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鈴を持つ者たちの音色  第四十五話 ”受容③”

大叔母の部屋で”BOO(武)は目を覚ました。
大叔母の隣にはWA(輪)がいる。

BOO(武)は左腕の腕輪をさする。

BOO(武):「大叔母‥人間の姿のままにして下さりありがとう。この腕輪がなければ私は大獣になってしまうのね。」

大叔母:「ああ。これがあなたの現実よ。私には190歳の現実があり、ここにいるWA(輪)には”善”と”悪”の術を持ってしまった現実がある。皆何かしらの”現実”と向き合っている。お前の場合はその腕輪さえ外さなければ何も起こらない。 BOO(武)はBOO(武)のままさ。」

BOO(武):「ええ。すいませんでした。」

大叔母:「今のうちに言っておく。2体の双子の大獣がどこかで生きている。もしかしたらそのうちお前のところへ現れるかもしれない。それは覚悟しておいて。その時は”答え”を導き出すのに悩むはずじゃ。闘うか?受け入れるか?逃せば人類の被害を生むことは明白。闘えばお前の中の”父性”がそれを拒もうとするだろう。今のうちにどうすれば良いのか考えておく必要がある。」

BOO(武):「わかりました。」

WA(輪):「私の父が‥すいませんでした。」

BOO(武):「私が人類の為に身代わりになった事は私には名誉な事よ。こんな私にも人類の為にできる事があった。私は残酷なこの現実を受け入れた。あなたの父親は私に”切り離し”をもちかけてきた。けれども私はそれを拒みました。こちらこそすいません。」

WA(輪):「なんで!何で?何で?人類の為より、自分の為でしょ!正当化しないで!私の父はあなたに獣を押しこんだのよ。父が生きているうちに。切り離した方があなたの為よ!どうして受け入れるの?」

BOO(武):「お気持ちはありがたいわ。でも私は”切り離し”はしません。私には考えがあるの。
この大獣は”利用”できる。このとんでもない”力”を私の”力”に変えるのよ。私はいつかそれができる気がするの。そして、その時はこの”腕輪”がいらなくなる時。」

大叔母はニヤけてしまった。
190歳の胸が期待で熱く昂ぶるのを表情に変えて耐えた。

WA(輪)は何も言えなくなってしまった。

大叔母:「あなたは‥”真”の武道家ね。その調子で鍛錬して共にもっともっと強くなりましょう。」

BOO(武)は稽古に戻った。

大叔母:「WA(輪)よ。お主は”切り離し”の術は教えてもらってるのかい?」

WA(輪):「まだやった事はないですが、教えてもらっています。”リング”の持つ術は既に全て教えてもらいました。」

大叔母:「そうか。なら良い。いつか闘いが終わる時、大獣を切り離す時が来るかも知れぬ。その時はよろしく頼むぞ。」

WA(輪):「わかりました。大叔母。”闇”の術はこのまま持っていていいのでしょうか?”封”しなくては?」

大叔母:「”闇”は”闇”で持っておけ。時には”闇”の力も必要な時もある。しかしな、”闇”の術を使う時は注意せよ。そのまま”闇”に呑まれるかも知れぬ。」

WA(輪)はわかったと言い、同じく稽古に戻った。

そこへ”RI(凛)”がやってきた。

RI(凛):「大叔母。そろそろ仕上げの段階まできました。お願いします。」

大叔母:「おお。そうか。何人だ?」

RI(凛):「GO(豪)、WO(女)、ME(男)の3人です。」

大叔母:「3人を私の部屋に呼びなさい。」

RI(凛):「わかりました。」

GO(豪)、WO(女)、ME(男)が大叔母の部屋に来た。

大叔母:「いよいよ。君たちは”スズモノ”メンバーの中でも、先陣を切り”アイツラ”との闘いに備えた稽古も本日で最終段階を迎える。
最終稽古は”実戦”だ。
(大叔母は部屋の畳を一枚めくり上げる)
この地下通路を降りると”地下室に眠る者”がいる。
そやつは”アイツラ”と同様仕様、同様レベル。いや、それ以上じゃ。
そいつと闘え。
一人ずつ闘ってもいいし、皆で一同に闘うのもいい。思考を凝らして協力しながら闘うといい。
言っておくが、”強い”ぞ。”スズモノ”全員揃っても敵う相手ではない。
気をつけろよ。

