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鈴を持つ者たちの音色 第三話 ”α”-ブルー①

”α”-ブルー地帯には歩いて約1時間で着いた。
”グランドライン”の西側は”グランドライン”の中でも一番陽が陰る暗い一角で、人が寄りつかない”デッドライン”と呼ばれる方角だった。
”グランドライン”の全体像は三角錐で頂点がとんがっている。しかし、この西側だけは尾根が低く西側に広がっていた。光が隠れる部分が全体の10%を占めている。そして、「ツーホール」の殆どはこの西側にかたまっている。
いわば今回の”α”地帯もこの西側が1番危険だと言えるのだ。
”グランドライン”の本部からここまで3人は殆ど無口で歩いてきた。それだけこの場所は危険なのだ。無口は3人の不安な気持ちの表れだった。

巡回員ブルー:「よし。着いた。ここからはいくらでも荷物を軽くしたほうがいい。身体が一歩遅く動いただけで命取りになるからな。」

ゲイン:「24時間だけ、凌げばいいので飲料と軽食と武器だけにします。」

GO(豪):「そうですね。同感です。それと、僕はエイドキットも一応持っていきます。おそらく寝る時間は無いと思っていいでしょう。寝袋は置いていきます。」

巡回員ブルー:「この大きな平な岩の上に持って行かない物を置いていきましょう。戻ってきた時にわかるように。」

大きな平な岩からまた、1時間歩いた。辺りは真っ暗だ。ランタンは必須アイテムだ。重宝する。
ゲインが反応する。

ゲイン:「あっ。そう。ここよっ。」

天井はどんどん西側へ移動すればするほど、低くなり足元の砂はどんどん深くサラサラになっていった。中腰の体勢がキツかったが、思いがけず急に広くひらけた場所に行き着いた。
部屋のサイズを歩数で測りメモ帳に書き留めた。
奥のランタンの光が全く当たらない壁までは50Mあった。
万遍なくランタンの光を当て、その部屋の中の様子を確かめる。

GO(豪):「不思議だ。いつの間に洞窟の中に入ったのだろう?入り口という入り口は無かった。気がついたらここへ来た。というか、この場所へ自然と誘導された?」

ゲイン:「そうね。去年もそうだった。誘い込まれるように、気がついたらこの部屋にいた。」

巡回員ブルー:「ここは異次元空間?」

GO(豪):「いや。異次元では無さそうです。腕時計の時間も正常な秒数で針は進んでいるし、僕が持つ剣の光の反射具合もクリアです。こうやって剣で大気を切りつけると分かります。空気を切りつける音には違和感が無い。よって大丈夫です。ここは現実です。」

ゲイン:「足元に気をつけて。穴に誘い込まれると、どこかへ連れて行かれます。」

GO(豪):「えっ?穴?どこか?って、、えっ、うん??」

ソ、ソ、ソ、ソーっと、音がすると思ったらGO(豪)の左足元の砂が渦を巻いていた。そして、その渦は渦の中に、GO(豪)の左足を吸い込もうとしている。
GO(豪)が「エイヤー!」と剣をその穴の中に突き刺した。しかし、何の感触もない。剣先を中心としたそのまわりの砂がその渦穴の中に吸い込まれていくだけだ。
どんどん砂は勢いよく、その穴の中に流れ込んでいく。まるで川の濁流だ。

ゲインが腰からブーメランをとりだす。
ブーメランをその穴がある方に投げた。
渦のまわる方向とは逆回転でブーメランはその渦のまわりを回り続ける。
ゲインはブーメランの回転速度が遅くなると、再度ブーメランを掴み、また勢いよく投げつける。
なぜかブーメランが逆回転で回る度に、渦の回転速度も遅くなっていった。まるで渦全体が意識を持ち、まわり続けるのを、そのブーメランを追いかけてしまい、自らの回転する方向が分からなくなった、というような‥空間の取り合いのような事が起きている。
渦の吸い上げる力はこうして、なくなった。

GO(豪)は埋まりかけた左足をすぐに抜き出した。

GO(豪):「なんなんだよ、この部屋は。トリック部屋か?」

ゲイン:「おそらく、また渦はやってくる。皆さん足元を掬われないように気をつけて!」

GO(豪):「何かつかまるものがあればなぁ。それにぶら下がっていれば足元を気にしないで済む。。いや、待てよ。」

GO(豪)は何か考えている。

砂が渦の中に流れ込んでいく。。しかし、この部屋の中の砂は空っぽにはならない。一体この砂はどこからこれだけの量を蓄積できたのだろうか。
それにしても、先ほどの勢いよく渦の中に流れ込んだ砂はどこへいったのか?そしてあれだけの量を流したはずのこの部屋の砂は、ちっとも量が減っていない気がする。

GO(豪):「…僕に考えがあります。」

GO(豪)は壁四面に1メートル✖︎1メートルの縦と横の線をその辺に落ちている軽石を拾って描き、引いていく。
その数(線)は増え、壁自体が全面方眼紙のようになっていく。

GO(豪):「さぁ。ゲインと巡回員ブルーさんも手伝って。」

描きながら全員足元を常に気にしたが、何故か壁際の四面全てに渦はやって来なかった。壁際にいれば渦の影響は受けないみたいだ。
四面に全て方眼線を描き、皆でそれぞれ訳もわからず壁に線を引く。

