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鈴を持つ者たちの音色  第四十三話 ”受容”

GA(我)とWA(輪)は”巡回員ゴールド”と”ME(男)を連れて”天空の壁”の中から出た。戻る時は真っ暗で、光の眩しさは無い。
もう少しあの”壁の中”を調べて見たかったが、今は急ぐ時だ。
ME(男)は水筒のコップに水を注ぐ。
その水を通してGA(我)とWA(輪)と巡回員ゴールドと一緒にテレポートした。
ME(男)はこれだけの大人数のテレポートははじめてだったが上手くいった。
今じゃ見慣れた”天路の頂”の景色がそこにあった。
大叔母:「ようこそ”天路の頂”へ。巡回員ゴールドも。元気そうね。ME(男)はさすがね。こうして”スズモノ”だけじゃなく、今まさに来て欲しい”巡回員ゴールド”を呼んでくれた。ベストタイミングよ。」

ME(男):「いやぁ。たまたまでした。大叔母は既に知っているのですか?”巡回員ゴールド”と”リング”の関係性は?」

大叔母:「ああ。知っている。よし、それでは早速始めるぞ。ME(男)はGA(我)とWA(輪)に巨門を動かす”同調”を教えてやってくれ。巡回員ゴールドは私と来てくれ。」

大叔母は巡回員ゴールドを”もてなしの部屋”へ呼んだ。大抵誰にも聞かれたく無い話をする時はこの部屋を使った。

大叔母:「それで。”丸魂”は本当にあったのか?」

巡回員ゴールド:「はい。予想通りでした。私が見つけました。」

大叔母:「うむ。”丸魂”で最後まで見たか?」

巡回員ゴールド:「はい。見てしまいました。」

巡回員ゴールドは冷や汗をかく。
汗が首筋に垂れる。

大叔母:「他に見た者は?」

巡回員ゴールド:「はい。WA(輪)が見てしまいました。理解しているようには見えませんでした。」

大叔母:「そうかい。みたもんはしょうがないね。」

巡回員ゴールド:「マスター。あの”丸魂”とは一体何なのでしょう?何故あんなのが、あの場所へ隠すように”閉じ込め”られていたのでしょうか?」

大叔母:「‥あれは‥大獣の目玉よ。そして目玉には大獣の見た記憶が、そのまま取り残されてしまった。大獣は死ぬ直前に自分の存在意義をあの”目玉”に託したのだ。そして、”証拠”となる”目玉”はあの場所へと隠された。人類が失望する結果を知られないように”天空の壁”の中へしまい込んだのだ。”天空の壁”の中に入ると飛び込んでくる眩しい光は全て”丸魂”が発した記憶の”光”だ。
”グランドライン”は大獣の棲家だった。そこに踏み入ってきたのが人類だ。
はじまり〜終わりは大獣の命の歴史でもあった。人類の歴史よりも長い歴史がここ”グランドライン”にはあったのだ。」

巡回員ゴールド:「深いなぁ。この海底ぐらい深い話です。じゃあ頭を整理します。
なぜ”グランドライン”が滅んだのに、その”丸魂”をわざわざ過去のあの場所”天空の壁”へ移動する必要があったのですか?」

大叔母:「それを悪用する”アイツラ”がいるからじゃ。想像してみぃ。”丸魂”がもし”アイツラ”の手に渡ったとしたら‥」

巡回員ゴールド:「今、この時点で”スズモノ”もキックスコーポレーションのメカニックの発展も無くなっていた‥?」

大叔母:「ふふふ。やるねぇ。ゴールドさん。頭も金色に輝くほどキレるゴールドさん。だから私はあなたを来世へ連れていく程、信用しているのですよ。。
そう。私のように過去〜現代〜来世へと移動できるのは、もはや私だけではなくなった。
”アイツラ”も移動手段を得てしまった今、私は過去から来世までを”アイツラ”にいじられないように監視もしなくてはいけない。
この”丸魂”もそのひとつ。
もし”丸魂”を悪用されたら、ここにいる”グランドライン”の民は生きる活力も強くなる努力も、きっとしなくなっていた。
人の弱みは気力の弱みだからねぇ。
だから、皆を活気付ける”スズモノ”のような存在が必要なのだ。」

巡回員ゴールド:「そうですか。何となくそんな気もしていました。今ではWA(輪)の心境が気になるところですが。
このままだと、”リング”も彼女の前に現れる。
ますます精神がぶれる時かもしれない。」

大叔母:「あの親子の宿命は”心の強さ”。それは生まれ持ったもの。この機会もまた運命。私はあの親子の強さをこの目で確かめたいと思います。」

GA(我)とWA(輪)が巨門を”同調”しあげた時、ME(男)の目の前に”リング”が現れた。
ME(男)は笛を鳴らすように皆の頭の中に信号を送った。”リング現れたり”と。
今度は大叔母が皆に信号を送る。”皆巨門前に集まれ”と。。

巨門前に”スズモノ”が集まった。
巨門を閉める。

GO(豪)、ME(男)、WO(女)、GA(我)、GQ(自給)、海モグラ、そしてWA(輪)、BOO(武)。
その他に、大叔母、RI(凛)、GE(ゲン)、巡回員ブルー、巡回員ゴールドがいる。

