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鈴を持つ者たちの音色 第四話 ”α”-ブルー②

ゲイン:「ねぇー!!助けなくていいのー??」

GO(豪)は右手でいらない、いらない、と手を振るジェスチャーをする。耳栓をしているのに聞こえたのだろうか?そして随分と落ち着いている。

GO(豪)は頭だけを出し、そしてゲインの方を見たまま、最後は目を閉じて、そのまま渦の中へ埋もれてしまった。。
ズブズブと姿は見えなくなってしまった。

巡回員ブルー:「あちゃー。これからどうなるんだ??」

ゲイン:「ん分からない。けど、彼にはきっと確信した何か、があるのよ。じゃなきゃ、こんなこと、するわけないっ。」

何分たったのだろう。
ゲインは時計の時間を測っていた。

巡回員ブルー:「今吸い込まれた場所、一応方眼線にも記録したよ。

ゲイン:「ああ。それはもういいかも。結局は渦のたつ場所は重さのかかる地点だというのが、分かったから。」

巡回員ブルー:「でもよ。吸い込まれた、っていうことは、どこかから出てくるってことだろ?もし、出てこなかったら方眼線のマークした位置を掘り出すことになる。その為にも方眼線の位置は必要だろ。」

ゲイン:「そうね。でも彼のあの目。あの目はきっと大丈夫。彼は無事に現れる。」

10分経つかたたないかぐらいで彼は砂の中から出てきた。頭から出てくると思いきや、足から吸い込まれ、足から出てきた。
じんわりじんわりと出てきた。
吸い込まれた場所から少し離れた辺りから出てきた。何事もなかったように言う。

GO(豪):「ほらね。大丈夫だったでしょ?おかしいと思ったんです。大量の砂が渦の中に流れ込んでいるのに、なぜ?この部屋の砂は一定量をキープ出来ているのかなっ?って。
やはり、こうして砂は循環されていた。流れ込み、そして同じ場所へ戻ってきていた。」

巡回員ブルー:「なるほど。でもさぁ、何も君が身を挺してやること?もっとさぁ、ぬいぐるみとかさぁ、自分が履いている靴とか使えば良かったじゃんっ。何も生身の人間で実験しなくてもいいじゃないかぁ。心配したぞー。」

GO(豪):「すいません。心配させて。ブルーさんの言うことは分かります。けど、僕は僕で砂の中を確認したかったのです。
この砂の中には何か、ある。」

巡回員ブルー:「何か?って何があるのさぁ。」

GO(豪):「さっき潜った感じだと、まだわかりませんが、きっと何かありますよ!この砂の一定量。なぜ?一定量の砂を循環させる必要があるのか?それは、砂で何かを隠したいからだと思うのです。それにさっき潜った感じだとやはり…何かがある。」

ゲイン:「どうやったら、その、”何か”を見つけられる?もう一回潜る?」

GO(豪):「いや、もう一回潜っても同じことです。どうしようかなぁ。」

巡回員ブルー:「あのーう、興味本位で聞くんですが、さっきのあの渦の中って、酸素はあるの?約10分も砂の中から出てこなかったからさ。
人間って息を止められるのは強い人でも1分あるなしだよ。死んでてもおかしく無い。君のさっきの10分っていったい、どんな10分だっんだ?」

GO(豪):「えっ??10分??」

ゲイン:「そうよ。私がきっちり時計で測っていたわ。正確には10分10秒。」

GO(豪):「おかしいなぁ。僕は顔まで埋もれたと思っていたら、すぐに足元から元の場所へ出された感じだったけどなぁ。そう、僕の感覚だと3分もない。そして砂の中でも息は全然できる。砂も鼻から入るわけでもなく、ブーツにさえ入ってこない。これは、もしかしたら、、。」

ゲイン:「砂は幻覚?」

GO(豪):「そう。幻。まさにトリック。」

巡回員ブルー:「おいおい、お前ら何言ってるの?この目の前の砂はまさしく、どう見たって砂でしょーよ。(ブルーが砂を掬ってみせる)ん?砂ってこんなに軽かったっけ?」

巡回員ブルーは手で何回も砂を掬っては戻し、を繰り返す。

巡回員ブルー:「見てみろよ。(砂を手のひらで掬ってそのまま自分の息で砂を吹き飛ばす)ほらぁ。おかしいでしょ?簡単に吹き飛ぶ。
砂は重いから息で吹き飛ぶこと無いのにぃ。」

GO(豪):「砂ではない。というと、これは何なんだ?」

ゲイン:「これは砂よ!どう見ても。ただ、砂は砂でも”何か”違う。なんだか砂らしく無い”何か”。砂らしくある゛何か”を抜かれた感じ。そして今あるのは、濾過されたあとのような、抜け殻のような、そんな最終形のような、〝砂″。

GO(豪):「そうだよね。これは砂だ。君の言っていることは何となく分かる。ここの洞窟には、まだ入って間もない。おそらく、この先、色々と僕らが遭遇するもの、そのひとつひとつ前に進めば、そこで初めて、この砂の正体もわかる気がする。」

GO(豪):「これが砂なら、砂らしく扱えばいい。ブルーさん。頼みがあります。本部へ連絡してスコップとバケツとベニヤ板を数枚ここへ届けてもらえませんか?」

巡回員ブルー:「ラジャー。まかせろ。」

30分後にスコップとバケツが3つずつ、ベニヤ板が5枚運ばれてきた。GO(豪)とゲインと巡回員ブルーはその間、これから行う労働の打ち合わせをしていた。これから慣れない重労働がはじまるのだ。

