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鈴を持つ者たちの音色 第二十九話 ”同調”

夢の中とは違う。
意識はしっかりあって身体の感覚がない。
一瞬でその場所に着くというより、ステージ裏で出待ち5分前の感覚に近い。
幕が「パァーッ」と開いて観客の顔が見えたかな、というぐらいのタイミングで目的地に着いた。
それが、最初のテレポート(瞬間移動)の印象だ。

RI(凛):「着きました。ここは”グランドライン”最高標高地”天路の頂”です。」

WO(女):「最底部から最高地への移動なんて。まるでジェットコースターね。身体がついていけないわ。」

寺院の様な建物の前に瓦屋根の巨大な木製の門がある。高さは4メートルはあろうか。鬼でも出入りするんだろうか。こんなに大きな門がある意味が分からない。周りを見渡す。雲海が広がる。神の領域だ。ここまでどうやって来れるんだろう。まず来る自信がない。

RI(凛)に案内され巨大な門の前で立ち止まる。ふたりは、はじめて見る巨大な建築物に驚いて、口を開けたまま動かない。

ME(男):「なぁ。今、目の前にあるものは全て現実なのか?こんな精巧な建築物は一体誰がどうやってこんな最高地に造ったというの?それにおかしくない?なぜさっきの場所からこんな所へ一瞬で来れる?ありえなくない?」

WO(女):「一瞬かどうかも分からないじゃない。それは何時間かも知れないし、何日かも知れない。ここに着いた時間さえ分からない。」

ME(男):「ここは”グランドライン”かも知れないし”グランドライン”じゃないかも知れない。」

WO(女):「そう。もはや何を信じれば、誰を信じたらいいのか、分からない。」

ME(男):「‥。信じるしかないっしょ。じゃなきゃ前に進めない。あの娘見ただろ?湖面に浮いてたんだぜ。考えられる?この”グランドライン”の世界の中では、あんなのが”有り”なんだ。
という事は、今ここにいるのだって、下から上へ”とんできた”のだってあり得るんじゃない?」

WO(女):「ほっぺつねってみて。(WO(女)は可愛らしく頬をME(男)へ差し出す)」

ME(男):「じゃあお互いセーノでつねり合おう。(ME(男)も可愛げなく頬を差し出す)」

ふたり:「セーノ‥(知らない間にRI(凛)がふたりの間に割り入って、ふたりの頬を力いっぱいつねる)イッターイ!!✖︎2」

RI(凛):「いつまで巨門の前でいちゃついてんのよ。今起こっているのは現実よ。”ゲ、ン、ジ、ツ”信じないなら、もう一回つねって確かめてみる?」

ふたりは口パクで「イヤイヤ」と手を振りジェスチャーだけで答える。

RI(凛):「それでは第一関門。この門を開けろ。」

ふたり:「はぁー??」

ふたり:「ドユコト?」

RI(凛):「‥ほんと。頭がいいヤツってこうだよなぁ‥。”開けろ!”って言ったら開けろよー。パッと、こう。サッと、さぁー。」

ふたり:「‥。」

WO(女):「ねー。なんかあの娘、口悪くない?水龍の前では違ったよね。きっと水龍の前では良い子ちゃんなんだよ。」

ME(男):「うんうん。さっきのつねり、もなんかパワハラギリギリ路線だった。きっと子供だからまだパワハラなんて言葉しらないんだ。きっと‥」

RI(凛):「‥‥。(全て聞こえているぞ。子供だからってバカにして。みてろよ。)」

RI(凛)が巨門の前に立つ。

RI(凛):「あなた達はいちゃつき癖がある様だから、またいちゃつかないうちに”と、く、べ、つ”に、この巨門の開け方を教えよう。よく見ておくように。」

RI(凛):「いいか。力で開けようと思うな。”手懐けるんだ”。生き物を飼うのと一緒。
君らは花や草や樹に話しかけるかい?話しかけるから綺麗に咲くし、天高く伸びる。成長する。君らは物、物体に話かけるかい?それも一緒。
物や物体も”手懐ける”んだ。」

ふたり:(…ポカーン。意味わからん)

RI(凛)は巨門の前を行ったり来たりする。その際下を向き、何やらぶつくさ喋っている。
時には門の方を向き、時には門の上の方を見たりする。手で身振りも加える。そのやり取りも数分で止まった。
RI(凛)は巨門の中央へ。巨門と向き合う。手を後ろに組み大きな声で一喝叫んだ。”∇〓□∇〓”
巨門が誰も触っていないのにゆっくりと意思を持つように開いていく。
RI(凛)は門が開き切らないうちにまた一喝する。”▲〓□▲〓”
今度はゆっくりと意思を持つように門は閉まり元通りになった。

