鈴を持つ者たちの音色 第十八話 ”α”-イエロー③
GQ(自給):「その”海モグラ”だけど、ちょっと腑に落ちないところがあるんだ。」
BOO(武):「なんだ?腑に落ちないって?」
GQ(自給):「あのさ。”振動”を感知する。。と言ったよね。それじゃあ、最初に僕が掘った穴。あの穴はおもいっきり僕の鍬で掘り起こす振動で、”海モグラ”にはバレバレじゃない?それなのに”海モグラ”はまんまとその穴にハマった。。あり得なくない?」
BOO(武):「そう言われたら、そうだよね。”海モグラ”は何で、わざわざ罠に引っかかった?避けられるのに。」
GQ(自給):「そう。そーなのよ。」
BOO(武):「それで?どーする?2個目。試してみる?(笑)」
GQ(自給):「せっかく掘ったんだ。当たり前だろうーよ。(笑)」
BOO(武):「大丈夫か?今度は”海モグラ”の作戦にうちら、ハマるかも知れないぞ?」
GQ(自給):「用は試しだっ。試してみるっ!」
BOO(武):「そうか。じゃあ、やってみるか!」
ふたりは一つ目の落とし穴と同じく駆け足の音をわざとたてて、”海モグラ”を誘き寄せ二つ目の落とし穴へと誘導した。
”海モグラ”は一つ目の穴と全く同じく二つ目の落とし穴にも、なんなく落ちた。
そして、これまた一つ目の落とし穴の時と同じように蟻地獄に落ち入った蟻のようにサラサラの砂山をゆっくりと這い上がってくる。砂山を崩しながら。。
GQ(自給):「なんだか、これ…」
BOO(武):「そう。遊んでんじゃね?」
ふたりからしたら、どう見ても、”海モグラ”は遊んでいるようにしか見えなかった。
大きな巨体を揺らしザックザックと砂山を上っては落ち、上っては落ち、を繰り返す。
僕らが高みの見物をしているのも分かっているようだ。
BOO(武):「ちょっと。僕に思いついた作戦がある。いいかな?GQ(自給)悪いが、もう一個落とし穴を掘ってくれないか?お願い。これで最後だからさぁ。」
GQ(自給):「なにぃー。もう一個だとー。まぁ掘れないことは無いけど。人使いが荒いなぁ。ほんとに良い策なんだろうね?」
BOO(武):「僕の運動知識が物語っている。大丈夫だ。」
GQ(自給):「へいへい。そんなに自信があるなら。(ほいならー。掘ってきまーす)」
GQ(自給)はさっきよりも遠目の場所に落とし穴を掘る準備に取りかかった。
BOO(武)は穴の上からジッと、”海モグラ”を観察している。辺りはシンと静かだ。
BOO(武)のお腹が「グゥー」と鳴った。
そのお腹の”音”に”海モグラ”が反応した。
”海モグラ”は振動に反応するが、地上に姿を現した今は、空気が振れる”音”にも、反応する事が分かった。”音”は空気を”振動”させるからだ。
穴から這い上がった”海モグラ”を今度は殴ったりせずBOO(武)はあえて背中を向け、走って逃げた。
BOO(武)は走る走る。
全速力で走っても”海モグラ”は速い。
追いつかれそうな速さで追ってくる。
ふと、BOO(武)は速度を緩めた。今度はゆっくりと走る。
GQ(自給)は遠くから見守る。
GQ(自給):「あんなに遅く走って大丈夫かよ。」
ところが”海モグラ”はBOO(武)が速度を緩めて走ると、その速度を同じように緩めた。
GQ(自給):「あれ?どういうこと?」
GQ(自給)が見ていると、BOO(武)が遊んでいるのがわかった。
BOO(武)が遅く走ると”海モグラ”も遅く走り、速く走ると”海モグラ”も速く走る。
まるで影のようだ。
飼い慣らされたペットのようにBOO(武)へついてくる。
時にBOO(武)は立ち止まった。
すると”海モグラ”も立ち止まった。
振動に従順なのだ。
まるで太鼓を叩くと動く反応人形のようだ。
走る止まるを繰り返しながらGQ(自給)が掘った落とし穴へBOO(武)は誘導し、そして”海モグラ”は三つ目となる落とし穴へまんまとハマった。
事前に打ち合わせをしていた通りGQ(自給)はその三つ目の穴の中に潜み、”海モグラ”を待ち構えていた。
GQ(自給)は”海モグラ”が穴の中へ入ったと同時に、”海モグラ”の髪の毛に掴まった。
BOO(武)も穴の上から飛び降り、”海モグラ”の頭の上へ飛び乗った。
BOO(武)は”海モグラ”の分厚い毛の中を掻き分け、”海モグラ”の耳を探す。そして耳を見つけた。
「看板のある折り返し地点まで行き、そこから”α”-イエロー地帯のスタート地点まで行ってくれ!」と伝える。
”海モグラ”の耳の中へBOO(武)の発生した声の振動がインプットされ、”海モグラ”の脳波へBOO(武)のイメージした場所が映し出される。
”海モグラ”はその通りの場所へ潜り、進んだ。
折り返しの看板を確認する。
看板には「まだ生きていたか異星ヤロウ。異星ヤロウなら、この大地に花でも咲かしてみやがれ」
と描いてあった。
ここ”グランドライン”での歴史も長い。この長い経過した歴史の中でも未だ花も咲いていない。
そうだ。いつかはこの何もない大地に華やかな花でも咲かせて彩りを与えたいものだ。
