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鈴を持つ者たちの音色  第二十五話”α”-グリーン③

スティック型”BANZAI”が出来てから”アイツラ”はまだ現れていなかった。
しかし、スパイがいるという噂は相変わらずたっている。
そのスパイに記憶を消されないように一部の民はこっそりと常にそのスティック型”BANZAI”を耳孔に装着していた。
対抗する武器や作戦を立てる前にまず、相手を知らないといけない。
その為の第一布陣だ。
その一部の民の中に”オキナ”も選ばれていた。
常にスティック型”BANZAI”を付けスパイ探しをしていた。
スパイにはある程度の特徴がある。
・人と群れない
・突然1ヶ月〜1年間消える。そして突然現れる
・男型と女型があり、いずれも若い
・髪に癖はなく、体毛が無い
この様な特徴だ。

特に民はこの”若い”というところに着目した。
そして1年に一度の20歳の時期に大人への任務と偽って、スパイを探す為の儀式を発案した。
同時に”グランドライン”の中でスパイ探しを中心として活動する一部の民で本部をつくり、
”グランドライン”を裏で組織する”奏組(カナデグミ)を運営した。
”グランドライン”の民の中、それも若い人となると数は多くない。しかし、不思議なもので毎年必ず実態を得ない若者が必ずこの”20歳の任務”に現れるのだ。
おそらくいままでは、”奏組”を実行してもスパイに記憶を消されスパイを捕らえることができなかった。
スティック型”BANZAI”を装着しての任務は今回がはじめてだった。

ME(男):「その時に親父に何かあったんだな?」

巡回員グリーン:「そうです。話をやめますか?あなたは聞かない方がいい。」

ME(男):「いや。聞く。今まで知らなかった分、教えてくれ。」

巡回員として”オキナ”は、ある”α”地帯へと20歳の任務者を引率していった。
その場所は、”ひかり苔の丘”という虫が集まるひかりの砦地帯だった。明るくランタンは必要ない。しかしひとりの青年がそのひかり苔を沢山集めて、増殖し、遺伝子を改良すれば太陽に変わるものを創れる。と言って突然そのひかり苔を大袋に入れ集めだした。任務そっちのけで。
当然”オキナ”は青年を注意し、それをやめさせた。しかし、青年は頑なに意見を変えない。
「太陽があればこの暗い海の中も、”グランドライン”も明るくなり生命も甦る。生命は暗い闇の中に隠れているだけだ。」
そう信じていた。
”オキナ”はこの青年をスパイだと目印を付け監視していた。
この時に分かったが、このひかり苔は”α”地帯では凶暴な群れを為す虫だった。地上なら蜂と同じ。巣を荒らされた蜂はどうなる?
ひかり苔は無数に襲ってきた。
あっという間に一団はひかり苔に覆われた。
ひかり苔は人の血を吸う。血というか水分に飢えている。水が不足していたこの時期は人間の血は格好の栄養となる。
巡回員オキナのグループ3人と”オキナ”はどうする事もできなかった。
ここで”オキナ”が機転を効かせる。
ひかり苔にピッタリ全身を覆われて身動きが取れない中で、皆に伝えた。
「いいかぁ。意識があるうちにしっかり聞け!血を吸われる、という事はこいつらにも胃袋がある。こいつらの胃袋を刺し切ろ!そしてその胃袋に吸いつけ!1匹吸い尽くしたらもう1匹だ。それを繰り返せ!吸われた血は、吸って取り返せ!」

ひかり苔の胃袋は簡単に切れた。切り物を持ち合わせていなくてもヤツらの胃袋に噛み付けば血にあり付けた。
巡回員オキナのグループ総員4人の血みどろの現場は血に染まりひどい殺戮現場のようだった。
本部(奏組)ではカメラ映像でその光景を見ていたものが嘔吐するほどの光景であった。
本部は救助に向おうとしたが、”オキナ”はカメラ前で合図を出し、それを制した。
”オキナ”はこれ以上の犠牲者を出させまいとしたのだろう。
その後”オキナ”が目印を付けたその青年を”奏組”は監視したが、これと言った成果は無かった。
彼はスパイでは無かった。
そして、
蜂には女王蜂がいる。
ひかり苔にも女王がいた。
キリがない殺戮現場、そして女王の登場。
流石にお手上げだと判断した”オキナ”は緊急通路へ3人を放り込み女王と向かいあった。

オキナ:「女王。どうしてもあなたと争わなければならないですか?」

女王:「当たり前だ。この血に染まった”地”を見よ。これをもたらした発端は”君たち”だ!」

”オキナ”は医者が本業だ。
機転は効くが、武器という武器は持たない。
持つのは、救護セットと緊急用メスぐらいだ。
”オキナ”はこの”α”地で一生を終えた。
ひかり苔に囚われた青年のせいでね。

ME(男):「水龍の傷を治したほどの人が‥。惜しい‥。”アイツラ”に囚われすぎるからだ!”アイツラ”は”アイツラ”。僕らは僕ら。なのに!勿体無い人生だ!僕はそうならぬ!」

巡回員グリーン:「‥申し訳ない。その時の青年は今、ここにおります。世代を超えて誤り申し上げます‥。」

ME(男):「なんだとー!お前がその時の?!」

WO(女)がME(男)を抑え止める。

ME(男)は拳をギリギリと音がするぐらい握り締めた。目の前のこの男が憎いのか、力及ばず力尽きた”オキナ”を想っての事なのか‥いや、そのどちらでも無かった。彼が憎いのは、そう。”アイツラ”だった。

ME(男):「結局。僕も”オキナ”と同じ道を歩みそうです‥」

WO(女):「皆んなそう。”アイツラ”のせいよ。」

WO(女)はジッと自分の開いた手のひらを見る。手相をなぞる。

ME(男)は天を仰ぐ。

ふたりは決心した。

巡回員グリーン:「私はあなたの父と色んな話をしました。そう。スパイ容疑をかけられていたのもありますし。だから他の人よりもあなたの父”オキナ”の事は誰よりも知っているつもりです。あなたに言っておきます。
”オキナ”が見た水龍の渓谷。おそらくその場所はこの”グランドライン”のどこかに存在します。【聖水の壺】はおそらくそこにある。
私はそう思います。そこを目指してください。
そして、”ひかり苔の丘”。
もし通ることがあるなら見て欲しいものがあります。ここ”グランドライン”には樹木は生えない。しかし”ひかり苔の丘”に一本だけ生えている、不思議な樹木があります。私たちはその樹に名前をつけました。”ザ・ドクター”そう。あなたの父親が倒れた場所から育ちました。
”オキナ”の分身でしょう。」

巡回員グリーン:「それでは最後になります。いいですか?聖水があっても無くても、当初の決められた時間内にここへ戻ってきてください。私はここで待ちます。スパイが嗅ぎついたら大変ですから。」

ふたりは海モグラに続いて開放部へと入っていった。



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