まず砂の上を歩き、渦を呼ぶ。
渦が巻いてきたらその場所をベニヤ板でふさぐ。
これで渦は砂を吸い込めない。
あとはひたすらスコップとバケツで砂を土場へ荷繰り移すのだ。
ただ砂地全体を掻き出すのは無理だ。
一部分だけを掘り進め、掻き出し、底部を掘り当てたいのだ。
GO(豪)が言うには底部に何があるかを、見定められたら”何か”がひとつ確信するらしかった。
やるしかない。ここは”α″地帯。何がおこるかは誰も予想がつかない。
掘っては砂山が崩れ、掬っては砂山が崩れた。
あまりにも深く掘れば掘るほど砂山が崩れるので、べニヤ板で四方を取り囲んだ。砂山はベニヤ板で堰き止められ崩れなくなった。
これで砂山は崩れてこない。
砂であろう砂は比重1.7が通常であろう。
しかし、ここの砂はそのおよそ半分くらいの比重0.8もしくは、それ以下だった。
その為作業は思いのほか捗った。

3メートルも掘っただろうか。
大きな穴ができた。
良く3人でここまで掘ったものだ。
いや、途中で予定外のベニヤ板の補充があった。
その時ベニヤ板を配達してもらったドライバーも来たついでに穴掘りを手伝ってもらった。そのおかげもある。
こんな突然の配達や作業の増員など出来るのも、僕ら巡回員がいるチームの独自のメリットだった。他のチームなら、たった2人だけだ。こうも行かないだろう。
使えるものは使う。これはズルでも何でもないのだ。

ようやく底らしき部分にたどり着いた。
音はコツコツとだいぶ硬いようだ。
釘を打てる壁を確かめるように短間隔で音を確かめていく。もう、スコップでの掻き出しは勘弁だ。このあたりでなんとか”何か”の確証を得たい。
「ゴツリ。。」
独特な鈍い音がした。
再度叩いてみる。
「ゴツリ。ゴゴン。。」
「コンコン」から「ゴゴン」に音が変わった。これは”何か”ある。。

GO(豪)は他のふたりにも底部を叩かせた。。

GO(豪):「どう?」

ゲイン:「うん。”何か”ある。」

巡回員ブルー:「”何”?だろう。」

音が鳴る辺りの砂を綺麗に取り除くと、入り口の蓋のようなものが出てきた。
入り口は人がひとり入れるぐらいの大きさで、よく見ると扉らしきものが付いていて、そのまわりは幾何学模様をしていた。

巡回員ブルー:「驚いた!どう見てもこれ、入り口だよね。」

ゲイン:「扉まで付いている。」

GO(豪):「すごい。でも、分からない。なぜ、ここまでして隠す必要がある?」

GO(豪):「ゲイン。ずっと聞きづらくて聞けなかったのだけど、KNOCKはいつ消えたの?」

ゲイン:「それが分からないの。ここにきて同じように渦と格闘していたわ。それからしばらくして、いなくなった。」

GO(豪):「いなくなった?この場所でいなくなるっていうなら、渦の中?そこしか考えられないけど、渦の中に埋もれたとしても、こうして僕のように湧き上がってくるはず。もしかして、まだ他に何かトリックがあるのか?ここ。」

GO(豪)は扉に耳をつける。

GO(豪):「風?風だ。風の音がきこえる。」

GO(豪)は何の素材で出来ているのか分からない、その、分厚い扉を開けた。
「ギギギー、ィ」
しぶくはないが、かなり分厚い扉だ。
そして分厚いが、重くはない。
それにしても不思議な素材だ。
鉄でもなく、銅でも、石でもない。地球上では見たことない物質だ。

GO(豪)は扉を開けることに集中していて、気付かなかったがGO(豪)が扉を開けると同時に空間が反転したようだ。
GO(豪)は真下から真上へと扉を開けた。入り口は真下にあった。が、しかし、
それがなぜ?いつの間にか正面から手前へと扉を開けている。入り口は直立した姿勢で手前へ開ける。

GO(豪):「あれっ?しゃがんでいたのにな。」

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あんなに砂だらけだったのに砂がない。
砂は消えた。

GO(豪):「砂がない。でもここは、さっきと同じ場所なのは確かだ。」

3人は不思議そうに呆然とした。

巡回員ブルー:「とうなっているんだ?」

ゲイン:「もしかしたら、ここは次元が違うのかもしれない。全くの未知なる場所よ。」

GO(豪):「よし。入るよ。」

ふたりも頷き扉の中へと入る。

眩しい光の中を進む
一歩ずつ進む足の感触はまたしても、砂の感触だ。
ザッザッザッ、と足音だけの音がする。
まわりは眩しさでまだ把握できない。

3人はそこで意識が飛んだ。

一瞬の風が強く吹いて、3人は気がついた。
目を覚ますと目の前に一本の大きな樹木が大きな葉を繁々とつけ、僕らに木陰を作ってくれていた。葉は一枚一枚がテニスラケットぐらいに大きい。よって樹木もその葉に比例するぐらい太い樹木だ。
「気がつきましたか。ここへ入るときは光、に注意して下さい。ここの光は、今の陸の光に近い状態です。浴び続けると命に関わるのです。」



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