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鈴を持つ者たちの音色  第八話 ”α”-ゴールド③

第三滑降隊が次の攻撃体制に入っていたが、一羽のひと回り大きな海鳥が、それを制止しこちらへとやってきた。
その大海鳥は僕らの頭の上辺りに降り立った。重力に逆らうように壁(岩)へ直立している。爪のどこを引っかければそんな直立ができるのか、不思議でならなかった。
もし僕らが同じ体勢を取ろうともクライミングでいう「鯉のぼり」のように壁横に旗を靡かせる格好になる。。
大海鳥は岩場に嘴を擦り付け、その嘴をギラリと光を反射させ、尖らせ、嘴を強調させた。
「脅している」
嘴は珍しい鋼色をしていた。
いや、もしかしたらそれは鋼の嘴だったのかも知れない。そんなのを食らったらさっきの岩の穴レベルじゃ済まない。GA(我)は第一滑降隊のあけた岩の穴を視線で見返して想像した。

GA(我):「やぁ。君がボスかい?話をしよう。さっきも言ったように僕らは、ただ無事に頂上まで行ければそれでいいんだ。それだけなんだ。君らには何の害もない。無駄な争いはしたくない。むしろ、こっちは最初から何もしてないじゃないか。なぜ攻撃をしてくる?」

大海鳥:「君たちこそわからないのか?何も知らないのか?何でこんな最北の場所まで来て、あそこの頂上を目指す?誰に言われた?」

GA(我):「僕らは”グランドライン”での20歳の儀式でこの場所へ来た。明日の10時までにここを登り切って戻らないと20歳のままになってしまう。僕たちにはここを登りきる使命がある。」

大海鳥:「‥なぜここなんだ?君たちのその儀式なら人間以外の生き物の間でも有名な話だ。この場所を選ぶなんておかしい。この場所は人が立ち入ってはいけない場所。御法度なんだ。神聖度レベル☆☆☆だぞ!巡回場所とは大違いだ。
この壁(岩)にさえ手を触れるだけで無礼なんだ。それを登る、なんて!」

GA(我):「それは本当の話ですか?ほんとならどういうことなんだ?僕たちは巡回員ゴールドにここへ連れられてきた。彼の方がこの場所には詳しいはず。それなのに彼はここを選択した。」

WA(輪):「ねぇねぇ‥まさか、、あんた。。鳥と会話??してるんじゃないでしょうねぇ‥。まさかよねぇ?」

大海鳥:「ゴールド?もしかして、あいつか?(大海鳥は壁下の方を見やり嘴で指す)ずっと上から見てたけど、何やら壁下の方でパヤパヤ忙しなく動いていたな。怪しいやつだ。」

GA(我):「まだ、下にいるんですか?先に本部へ戻ると言ってたんですが。何してるのでしょう?あなたの話を信じるとすると、、どうやら僕たちは巡回員ゴールドの企みか、何かに利用されてるっぽいですね。なぜ、そんな事をするのか?理由はわからないですけど。」

WA(輪):「ねーねー。もしかして、本当に鳥の言葉がわかるのーぉ?ねーねー、まさかよねーぇ。」

GA(我):「そういえば、あなたがさっき言っていた神聖度レベルって何ですか?」

大海鳥:「君たちがこの”グランドライン”と名付けた場所。この海底都市は以前、君たちが来るまでは鳥獣らの砦だった。これだけ大きな海底都市だ。様々な場所から皆んな憧れのようにここを目指してきた。そしてそれは君たちだけじゃなく、もっともっと色んな獣をも呼びつけてしまったんだよ。そして、それだけの獣たちが集まるという事は、争いも起こる。数々の争いの場、闘いの場、が今あるこの”神聖なる場所”であり、心に誇りを持って闘った勇者の地であったのです。私たちは勇敢に散っていった獣たちに誠意をこめて、それぞれの場所に☆番号を付けた。☆番号は☆〜☆☆☆☆☆まである。この世界から忘れないように。そして、この”神聖なる場所”には過去の大獣が、そのままの姿で閉じ込められている場所もあるのだ。」

GA(我):「ここもその神聖なる場所のひとつ。。」

大海鳥:「そうだ。だから、我々はここを護る為なら命をも惜しまないっ。」

GA(我):「もしや、、この場所にも何か、出してはいけない大獣が眠っているのか?分かったぞ?大獣を出さないようにする防衛軍なんだな?君たちは?そして神聖度は=(イコール)危険度を値する。」

GA(我)はWA(輪)に一通りの説明をした。
ここが本当の”α”地帯では無かったこと。
巡回員ゴールドがなぜか僕らをここへ連れてきたこと。そして壁下で何やら不穏な動きをしている事。そして、GA(我)が人間以外の生き物と喋れる事。このみっつを伝えると、真っ先にWA(輪)は鳥と話せること自体あり得ない。とGA(我)の言うことを信じなかった。

WA(輪):「色んな話をまとめても、なんだかしっくりこないのよ。」

GA(我):「何がですか?」

WA(輪):「この壁よー。なんだか気持ちが乗っかっちゃったのか、登らないと気が済まないのよー。たとえ巡回”α”地帯じゃなくなったとしても、このまま、あーそうでしたか、よかったぁ。なんて。引き下がれないわよ。かえって気が立ってしまった。頂上見るまで帰らないわよ!」