GO(豪)を先頭に地下室に向かう階段を降りてゆく。
階段を降り薄暗い通路を抜けると広い日本庭園があった。大叔母は地下室と言ったが印象が全く違う。

白砂をメインに苔むした岩がひとつ。
そして中央には高さ6メートルほどの柳の木があった。
それにしても広い。
大叔母の部屋の真下がこんなにも広い空間になっているなんて想像もつかない。
大叔母が言っていた”者”とはどこだ? 
まわりを見ても探せない。
その時全体に敷いてある白砂が鳴いた。

GO(豪):「よっしゃ。俺から行きます。ふたりはしっかり分析して下さい。俺が”者”の能力を暴きますから。」

”者”:「枯山水【【【 」

白砂のわずかな動きに反応して”者”の声と共にGO(豪)が後ろに吹き飛ばされた。
GO(豪)は目を瞑り両腕をクロスに防御しているが、そのままの体勢で飛ばされた。さっきくぐり抜けてきた通路脇の壁に強くぶつかる。

「グハァッ!」
息を吐き出す秒数もなくGO(豪)は何かをすぐに感知し、壁を蹴り宙を舞い相手の後ろをとる。
壁には既に一部分穴が空いていた。GO(豪)が壁に接触したと同時に”者”は2発目の攻撃を打ち出していた。
後ろをとったと思っていたGO(豪)のクロス斬りも当たらない。既に交わされている。

GO(豪):「ハアッハアッ。一手一手が追いつかない。”者”は僕の一手先をゆく。」

GO(豪)のクロス斬りは2本の刀をクロスして打ち出す二刀技だ。GO(豪)が刀を2本出すのは珍しい。GO(豪)は最初から全力だ。

GO(豪):「なぜだ?なぜ姿が見えない?これだけ集中しているのに。”者”は?動き続けているのか?」

WO(女):「うーん‥私も見えない。目で見ようとするから見えないのかなぁ。ねぇME(男)。あなたの”トオシ”なら見えるでしょ?」

ME(男):「それが、見ようとしているけど照準が定まらないんだ。”トオシ”はカメラで言う望遠レンズのよう。見えない者を見ようとするならしっかりと照準を合わせる必要があるんだ。
”者”は僕の”トオシ”の能力も把握しているらしいな。小刻みに速く動き、ロックされるのを防いでいる。まるで戦闘機だ。」

WO(女):「それにもっと不思議なのはこの白砂の上での動きよ。なぜ素早く動いているのに足元の白砂は埃のひとつたたないの?砂の音さえしないわ。」

GO(豪):「ははーん。わかったぞい。なぜここが日本庭園なのか。そしてわざわざ何で白砂の上で闘わせるのか。」

ME(男):「うん。何となく僕にもわかるよ。大叔母はこれは実戦じゃ。と言っていたけど、これもまた修行の一貫だ。」

GO(豪):「ああ。そうだ。”者”のように白砂を散らさず動き、
石や砂、草木で山や川の雄大な自然風景を現すように技を駆使する。 
枯山水‥無の境地を目指す”禅”を記す闘いの場だ。」

WO(女):「ということは‥こういうこと?(WO(女)は前に出てきて技を出す)
”岩のように‥力強く‥重く‥そして打ち出す!”