RI(凛):「見ただろ?さぁやれ!」

WO(女):「はぁー⤴︎?」
ME(男):「ことばすくな」

ふたりは見よう見ままにやってみたが動かない。当たり前だ。ふたりは苛立ち、巨門を力で押した。
ダメだ。びくとも数ミリさえ動かない。

何回も何回もやってみた。巨門は数ミリも動かない。どれだけ時間は過ぎたのだろう。ここは”グランドライン。”太陽が昇り沈むの変化が無い。陽の翳りも無い。
時計が無いと全く時間の感覚が無い。
まぁそれが良いところでもあるのだが。
時間に追われる事もなく、歳をとる感覚もうまれない。時間が無限に豊富にあるように思える。

RI(凛):「例えば”海モグラ”だ。君たちはどうやって”海モグラ”と仲良くなった?
そして、WO(女)とME(男)。君らはどうやって仲良くなった?
これは”それ”と同じよ。全く違わない。その感覚を使え。」

ME(男)は巨門を目の前に”海モグラ”を思い出した。”神龍の宮”に置きざりにしてしまった”海モグラ”のことを。
巨門を背の高い巨大な物だと認識するからいけないのだ。大きいからと言って物に対する拒否感が強すぎる。巨大なものは巨大では無い。分厚いものは分厚く無い。重いものは重く無い。そう。万物はプラスマイナス”ZERO”。ZEROの世界なのだ。
目の前の巨門だってそうだ。巨大だが巨大では無い。あるようで無い。全ては”ZERO値”。。
目の前の巨門は”なんとなく”有るような無いような。そう。無いかも知れない。
巨門に囁き、教えてやる。
そう。ここには何も無いよ。何も無いから、”キミ”も門と言われているが、門では無い。門の様で有るけど違うものかも知れない。
門も戸惑ったろう。
暗示?とも違う。
未来への力?それも違う。
門は今、開くべきして”開く”のだ。

ME(男):「□〓□〓◎‥」
WO(女):「□〓□〓◎‥」

「ギギギィー。ギシギシ。ゴゴゴー、ン」

ME(男):「あ。あいた。」

WO(女):「ふーん。」

RI(凛):「んー。まぁ。こんなもんかー。言っておく。これは”すごい!”とは違う。普通のこと。だからね。覚えておいて。”もの”はしつけ。手懐けるんだ。それを私たちは”同調”と言う。」

RI(凛):「これはまだ基本前の基本だ。”同調”を極めると人を手懐けられるようになる。おっと、”手懐ける”とは言葉が優しすぎた。”操れる”と言った方が言葉が強いな。あと、さっき私がやったように空間移動もできるようになる。それも独りでの空間移動より高度な、多人数を連れての空間移動だ。」

RI(凛):「この世界のあらゆるものは”同調”が可能だ。しかしそれは相手方の気持ちになってはじめて出来るようになる。相手方の気持ちを自分自身がそうなった様に一体化しなきゃならない。
心に入り込むのだ。
それが水龍レベルになると、一体化を通り過ぎ、自ら体験した”もの”を具体的に”神龍の宮”の砦の様に、自体を創り上げることができる。樹木や草花や滝を。」

WO(女):「”自ら体験したもの”しか創れない‥」

ME(男):「僕らは地上での生活を知らない。樹木や草花を創ることはできない。」

RI(凛):「そういうこと。あとまだある。」

RI(凛):「逆。そうだ。逆の話もしておかないといけない。気をつけろー。”同調”は逆もある。
それは”同調”されること。
”同調”する能力レベルがまだ低いと相手方に呑まれることがある。
①相手方の”同調力”が自分より強い時
②自然災害の様に人の力じゃどうしようもならないもの。そういうものと”同調”しようとすれば逆に呑まれる
③”同調”を鏡の様に跳ね返す者もいる。そういった場合、”同調”したい対象物が変わる時がある。

以上三点が、”同調”の逆。”逆同調”の話だ。」

WO(女):「よく話す娘ねぇー。感心するわ。」

ME(男):「”同調”かぁ。もし、そんなのができたら怖い者知らずだなぁ。すごい世界だ。」

WO(女):「人を操れる?と言ってたよね。もしかして”アイツラ”が使う能力。それも”同調”じゃない?人に”同調”を使い、操り、ここ”グランドライン”をつぶそうとしている。」

ME(男):「もし、”アイツラ”がその”同調”能力を持っていたとしたら、”同調”対決になるのかぁ。
まぁ、その時は”アイツラ”に”逆同調”されない様に気をつけないと。、」

RI(凛):「うむ。良い想像力だ。今のうちにうんと、色んな想像力をふくらましていけ。お前たちにとって、それがレベルアップにつながる。」

巨門をくぐる。
第一関門到着。
門を開けたら閉める。
再度、閉めるのにも挑戦した。



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