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鈴を持つ者たちの音色  第六話 ”α”-ブルー④

巡回員ブルー:「僕らも同じようにはならないのかい?」

GO(豪):「それはわからない。なるかも知れないし、ならないかも知れない。ならない場合を考えると危険だ。出口を見つけよう。」

KNOCK:「残念ながら出口は見つからないよ。」

ゲイン:「なぜわかるの?」

KNOCK:「君たちがここへ来た時に、どうやってここへ来たのか不思議で、この部屋の中をくまなく探したんだよ。しかし、どこにも君たちが来た形跡は見つからなかった。」

GO(豪):「くまなく探した?こんな巨大な野球場よりも広い部屋をどうやって探したんだ?」

KNOCK:「3日もあれば、こんな無機質な部屋の中です。簡単に確認できます。」

GO(豪):「3日??もしかして僕たちは3日間もあの樹木の下で寝ていたの?」

KNOCK:「そうです。もし、高酸素の話が本当なら、あなた達も僕と同じですね。身体が高酸素に侵されても、この場所に居る限り”時間は進まない”よって、高酸素の症状が出ても元に戻るってことですね。」

ゲイン:「どうしよう。どうやってここから出るの?」

GO(豪):「‥さっきと同じ要領で砂を掘ってみよう。また扉があるかもしれない。」

ゲインも巡回員ブルーも下を向く。
ゲインはボソリと、「またかよー」と呟く。

巡回員ブルー:「スコップとバケツはさっきの場所に置いてきた。戻らなきゃ持って来れない。」

GO(豪):「巡回員さん。また、人を動かせますか?先ほどの場所からこちらにスコップとバケツを持ってきてもらいましょう。」

巡回員ブルー:「わかった。待ってろ。今連絡するから。。(巡回員ブルーは携帯電話で本部へ連絡する)
ダメだ。電話も無線も、この部屋の中からじゃ電波は通じないみたいだ。」

一同:「…」

GO(豪):「こまりましたね。。それでも掘る。掘るしかないっ。」

一同:「ええー。掘る?どうやって掘るのさ?」

GO(豪):「KNOCKがひとり分多くなったんだ。掘ろうと思えば、掘れるっ。そう信じて。扉はおそらく砂の中です。」

巡回員ブルー:「スコップやバケツは必要でしょー。」

GO(豪):「バケツは上着を脱いで代用しましょう。スコップは‥これしか、無いかぁ‥。」

GO(豪)はブーツを脱ぐ。

GO(豪):「見て。これを使おう。靴だ。靴をスコップ代わりに使おう(笑)。ね?スプーンよりはマシ。それに時間は止まっているんだ。急ぐ事はない。一日中かかっても2日かかっても、1週間かかってもいい。ゆっくりやって行こうではないか。」

ゲイン:「まるでバツゲームね。靴で砂を掬って、底を目指す。‥計り知れないわぁ。」

巡回員ブルー:「あぁ。過去を忘れたい。これでダウン寸前の2ラウンド目よー!」

ゲイン:「1ラウンド目よりタチが悪いわぁ。道具が無いって、裸でショッピングするようなもんよ。」

そして、
4人がかりで底が出たのは、丸3日目の午後だった。
途中睡眠をとって、ハッと目を覚ましても掘った穴は、時間の巻き戻しのイタズラには対象外だった。ホッとした。

KNOCK:「以外と早かったですねぇ。何だか終わるとなると、穴掘りも寂しいものですねぇ。」

巡回員ブルー:「マジで言ってる?俺はもう2度とやらねぇーぞ。」

ゲイン:「コレ、既に2度目。」

GO(豪):「なんだか、巡回、というより穴掘りに来てるみたいですよね。」

ゲイン:「好奇心と労働は紙一重ね。」

GO(豪):「さてと、やはり扉がありましたね!開ける前にやる事があります。」

巡回員ブルー:「今度はなんだよ。」

GO(豪):「この扉を開けることが無いように。この部屋には再度戻ってこないように。この部屋を爆破します。

一同:「爆破ー??!!」

ゲイン:「なぜ?そこまでする必要ある?」

GO(豪):「あります。この部屋は〝グランドライン”にあってはならない。危険すぎる!」

KNOCK:「…賛成です。この部屋は使い道によっては永遠の刑務所。それも地獄より酷い環境だ。あなた達がもし、こなかったら僕は永遠にこの場所に居続けることになっていたでしょう。」

GO(豪):「巨木さん。。いままでKNOCKを木陰で守ってくれてありがとうございました。
巨木さんも今度は皆んなで陸に住めるようになったら、もっと青々と幹を、葉を高く大きく茂らせて太陽の陽を沢山浴びて悠々とお過ごしください。いつかは陸で!」