WO(女)が両掌で気を岩のように固めて右脚の振り出しと共に前方に右回しの回転をかけて打ち出すと、空間が一瞬歪み、”右回りの気”が、白砂の一部分を剥ぎ取って一筋の路を形どってしまった。しばらくして”ドン”という音で向こう壁に大穴が空いた。」

ME(男):「スゲエ。そんなすぐにできる?普通‥」

GO(豪):「うんうん。そんな感じだよね。俺もやってみる。こんな感じかな?」

GO(豪)は高く飛び、刀を使って空(くう)を畳み真下に打ち出した、2本の刀をそれぞれ逆回しに反回転を加えて、竜巻のような荒々しい空砲が白砂、ほぼその場所の全てに飛び散る。
その飛び散った白砂が、”者”の姿を特定する。
ゴー、(よし!”者”の位置を確認できた。行くぞ)
GO(豪)は”空間斬り”をした。
そして間合いに入ってきた”者”にクロス斬りをした。
手ごたえはあった。しかし、実際に”者”は斬れていなかった。

GO(豪):「(あちゃー、うまくいったと思ったのになぁ。なかなか切らせてもらえない。でも、コツをつかんだぞ。こんな感じだろ?」 
次は二刀をX(エックス)字に抱えて上体ごとグルグル回転させて”者”にぶつかりにいく。

ME(男):「(すごいコツさえつかめばあんな技も繰り出せるのか。)」

ME(男):「(よし、俺もなんとなくわかったぞ。)」

ME(男)も前に出てきた。2人の技を見て、自分も技を繰り出したくて、しょうがないのだ。

ME(男):「川のように‥大川のように‥(イメージ)
ME(男)は武器を持たない。
ME(男)はその器用な手のひらを肩からまっすぐに真上に伸ばし、天から地まで1本の線を引いた。
ME(男)が目を閉じ”気”を集めると、
その掲げた腕はメキメキと筋肉隆々に太くなりモコモコと腕の中で暴れ出した。
ME(男)がタイミングを合わせ、そのまま垂直に前方に手のひらと一緒に1線を投げ出す。
天から地まで1線がそのまま垂直に左右の景色を真っ二つに切り裂いていく。
もう片方の腕も上がった。同じようにメキメキと上げた腕は筋肉隆々に大きくなる。そしてもう1線閃光が垂直に投げ出され走っていく。

ME(男):「こんな感じか。すごいすごいぞ。」

WO(女):「なんだかこの部屋自体が不思議だ。精神の部屋というか、万物の創造した力の存在を感じとれそうな気がする。力が溢れ出る。」

”者”:「なかなかいいじゃないか。」
全身真っ白な着物を着てフードを被っている”者”は自分から姿を現した。

WO(女):「えー!?おばさん!?」
(まさか!この部屋には一緒には入ってないはずだけどなぁ。)

目の前に現れたのは確かに大叔母だ‥いや。何か様子がおかしい。

GO(豪):「(確かにおばさんだ。どう見たっておばさんだ。しかし何かが違う。気配が違う。それはおばさんじゃないぞ。)」

ME(男):「(どういうこと?)」

”者”:「この庭園は散策するのではなくじっくり景色を眺めることで、心を落ち着かせて石の位置や砂の模様を考察しながら眺めるもの。
山や川を想像し自然風景や宇宙を表現する。
それは己の心の中にもある。
インスピレーションの庭。
自分の持っているものを、より高みを知り、広げろって事を意味している。
もっとインスピレーションを高めよ。力に蓋をするな。
君らの高みはもっと高いところにある!」

GO(豪):「なんだかドキドキしてきた。力が沸き立つ。そっかぁ。僕らの力はまだまだ、上があるのかぁ。よーしっ。」

GO(豪)は張り切って技を打つ。
空間斬りの次は”時間差空間斬り”。
一度振り抜いた一刀なのにニ刀目が遅れて追って斬る、というもの。一刀、二刀で空間も一緒に時間差で斬られた分迫る。
その他に”一刀追影斬り”も発案した。
これは一刀斬ろうと振りかざした時にその一刀の先にもう一刀が乗っかった連弾斬りだった。

