見出し画像

鈴を持つ者たちの音色  第十六話 ”α”-イエロー①

雨は降るの?

降らせる。

どうやって降らせるの?

ここ”グランドライン”の外には大量の海水がある。それを利用する。
濾過システムの開発だ。
発案はした。あとは、俺の代で実現するか?お前の代で実現するか?だ。
(濾過システムの切り札はキックスコーポレーションのふたりだ。キックスコーポレーションは地熱を利用した発電タービンを建設し、地熱で気体にした水分を集めて濾過システムへ送り込む”人口雨”を開発中だ。)

雨を降らせることができるなら、皆んなの生命の糧となる”雨”となるだろう。

GQ(自給):「自給は人類の永遠の課題だ。生きる為の課題である。それには先ず”土”が必要で、次にその”土”には”水”が欠かせない。」

”グランドライン”へ人類が到達してから、人類は何を食べて生きてきたのか?
それはプランクトンであり、人工ジェルだった。
硬いものを口にしなくなった人類は、歯が退化していく。
それを防ぐために、岩粉をすり潰し粘土質にしたチューインガムの様なガーミンと呼ぶ嗜好品を考案した。栄養は無いが習慣的にそのガムを噛むようになった。
プランクトンは幸運なことに豊富にあった。
高酸素と反応し、光を放つほかに、人類の食糧ともなった。
プランクトンは人類の命そのものだった。
プランクトンは海中にしかいない、と思われがちだが、この”グランドライン”の高地地帯(標高が高い場所)にはプランクトンが常に浮遊し堆積していた。
空飛ぶプランクトンだ。
羽は無いが、大気を海中と同じように泳ぐように舞う。
大人の殆どは、この浮遊するプランクトンを捕獲する空中漁を職とした。
蜻蛉を捕まえるように虫取り網に似た道具で当初は捕獲していたが、今となっては吸い取り掃除機のような機械を開発し、それを使って捕獲するようになった。
これによって作業効率があがり、大人達は空中漁以外の仕事にも時間を使えるようになった。

吸い取ったプランクトンは四角いキューブ状に固まって吸い取り機から出てくる。
このキューブを国が管轄する高酸素庫へ入れて保管する。捕獲したプランクトンは高酸素庫へ入れておかないと死んでしまう。
キューブは食糧の主となる一種のお米のような役割を担っていた。
プランクトンを人工的なタンパク質で固めたものがキューブだ。
そして、このキューブを主体とし、アレンジして飲みやすいジェル状にする。
ジェル状にしたものをジェルパックに入れ、それを日常的食糧としてチューチュー吸うのだ。それを人工ジェル。という。
”グランドライン”のような海底生活はお腹が空く、という感覚はなかった。
おそらく深海圧の影響だろう。
胃の中に食べ物を入れると深海圧の影響で血圧が高くなる。
いくら”グランドライン”の中にいても深海圧の影響は屋外より少ない、とはいえ、やはりここは海底の奥底。深い深い底知れぬ底なのだ。
海底にいる間は大食いは死をもたらす。それは皆当然の知識として、幼い頃から教わっていた。

しかし、GQ(自給)の家系は違った意見を持つ。
食の偏りはいつか人類に危機をもたらす。と研究している。プランクトンジェル一辺倒では今後、命を繋いでいけない。と研究から結論を出した。
米が、野菜が、果物が必要だ。
自給自足を研究し、いつかは土で育てた作物で、これからの命を繋げたい。
この海底では、胃の中に入れる量は少なくとも生きていけるが、それでも地上と同じ米や野菜や、果物は必要だ。
人間とは、か弱い。
とってもデリケートで、か弱い生き物だ。

”グランドライン”には地熱地帯がある。
地熱地帯が発見され、実に様々な変化をこの”グランドライン”へもたらした。
先ずは物作り。地熱を利用して鋳物を造り、そこから武器や鍬などの生活道具を造った。
ここ”グランドライン”には砂が豊富にある。
この砂と過去に沈んだ船の鉄スクラップを拝借し、スクラップを溶かし、砂を混ぜて鋳物を作った。
それにしても、ここ”グランドライン”に堆積する”砂”はなぜ?こんなにも万能なのだろうか?
地底深く堆積した砂はもしかしたら、地球上の限りある成分がここへ沈み堆積されているのではないだろうか?
万物の原材料が、重力という力に引き寄せられ、”ここ”に集められているのか。
そう考えてしまう。

GQ(自給)は毎日鍬を手に、砂という砂を耕した。何年も押し固まった砂は、鍬で耕すと素直に解れ、何故か耕した場所の砂は軽くサラサラになった。後で分かった事だが、一度締め固まった砂は鍬で耕すと酸素が抜かれサラサラになるという事が分かった。
抜かれた酸素は高い場所へ集まる。
耕す事で砂の酸素は抜かれるのだ。
耕したサラサラの砂に雨が降ると砂の粒子ひとつひとつに栄養分が浸透する。
固いままの大地は、降る雨が表面を滑りただ流れていくだけだが、一度解した砂は違う。
吸収する。もしくは浸透していく。
水から栄養分を蓄えた砂は、時間を得て”土”へとその姿を変えるだろう。
GQ(自給)はそれを期待して信じて毎日固い砂に鍬を立てる。
植物は太陽が無く光合成が出来ない。なら、酸素で育てよう。が基本だ。
”土”ができるまで、辛抱だ。
”土”ができるまで、は酸素で食べ物を育てないといけない。


雨を降らせる可能性はもう少しで現実になりそうだった。

GQ(自給)は毎日の鍬仕事で腕が倍以上にも太くなった。
そして自然と民1番の力持ちになった。
”グランドライン”の中にいる限り、年はゆっくり経過する。一年という時間の数え方を”グランドライン”へ置き換えるなら、ここ”グランドライン”の一年は地上の3分の1の経過スピードで進む。
”グランドライン”にいれば地上よりゆっくりのスピードで歳をとる。
地上で30年経ったのが、ここでは10年しか経っていない事になる。
このゆっくり時間を経過する理由には重力が関係していた。
重力場に近ければ近いほど、時間はゆっくりと過ぎる。
人が動く速さが遅くなるのかはわからない。
けれども地球の核(重力)に近ければ近いほど地球の内周差、外周差は有る。
地上重力✖︎外周-(マイナス)海底重力✖︎内周=(イコール)時間差。
ともいえる。
もし、重力の力が一定なら。



#創作大賞2024
#漫画原作部門
#鈴を持つ者たちの音色
#少年マンガ
#少女マンガ
#青年マンガ
#”α”地帯攻略本
#宇宙人来襲
#地球人らしさ
#水龍
#地上生活を取り戻す
#漫画原作
#小説


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?