一同:「いつから陸で!」

巡回員ブルー:「爆破と言ったがどうやったら爆破するつもり?」

GO(豪):「こうやるのです。皆んな!砂を、めいいっぱい上空に投げて埃をたててもらえますか?あと、ゲイン。そのウール素材の上着を脱いでもらえる?」

ゲイン:「ええー!!お気に入りなのに!どうしても必要?」

GO(豪):「じやあ、切れっぱしでいいや。少しちぎってくれる?」

ゲイン:「じゃあ。はいっ。」
ゲインはウール素材の上着の裾を少しちぎってGO(豪)に渡した。

GO(豪):「皆は扉の中へ!僕は最後に通過します。」

埃が舞う空中にウールの切れっ端を投げ入れ、そのウールにGO(豪)は剣で斬りつけ、その静電気の摩擦でウールに火が着いた。そのタイミングで、
「ドッ!カッーン!!!」
部屋は簡単に吹き飛んだ。
高酸素の部屋である。粉塵爆発。
高酸素濃度が高いと火が着けば爆発する。
その部屋が密閉されていればいるほど爆発はしやすい。

僕らが逃げ入った扉の中の部屋にも音と振動が伝わってくる。
「ド ド ド ド ド…、ドッ!カーン‥ドカーン‥」「ドカーン ドカーン ド ド ド…」
「ドッカーン ドッカーン…ドッカーン!!!」

なんと連結していた。
いくつもの同じような部屋があった。
次々と連鎖するように建物(部屋)は壊れてゆく。GO(豪)が風の音がする。と言ったのはこういう事だったのだ。
ひとつの部屋はいくつもの部屋と繋がっていた。
それは大腸ポリープのようにいつしか、何個も”グランドライン〝の明かりの届かない場所で侵食してきていたのだろう。
あんな部屋がいくつもあったと思うとゾッとした。おそらく破壊しないと、幾つも幾つも死ぬまで砂を掻き出す作業を強いられていたのかも知れなかった。

爆発した影響で高酸素の箱(部屋)はいくつもの高酸素を海中へ(屋外部屋)吐き出した。
その酸素はゆっくりとゆっくりと大きな海中へと浸透してゆく。
浸透し、行く行く海面へと、その酸素を届かせるだろう。
それは海中の生態を変えるきっかけにもなり得る。もしかすると、地上への影響をも誘発すること可能性もある。
今日はまだ、その序章に過ぎないが、未来への可能性への第一歩を踏み出した。
これだけの量の酸素が海中に吐き出されたら、海中のプランクトンも酸素の影響で何百倍にも増える。大きな一歩だ。

時間を止める部屋をいくつも破壊した。
僕らが逃げ込んだ扉の部屋を出た。
そこは見慣れた場所。元来た洞窟の中だった。
壁には方眼線が描いてある。

巡回員ブルー:「あれ?この場所知ってる。ゲイン見てみな。」

ゲイン:「ほんとだ。私たち戻ってきたのね。」

壁四方に描かれた方眼線。そして渦の箇所をマーキングして塗りつぶされた1✖︎1のマス目。

GO(豪):「戻ってきたね。」

ゲイン:「KNOCKも一緒に。」

”α”ブルーチームは実際1週間ぐらいのタスクだったが、「時の戻る部屋」に、ほぼ居たので実際はスタート地点に戻った時間は午前9時だった。
ミッションクリアである。
隊長が彼らが到着するのを確認して青旗を振って祝福した。
巡回員ブルーが隊長に今回の一通りの出来事を伝える。

隊長:「GO(豪)くん。さすがだね!無事に時間通りに任務を達成した。それにまさかのKNOCK君まで連れてくるとは。
他の皆んなも、よくやってくれた。
君たち皆んなにこれをやろう。

青い鈴。
透き通ったブルー。
GO(豪)とゲインとKNOCKはそれぞれ青いBELLを首にぶら下げた。

隊長が、それを見ていた巡回員ブルーを呼ぶ。

隊長:「君たちが破壊した数々の部屋は”グランドライン〝のどの部分なのか?はまだ調査中だ。
しかし、かなりの高酸素が放出されたのは明確だ。高酸素はプランクトンや海藻を活性化させる。これから日々高機能潜水艇を用いてサンプル採りと経過観察をする。
これはもしかすると、もしかするかも知れない。
我々人類の将来に明るい希望をもたらすかも知れない。よくやった。ありがとう!」

巡回員ブルー:「イエッサー!(隊長に敬礼。そして振り向き、強き若者達にも敬礼を証した)」


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