”者”:「いいねぇ。その調子。頭の中でより大きなもの、強いものをイメージしなさい。山、海、太陽、月、そして宇宙を!そしてイメージを技に。武器にしなさい。」

ME(男):「こんなのはどうですか?(ME(男)は胸の前で手を合わせ輪をつくる。その輪の中へ息を吹きかけるとチューインガムのような風船ができた。息を吹きつけ、次々とそれを連続して作り出す。一斉に飛ばした風船はゆらりゆらりと動き”者”がいる場所で暴発した。微妙な間隔で次々と”者”を取り囲むように暴発していく。まるで時限爆弾だ。
煙った後の景色は乱れに破壊されていた。

WO(女):「(なんなの?色んな技を駆使して攻撃しているのにどれも通じない。あんな強力な攻撃を‥こんなに強い相手は大叔母以外見た事もない‥同じ人とは思えない。」
ねぇ?一体あなたは誰なの?どうして大叔母と同じ顔をしているの?」

”者”:「‥私は”機械秘書”‥もう長いこと大叔母の側で働いている。私は”大叔母の影”として造られた。もう150年前の話よ。
大叔母は現世と来世を渡り歩くようになって現世を留守にする事も多くなった。

優先すべきは
”アイツラ”が襲ってきた時だ。
大叔母がいない時を見計らって”グランドライン”が襲われた時もあった。
スパイだっている。若い子を指導するのも怠ってはいけない。
大叔母はそれだけ、ここ”グランドライン”にはいなくてはならない存在なのだ。
そこで、現世にいない間の”穴”をどう埋めようか?という話になった。
そこで出た話が”私、機械人間”だったのよ。
それも大叔母そっくりのコピーじゃないといけない。”アイツラ”を騙す為にも私は必要だった。」

WO(女):「150年前にこんな精巧な”機械人間”が‥いったい誰が造ったの?」

”者”:「誰よりも腕が立つ人物によって造られました。それもたったひとりで‥」

WO(女):「たったひとりで?150年も前に?今よりも精巧なものを?」

”者”:「はい。素材が素材なもので‥」

WO(女):「150年も前にどんな素材があったって言うのよ!」

”者”:「‥”アイツラ”です‥私は、私自身は元は”アイツラ”です。」

WO(女):「”アイツラ”?まさか、あなた、まさか、”アイツラ”の上書き機械!(WO(女)は攻撃体制に構える)」

”者”:「”アイツラ”はいつの時代も最先端素材でできている。あのお方はそれを上書きされた。さらに上をいく技術で。私は恵まれました。今でもそのご恩をお返ししている。
WO(女)よ。そんなに疑うなら試してみるか?私の技を見ればお前も信じるだろう。」

”者”は”WO(女)に襲いかかってきた。素早い。
WO(女)が防御する体勢も間に合わない。
深く右拳が腹の中におさまる。ボディブローなのにWO(女)は宙に浮いた。それだけの勢いだ。
浮いた足が地面に付く前に、膝蹴りが再度ボディを貫く、再再宙に浮く。その浮いた”間(ま)を狙い、回し蹴りで悲鳴に変わる。
かなりの衝撃だ。
WO(女)は落地と同時に動けるように空中にいる間だけでも、と痛めた腹に治癒気を流しこむ。
肋骨は折れ、内臓はどうだ?回し蹴りで筋肉は雑巾をしぼった時のようにブチブチと繊維を破壊されたようだ。
これだけの攻撃には覚えがある。
やはり大叔母だ。
身体は機械になっているが目の前の機械人間は大叔母である‥
空中にいる間、誰かの後姿がチラついた。
たったひとりでこの機械人間を造り上げた人‥
全身に行き渡る”痛み”が匂わせた。
まさか‥いや、この人しかいない。
‥大叔母だ。
大叔母がこの機械人間。大叔母のコピー人間を造った。
WO(女)はこの時”読み取った”。