ふたりは色んな想像を膨らまして、しみじみとその看板を眺めた。
”海モグラ”に乗ったふたりはあっという間に”α”-イエロー地帯スタート地点へ着いた。
あまりの”海モグラ”の激しいスピードにやっとでしがみついていた。
GQ(自給):「なぜ分かったの?」
BOO(武):「生きているものには振動がある。心臓は動き、鼓動する。息を吐き、吸い上げる。辛い時はゼーゼーハーハーと息があがる。
振動を察知する能力がある、ということは人の居場所、生き物の場所を察知できる。ということ。
それは人が危険に晒されている瞬間や、生命が大地に生まれた瞬間をも把握している。ということなんだ。
人の心の一定的なリズム。
不安ならリズムは変わる。
”海モグラ”はおそらく人の心もわかる。そして人が大好きで人懐っこい生き物なんだ。
人を察してどこへでも潜り、追いかける。元々は運命共同体で仲間だったんじゃないかな?とも思える。」
GQ(自給):「こんなビジュアルなら普通の人は直ぐにビビりまくるけどね。」
BOO(武):「怖さと安心は紙一重って言うしね。僕はもし、この”グランドライン”に他の生き物がまだいたとしても大抵の生き物は手懐けられると思うよ。」
GQ(自給):「そうだ。このまま隊長の所まで”海モグラ”に送ってもらおうよ。」
BOO(武):「名案。隊長も巡回員イエローも驚くぞ。」
”海モグラ”の鋼のような毛を掻き分け、耳の中に指令を出す。「本部へ戻る」と。
”海モグラ”は凄まじい勢いで本部へ向かった。
地中に潜り穴の中を移動する為、しっかりと掴まっていないと振り落とされる。
”海モグラ”は”グランドライン”の隅々まで把握しているのだろう。それも誰も踏み入れていない地中の世界を。ワープするように短距離で進む。
これは上手く利用できればタクシーのように”グランドライン”中を行き来できる。
”海モグラ”は1匹ではないはずだ。
”海モグラ”1号に僕らの意思を伝えた。
「これからも僕らを背中に乗せて運んでくれないか?」と。
”海モグラ1号”は2本の牙をカチカチと鳴らした。OKの合図だろう。
”海モグラ”は堅い岩盤を避けて移動する。
その時、急ブレーキがかかる。
堅い岩盤があったらしく”海モグラ”が路線を外れ、僕らはその勢いに負け、振り落とされてしまった。
暗い穴の中。
”海モグラ”は身体が大きい為、穴の大きさも程よく大きく、僕らは穴の中を立ったままの姿勢で移動できた。
BOO(武):「今どの辺なんだろうな?地上に出ないと今いる場所がわからない。」
GQ(自給):「穴の中にも標識が必要だ(笑)」
BOO(武):「灯りをつけましょう。」
ポケットから折り畳んだランタンを取り出して息を吹きかけ膨らました。
人間の吐く二酸化炭素を起点に酸素とプランクトンが反応し、ランタンは直ぐに青白い光を発した。同じく同時にその灯りで穴の中も独特な青白い灯りに包まれた。青は気分が落ち着く。
ランタンの灯りを照らしてふたりは”海モグラ”の堀り進めた方向に向かって歩いた。
歩きながら考えた。
”海モグラ”はどうやってこの地中にいて行き着く目的場所を見定められるのだろう?
穴はうねうねと右へいったり左へいったり不効率性を感じたが、これが本当の1番の近道なのだと知ると不思議な感じがした。これが”海モグラ”しか知らない特別なルートなのだ。
どれだけ歩いただろう。
広い開けた地下通路に行き着いた。
BOO(武):「なんだ?ここ。」
GQ(自給):「何か大きな建物の下?って感じもするなぁ。もう少し奥へ行ってみよう。」
さらに奥へ進むと20畳間ぐらいの広い無機質な穴蔵があった。
BOO(武):「広い穴蔵だなぁ。」
GQ(自給):「なんだろ。独特な雰囲気。誰もいないのに誰かの気配がするような。でもそれは誰かというより異国からの囁きのような。。
気持ちはここにあるのに、ここにない。自分自身を窓の外からみているような。」
BOO(武):「お寺とか、神社があればきっとそんな空気感じゃない?でも。。確かに誰かに見られているような気配は感じる。」
GQ(自給):「真ん中に何かある。」
人ひとり入るぐらいの棺があった。
棺の蓋には8個の穴の窪みがある。
BOO(武):「棺?どう見てもコレ棺だよな?」
GQ(自給):「そうです。どう見てもそうです。なんでこんな場所に?不自然です。どう考えても。」
BOO(武):「‥誰か、この中で眠っているのか?
GQ(自給):「‥眠っているかもしれないし、眠っていないのかも知れない。そして、何が入っているのかも分からない。けれども気になるなぁー。」
BOO(武):「お宝だったりして。。」
GQ(自給):「(ぺろりと舌を舐める仕草をする。)開けよう。」
BOO(武)「(にやり)うん。そうこなくっちゃ。」
ふたりで蓋を開けようと、押したり引いたり、蓋を持ち上げようとしたり色々試したが、全く蓋は動じず、開く気配すらしなかった。
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