巡回員ブルー:「なんだかよくわからないが描いたぞ。これでいいのか?」

ゲイン:「私もOKよ。」

GO(豪):「壁際には渦が来なかったのでふたりはそのまま壁際にいて下さい。移動する時は同じく壁際を進んで移動して下さい。僕がこれからすることを説明します。これから僕は囮になります。」

巡回員ブルー:「えっ!囮に?」

GO(豪):「そうです。僕が砂の上を歩きます。すると渦が現れる。僕はもうブーメラン無しでいけます。渦の中に足をもってかれない方法を見つけました。そして、ふたりにやってもらいたい事があります。渦が現れた場所をこの方眼紙上の壁にマーキングしていって欲しいのです。」

ゲイン:「どーゆーこと?何の意味があるの?」

巡回員ブルー:「全く何がしたいのかわからん。」

GO(豪):「よーしっ。とりあえずやりながら考えていきましょう。いくよっ。」

GO(豪)が砂の中を砂埃あげて歩き出した。砂は重く、素早くは前に進めない。先ほどの渦の濁流を考えたら濁流の速さには勝てない。速さで勝てないなら、どう動こうというのだ?ふたりは不安にGO(豪)のすることを見守っていた。

はじまった。
ひとつめの渦がやってきた。
右足だ。
渦は絡みつくように右足を狙ってくる。

GO(豪):「ひとつめ!ここです。」

GO(豪)は渦が回る方向とは逆回転で剣を振り上げる。それはまるでフィギュアスケートの回転ジャンプのようだ。
その逆回転の立ち回りのスピードで、渦はブーメランの時と同じようにその回転を鈍くさせた。
それに見とれるふたりはGO(豪)の剣術は本物だとその時点で理解した。
渦が回転を止め、GO(豪)も回転を止めた。そして振り上げた剣を渦が起きた場所へ突き刺す。

GO(豪):「いいですか。この剣を突き刺した場所。ここを各面の方眼線に記してください。
1メートル✖︎1メートルのマス目を塗りつぶしてください。」

ひとつめは部屋全体を四角形として、主体化すると、その中心から西側に1/3ずれたあたりだ。
例えを四角形、方向を上を「北」、下を「南」、と想定して、四面の塗りつぶしは方角で例えると「北」「南」「東」「西」となる。
四面全てに塗りつぶしを得て、その塗られた面を線で結ぶと渦の場所となる。
渦はおそらく決まって同じ場所でおこる。
GO(豪)は単純にその渦の場所を特定したかったのだ。

GO(豪):「ふたつめ!いきまーす!」

同じようにGO(豪)は砂の上をどことなく歩く。先ほどとは違った方向へ歩く。
また渦が現れた。今度は左足を狙っている。
要領を得た。
渦を回転して、鈍くし、打ち止める。
剣を刺した場所は先ほどより東に2/3ずれた辺りだった。

GO(豪):「ふたつめもマーキングして下さいー。」

剣をまた、突き刺す。

ゲインと巡回員ブルーはその剣を目印に方眼線にマーキングする。

GO(豪):「みっつめ、行きまーす!」

同じように繰り返す。ゲインと巡回員ブルーは方眼線にマーキングする。

GO(豪):「…なるほど。。何となく分かった気がします。。いいですかぁ?つぎはこっちから渦を誘導します。先ほどの方眼線の位置、さっきと全く同じ位置に渦を持っていきますから、見てて下さい!」

GO(豪)はそう言って動き出した。
渦がGO(豪)の左足を巻き取りにくるっ。
GO(豪)は渦の回転を止め、その中心に剣を突き刺した。

GO(豪):「マーキングしてみて下さい。」

何と先ほどとピッタリ同じ位置にマーキングされた。

GO(豪):「もう一回!」

同じ事を繰り返す。そしてまた、渦は予想通りの同じ位置だった。

GO(豪):「わかりましたよ。皆に説明します。ここの仕掛けは見掛け倒しです。それにしてもよくできている。一体誰がこんな仕掛けを施したのだろうか。これをつくった人は余程の見栄っ張りだと思います。」

巡回員ブルー:「えっ、どういうこと?足を掬われたら殺されるのでは?ないの?」

GO(豪):「これはきっと、脅しのからくりです。誰かが、この砂地に足を踏み入れると、重みがかかり、一面の砂はその力がかかった部分、すなわち右足か左足に砂が流れ込むようになっているのです。渦のように回転して足をとられるのは砂が一点に集中して流れ落ちてきている証拠だからです。それは雨の日に広げたブルーシートの上、1箇所に水が溜まるのと同じ原理です。」

ゲイン:「なるほど。となれば、この渦に命を取られることは無いのね?」

GO(豪):「そうだね。まあ、ちょっと見てくれ。」

GO(豪)は首にタオルを巻き、何枚か両方の耳にティッシュを丸めて突っ込んだ。

GO(豪)はさっきと同じように砂の上を歩く。そして、渦も同じように左足を巻いていく。
今度はGO(豪)は動かない。
左足はズブズブと膝上ぐらいまで砂に食い込んだ。GO(豪)は動じない。両足までも渦の中に埋もれた。おそらくもう身動きは取れない。


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