WO(女)は急に苛立った。怒りがこみあげてくる‥
それなりのダメージを受けていたが、痛みは怒りに変わっていた。

WO(女):「まさかだろー!このやろう!」

WO(女)は頭から落地寸前のところで片手を広げて浮き輪のような気体を発した。
「ポンッ」っと逆さまのまま”者”の真上へ跳んだ。もう片手の指先はピストルのように”者”を指差している。槍のような物体化した一雷が”者”の身体を突き刺していた。釘を刺したように”者”は動けない。
WO(女)はそのまま空中から落ちる重力を踵に集めた”踵落とし”で決めた。

”者”:「‥いいわね。その調子よ。あとは”怒り”を使わないでこの境地を目指しなさい。」

”者”は身体に突き刺さった一雷を抜いた。

”者”:「WO(女)合格よ。そしてGO(豪)とME(男)もね。」


大叔母は”者”が感知した電子データーを既に読み取っていた。地下室での一戦で何かに気づいたようだった。

大叔母:「お見事でした。驚いたでしょう。”地下に眠る者”は私そっくりですからねぇ。”者”との闘いは勝ちor負けではないのです。それなりに”者”に認められた”者”が選ばれし”者”になるのです。
まぁ倒せる”者”もいないでしょうが‥

GO(豪)、WO(女)、ME(男)にはもう教えることはありません。”アイツラ”との決戦に備えて個々得たコツを膨らましていってください。日々鍛錬あり。」

GO(豪):「大叔母‥。」

大叔母:「あらGO(豪)なんだい?」

GO(豪):「大叔母に頼みがあります。GE(ゲン)の稽古が一段落して”アイツラ”との決戦にまだ余裕があるなら、僕ら兄弟を来世へと連れて行ってくれませんか?来世には”剣士の砦”があり、生まれて死ぬまで剣を磨く民がいると言う。僕らそこに行ってみたいのです。同じ剣を極める”者”として。」

大叔母:「ほほう。やはりあなた達は剣士ねぇ。血が呼ぶのね。わかりました。検討します。その前にGE(ゲン)ね。GE(ゲン)の仕上げ次第という事にしましょう。」

GO(豪):「わかりました。ありがとうございます。」

WO(女):「大叔母。話があるの。ちょっといいかしら。”もてなしの部屋”で。」

【もてなしの部屋】
WO(女):「大叔母‥私見えてしまったの。私は唯一大叔母の血を引いた”者”。
”地下室に眠る者”と闘った時に全くあなたと同じ技のダメージを受けたわ。
効いたわ。むしろ効いたせいで私も”覚醒”してしまった。
かなりのダメージを受けた時、”誰かの影”を見たの。その影は‥あなただった。
あなたと全く同じ技を繰り出すコピーと戦うのと同時に1発くらう度にあなたが私の中に入ってきた。痛みと共に。
痛みは私に教えてくれたわ。
”地下室に眠る者”を造ったのはあなただった。
あなたには”機械人間”を造る技術もあったのね。それも相当腕がいい。
誰よりも精巧な”機械人間”を造れるほどの。
そして、それはどういうこと?なぜ?私には理解できない。
あなたの答えによっては私は”スズモノ”を率いてあなたと闘わなければならない。」

大叔母:「‥よーく、まぁ。‥気づいたわねぇ‥。能力があがっている証拠ね。やはりあなたは私の子供ねぇ。よーく。そこまで育ってくれた。水龍との密約を交わして良かったわ。」