GA(我):「(笑)私も同じこと考えてました。一度挑戦した決意は簡単には揺るぎません。どーしても頂上に行きたい。行かなきゃ何かモヤモヤしたのが晴れない。」

WA(輪):「頂上目指して登りましょう!頂上の景色がみたいっ。」

GA(我):「大海鳥さん。どうでしょう。ひとつ頂上まで登らせてもらえんでしょうか?わるいことはいたしません。頂上に登るだけですから。いちクライマーとして。」

大海鳥:「‥お前は争いを好まないようだな。その意思は時には危険を伴うぞ。力と力のぶつかり合いには”死”が代償となる時もある。人を救う前に先ずお前自身。自分を救え。命はひとつ。ここは神聖なる頂。何が起こるかは君たち次第だ。もし、滑落しようとも、我ら以外の何者かに襲われようとも、我らは知らんぷりぞよ。それを忘れるな!」

GA(我):「わかりました。ありがとう。自己責任で登らせていただきます。」

大海鳥は嘴をギラリと光らせて飛び去った。
その雄々と飛び去る姿を見てGA(我)はもう大海鳥とは会うことは無いだろうな。と感慨深い心情が湧いた。こうして神聖な場所に偶然きたから会えた貴重な獣だった。

ふたりは頂上目指し、ふたたび登りはじめた。
きつい。
きつい。
きつい。。ようやく壁(岩)半分くらい来ただろう、と思う。
距離は、ゴールは、まだよくわからない。

WA(輪):「なんだかさぁ。さっきの話を聞いてから、この壁をひと動作、ひと動作、登っていくと、なんとも言えない高揚感に包まれるの。歴史のある神聖な頂を汗とばして登っていく。こんな経験は人生に一度あるか、ないかよ。見てこの素晴らしい光景。まるで鳥になった気分よ。
なんて素晴らしい日なの!」

GA(我):「そうだね!こうして生死と向き合って登っていると、人間であることを忘れそうになるよ。さっきの鳥たちはここからの景色を普通に見れるし、このゴツゴツした岩も一体何年ぶりに人の手に触れたのだろう?
僕らの汗は壁(岩)下に落ちることはあるのだろうか?下まで落ちあたるまでに蒸発はしや、しないだろうか?
この壁と触れ合うことが神々しい。
昔話にあった早朝に昇る”太陽の力”。
夕陽に照らされる空腹時の虹。
冷たい風に襟を正して歩く行為。そのひとつひとつがこういった感覚なのだろうか?
もし、そうならそれは僕たちは経験をすることがない感覚だ。」

ああ惹き寄せられる。
この岩に。歴史を積んだ鉱石にっ。

素人がこの壁(岩)を登り切った事実。
それは計り知れない人間の持つ原動力だ。
どこからその力は湧いてきたのか?
そんな力はどこにあったのか?
登り切った当人もわからないらしい。
そして何かを悟ったようだ。
顔がちがう。まるで別人のようだ。
そう。
これが大人になるということ。

頂上に登り着いて不思議に思ったこと。
それはどこにも鳥の休む場所がなかった、ということだ。
いったいあれだけの数の鳥はどこから来たのだろう?
頂上の中心に、四面を白い鳥居で囲まれた一角がある。その他には何もない。
その鳥居の中に何かある。

扉だ。
はじめて見たその素材は、ピラミッドの様な石っぽい素材だった。
扉の模様は幾何学的模様で近代的に思えた。

WA(輪):「わぁ。これすごい。よくできてる。ねーねー。開けていい?こういうの見ると、すぐに開けたくなるタチなのよ。」

GA(我):「ここまできたら開けるしかないですよねぇ。」

GA(我)が扉に手をかける。ギギギギギィーと石と石とが擦れ合う音がする。
と、少し扉が開いたその瞬間、
バサバサーッ、バサバサーッ、と数百羽の黒い海鳥が一斉に飛び出してきた。
目の前が黒い陰に覆われる。
そして海鳥が全て出きった時に、「パンッッ!」
と手を叩く合図のような音がした。
ハッと気付くと扉をしゃがんだ姿勢で下から上へ開ける動作をしていたのに、何故か今はそのまま仁王立ちで扉を手前からそのまま引く、開けやすい動作に変わっていた。

WA(輪):「??あれっ?反転した。」

GA(我):「??いったいこれはどうなってる?これは現実?それともどこか違う世界に飛ばされた?」

WA(輪):「このまま扉のむこうへ行っても大丈夫かな?ここからは次元が違うかも‥」

WA(輪)は一瞬悩んだ顔をしたが、すぐに息を吹き返した様にはしゃぐ。

WA(輪):「ねーねー。おっもしろそー。いこうよいこうよ。」

GA(我):「ほんと好奇心旺盛ですよねー。そのノリ。ほんと羨ましいよ。わかりましたから。何があっても知りませんからね!」

ふたりは扉をくぐり、中へと進んだ。
入ってすぐ、眩しい光の中で全く何も見えない。
サングラスをかけ直しゆっくり進む。
何も無い。進む。
それでも何も無い。。
いや、ちょっと待てよ。。

GA(我):「やっぱりサングラスを外すんだ。この壁(岩)の中の光には何かある。目というのは光を通さないと見えない仕組みだろう?眩しくても目を凝らして見てみよう。、」


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