使い方は似ているが、”別”だ。
そこを切り離せ。
あとは”空間斬り”はもっと”剣”を意識してみろ。”剣”に”同調”を注入するイメージだ。」

GO(豪):「分かりました。」

大叔母:「心は常にシンプルに。雑念は技を濁す。」

何回も何回も繰り返す度に、GO(豪)の”空間斬り”は何センチから1メートル。時には3メートルの”空間斬り”が出来るようになった。

大叔母:「まだまだ、だなぁ。”同調力”が足りない。もっと濃く”同調”しろ。いいか。お前なら、この部屋一個どころか、天から大地まで一光線の空間を縮めることが出来るはず。今は力が無いが、私の目指す所はそこじゃ。RI(凛)。あとは任せたよ。」

大叔母はRI(凛)に任せて大部屋を後にした。

RI(凛):「わかりました。よし。まずはコントロールを身につけよう。足元に畳があるな。今立っている所から”空間斬り”を1畳、2畳、3畳、と徐々に増やしていく。今は3畳以上いかないから、3畳いかない時は最初からやり直し。1畳からはじめる。その繰り返しだ。今日の目標は5畳だ。」

GO(豪):「へぇー。おっもしろいなー。分かった。やってみる。」

大叔母が次に向かった先は中庭だった。
GO(豪)の弟のGE(ゲン)の動きを見るのはじめてだ。

巡回員ブルー:「これから”同調”の複雑化を目指す。この中庭にあるもの。どれかを使って”手懐けて”みろ。例えばこうだ。」

巡回員ブルーの足元にある小石が浮かび上がる。
それは何10個から何100個へと数を増やし、巡回員ブルーの肩ぐらいの高さに浮遊したと思ったら、”GE(ゲン)”に飛びかかった。

咄嗟に”GE(ゲン)”の錆びた剣がそれを弾く。
GE(ゲン)は一歩も引かず、細かく剣を打ち出し楽々と小石を跳ね除けた。
かと思ったら”テレポート”で巡回員ブルーの背後へ回った。
GE(ゲン)が一刀振り切った。 
しかし、それは巡回員ブルーの残像だった。
逆に巡回員ブルーはGE(ゲン)の背後を取り、GE(ゲン)の首筋に刃物まがいのものを押し当てていた。

GE(ゲン):「こんちくしょう。」

GE(ゲン)が腕を振り解いて”それ”を確かめた。
刃物まがいのものは”スプーン”だった。

GE(ゲン)は想像した。
巡回員ブルーは確かに小石を発する前は”スプーン”を持っていなかった。
GE(ゲン)は「ハッ」とした。
巡回員ブルーは小石を発した時から、すでに残像を残してテレポートしていたのだ。

巡回員ブルー:「気づいたか?テレポートは”常に先を読んで”するもの。君のは性格と一緒で行き当たりばったりだ。まぁ。兄も父もそうだけどね。がっつくのを抑えて冷静になりなさい。」

GE(ゲン):「ははーん。そんなに上から目線じゃなくても、こっちだって頭はある。少し考えたらそのぐらい言われなくたってわかるぜぇ。」

大叔母は2人の格闘を見て知った。
巡回員ブルーの力も上達している。
たかがスプーンといっても、そうそう探せるものではない。最初からある場所が分かっているならテレポートも早い。
しかし、巡回員ブルーの場合。”どこにスプーンがあるのかわからない”ところからの”テレポート”だ。おそらくこの屋敷中をくまなく”テレポート”し、ようやく見つけたのが、私、大叔母の部屋だったのだろう。
大叔母はそう考えながら、自分の部屋に戻る。
部屋のお膳にはスプーンが戻って、置いてあった。
こりゃまた。
私が部屋に戻るタイミングをも見計らって”テレポート”で返しにきた。というわけか。
あいつは。。
昔から目立ちたがり屋だったもんな。
性格はなかなか変えられない。
(お膳のご飯をスプーンで食べはじめる。食べながら思案にふける)

その点、あのGE(ゲン)。
あのコには驚かされる。
来てそうそうあの分厚い巨門を真っ二つに切り裂くわ。
ちょっと”同調”を教えただけで、あの巡回員ブルーへ”テレポート”移動を使ってしまうとわ。
あのコは成長がはやい。はやすぎて怖さを感じる。
今歳はいくつだ?
とにかく、あのコからは目が離せない。

そう考えている時、襖が開きひとりの女中が中に入ってきた。

大叔母:「お前は。。いつもご飯の途中に現れる。もう少し味わってご飯を食べたいものじゃ。」

機械秘書:「いつも忙しいのだから、要件はご飯を食べながらで言え。といったのは大叔母ですよ。笑」

大叔母:「そうじゃったかなー。」

機械秘書:「そのお膳を平らげましたらそろそろお願いします。」

大叔母:「ああ。そうじゃった。ひと仕事といこうか。”洗脳オロシ”を。それなら櫓稽古(やぐらけいこ)から”WO(女)”を呼んできてくれ。そろそろ世代交代じゃ。”洗脳オロシ”も見せておかなければならない。
お前とも長ーい付き合いだったのう。
よく我慢して私のわがままに付き合ってくれたな。」

機械秘書:「そんなことはありません。こっちだって喜んで働かせてもらっているだけです。大叔母の近くにいるだけで光栄ですから。」

大叔母:「お前はこれからもよろしくたのむぞ。命は短く儚い。お前はしっかり”機能して”これからの世代の出来事も”インプット”し、”保存”して皆に語りついで行ってくれ。」

機械秘書:「何ですかそれ。まるで最後の挨拶みたいに。大叔母らしくないですよ。」

大叔母:「200歳も目前にするとね色々と想うことが溢れすぎるのよ。溢れすぎて自分のことなんてどうでも良くなる。」

機械秘書:「そんなこと言わないで下さい。大叔母がいるから生きていける者だっているんです。大叔母に育てられ、助けられ、命を与えられる。あなたは、私達の”魂”(SOUL)です。」

大叔母:「うまいこと言うわね。さすがあなたも150年生きているだけあるわ。機械なのにね。もはや人間よりうまいこと言うわ。さすが私の秘書。」

機械秘書:「それでは準備します。」

大叔母:「私がいない間、ここを宜しく頼むぞ。お前は、私のコピー。”アイツラ”がもしここを襲ってきた時は皆んなを護ってやってくれ。」

残る”スズモノ”集めは、あと4人。

”天路の頂”で稽古中の”スズモノ”救世主組はメキメキと力をあげていた。



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