大叔母:「あなたには分かるかなぁ。地球上には、そしてここ”グランドライン”には”アイツラ”は必要なのよ。残念ながら‥。」

WO(女):「はぁ?何言ってるか自分でわかってる?”アイツラ”は地上を滅ぼしたのよ。私たち人間を地上から奪った張本人!それが、必要!?意味がわからないわ。」

大叔母:「わかりやすく言うわ。毒には毒を‥そして、毒が無いと血清も開発されない。
私は過去へ行き、来世へ行き、皆よりはかなり長くこの地球上を見てる。その中でわかったことがあるの。
この地球上でいちばん残酷な生き物。それが人間だと。
人間は地球を破壊し生き物を殺し、食べ、そして同じ人間を殺す。それは過去も来世も一緒だった。私利欲に支配され、お金に支配され、かけがえのないものを失くす。”アイツラ”は人間がした事に乗じただけよ。
しかし、不思議なもので戦争や災害が起こるとそれは変わる。
危険は未曾有な事態に備えてやってくる。
なぜか人間は近くに危険がおよぶと、それを守ろうと団結する精神が生まれる。良い方向に動くの。”災い転じて人と成す”
人間は人間でいる限り幸せにはなれないのよ。」

WO(女):「‥私にはわからない。理解できないわ。理解できる日がくるとも思わない。”アイツラ”が存在することでどれだけの人が攻撃され死んだのか想像してる?あなたはひとりの命の重さをどれだけ重く見ているの?あなたがした事で大勢の命が守られたとしても、誰かは”アイツラ”に殺されたり、”同調”されたり、スパイに洗脳されたりしている。」

大叔母:「‥まだまだねぇ。視野が狭すぎる。もっと地球全体を見なさい。目の前を見過ぎよ。実感しなさい。あなたはこれからの”人”。地球全体を見て宇宙全体を感じなさい。まぁ。今直ぐにとは言わない。そのうち気づくわ。」

WO(女):「これからどうするつもり?私たちを操り強くさせ”アイツラ”と闘わせる。このままじゃ共倒れだわ。あなたは一体どちら側なの?」

大叔母:「もちろん。こちら側よ。私は確かに最初の”アイツラ”を生み出した。こんな事態になったきっかけは私よ。しかし今、”アイツラ”は私の制御から外れ独自の組織へと変貌してしまった。
生態系を変えてしまったの。”アイツラ”の目的はただひとつ。人類の根絶。
”アイツラ”にとって人類は脅威そのものなの。
人類を根絶させる事で”アイツラ”は自由になれる。地球を宇宙を思いのままにできる。」

WO(女):「あなたの撒いた種が育ってしまった。蔦は絡まり、それを今あなたは解こうとしている。解いても解いても蔦は思いのほか絡まっている‥私たちは蔦解きに巻き込まれている訳ね。」

大叔母:「上手に例えるわ。」


そこへ巡回員ゴールドとリングが入ってきた。

大叔母:「おいっ。ここは誰も立ち入っちゃいけない”もてなしの部屋”じゃぞ!緊急事態か?」

巡回員ゴールド:「いいえ。、緊急事態ではありません‥”自制の実”をお持ちしました。」

大叔母:「なーんだ。何かと思ったぞよ。思ったより早く取ってきてくれた。ありがとう。これで大獣がまた暴走しても抑えられる‥うむ?君ら女中に気付かれずによくここへ入ってこられたな?
ははーん。
君ら、”わざと”今のタイミングを見計らって入室してきたなぁ?」

巡回員ゴールド:「‥いやぁ‥あのー‥」

大叔母:「どこまで聞いていた?」

リング:「”わたしは確かにさいしょの”アイツラ”を生み出した‥までです。」

大叔母:「ふんっ!最初から聞いているじゃないか!まぁ。こちらも気配は感じていたぞ!」

WO(女):「大叔母。”スズモノ”達にはちゃんと話しておいた方がいい。いずれこの話は”アイツラ”と一戦交える度に露出していくはず。
闘いの最中に出てしまえば戦闘の士気に差し支えます。私たちは同志。”スズモノ”に歪みがあれば”アイツラ”にも都合がよくなる。」

大叔母:「うむ。よし。私に考えがある。先程の”GO(豪)の話もある。ちと時間がないが見に行こう!現世から来世を。スズモノ”達の稽古を急ぐぞ。



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