大叔母:「さぁ。来るぞ。身構えよ。目の前で見る良い機会じゃ。」

皆の目の前に剥き出しの片腕が頂の地を最後の一手でしがみつく。と、同時に皆の目の前に”リング”の姿がそれぞれに現れ同じく獣の右爪で襲いかかってきた。

・GO(豪)はカウンターでそれより速い動作で斬りつけた。左右に真っ二つだ。
・ME(男)は”トオシ”能力で瞬時に物体を把握し難なく攻撃を交わした。
・WO(女)は”同調”返しで、同じ”リング”の物体を擬態化しそれを盾に”同じもの”彼の右爪で襲い返した。
・GA(我)は袈裟で防御
・GQ(自給)は”リング”の振りかざした右爪よりも速く鍬を”リング”の左足に打ち付け、足留め。
・海モグラは…
・GE(ゲン)は攻撃を避け咄嗟に巡回員ゴールドの目の前に飛んで右爪の攻撃を錆びた剣の柄の部分で弾き返す。
・RI(凛)と巡回員ブルーは”リング”攻撃を交わすどころか周りの”スズモノ”達、各々の反応を観察していた。
・大叔母は身動きせず、一喝で”リング”の姿を消し飛ばした。

そんな中、瞬時で反応した2人がいた。
WA(輪)とBOO(武)だ。
2人は”リング”の攻撃が実体ではなく”影”のものだと直ぐに気付いた。”影”の攻撃には相手もせずに本体へ攻撃を仕掛けた。
”リング”はまだ頂に登りきっていない。片腕が最後の一手の、力込んだ所へ2人の攻撃が届く。
WA(輪)の気動砲が打ち出された。それは”リング”の片腕を弾き、頂から落とす絶妙なタイミングだった。とほぼ同時にBOO(武)の極蹴りの勢いから生み出された風切の刃もそれに続く。
”リング”の片腕は一度「ボンッ」という音と共に筋肉隆々とサイズアップし片腕で一度身体を跳ね上げて浮かせたかと思うとそのまま気動砲を跳ね返し、再度片腕は身体を支える為に着地した。そしてそのタイミングで風切の刃の刃元が”リング”の手首辺りに突き刺さった。
鈍い音がした。
皆その鈍い音を聞いて、その刺さった者が本体に間違いないことに改めて気付いた。
一瞬”腕”は静止した。その静止した数秒で何かの異変に気付く。なかなか”リング”の身体は頂上に上がってこない。
「?」
WA(輪)とBOO(武)が恐る恐る”リング”の腕に近寄る。
見ると、”海モグラ”の腕2本が岩山から崖に突き出し”リング”の身体に抱きつくように頂上すんでのところで”リング”を固縛していた。”リング”はあともう一歩の所で頂上に上がれなかった。

大叔母:「ここへひとりで乗り込むなんて無謀にも程があるわね。あなたの性格はお見通しよ。”闘いのフリ”はもうよしましょう。巡回員ブルー、海モグラよ彼を引き上げなさい。」

”リング”はようやく姿を頂上に現した。右手にはまだ風切りの刃が刺さっている。

”リング”:「いやぁ。まいったなぁ。こんな面子揃いでも僕なら何とかなると思ったんだけどなぁ。(頭をかいてにやけて言う)いやぁいやぁ。この”風切りの刃”もお見事。見てくれ。(右手首の突き刺さった刃を指差す)
普通ならここまで原型を留めていない。対象物に当たったりダメージを与えると大抵は物体化は解けて消える。しかし、BOO(武)の放った”風切りの刃”は未だこうして僕に突き刺さったままだ。ほらまだ、血が垂れてくる。
(”リング”は右手を挙げて拳を握り直す。「ガシャリ」と風切の刃は砕け散った。)

これは能力が高い技を意味する。
成長したな。BOO(武)よ。
それに比べてWA(輪)の気動砲。あれは何だ?
あんなのボールを投げて当てるドッジボールとおんなじだぞ。ただ投げれば良いってわけじゃない。コントロールは良かった。しかし、”気”をもっと瞬時に集めないと!力が全くない。跳ね返しても腕に痺れもない。あれじゃダメだ。俺にやられる。今日は仲間に助けられたな。」

大叔母:「今ここに皆を集めたのには訳がある。皆よ、この顔をよく覚えておきなさい。この者の名前は”リング”。
古い言葉を借りれば”魔法使い”じゃ。
よって何をしでかすかわからない。さっきみたいにね。
道化もする。今も何を考えているのか?
言葉を発しても鵜呑みにはしてはいけない。
そして更にややこしいのが2つある。
1つ、彼は二重人格者である。簡単に言うと”善”の顔と”悪”の顔じゃ。”悪”の顔は”アイツラ”に作られた。今はどちらの顔か?はわからない。しかし、”悪”の顔を出したとき、その時は”アイツラ”と同じじゃ。私たちを”敵”と見る。
さっきも頂上に上がるまで、彼は”悪”の顔じゃった。それを”海モグラ”が制した。”海モグラ”がどうやって制したか?は今はまだ私もわからない。しかし、”海モグラ”はできるようじゃな。”裏”を”表”に変える方法を。

2つ、彼は私と同じ。現在と来世を行き来できるようじゃ。私は過去へも行けるが、彼は過去へ行けるか?はわからない。おそらく行ける。と思った方が話は早いかな。
以上じゃ。
こんな紛らわしい面倒なヤツがこうして、ここへいる。
気をつけるんだ。」

大叔母:「巡回員ブルー、ゴールド。彼を大広間へ連れてきなさい。色々と聞き取ることがあります。他の者は稽古に戻りましょう。
時間は限られる。
櫓稽古の終わった者は私の所へ来なさい。
次の稽古内容を説明します。」

【大広間】

大叔母:「”リング”‥あなたが今日やってきたのには訳がある。そうでしょ?」

”リング”:「…」

巡回員ゴールド:「急に大人しくなったなぁ。さっきの勢いはどこいった?それに何だ?あの登場の仕方は?わざわざクライミングしてきて。”天路の頂”を登ってきたなんてお前ぐらいだぞ。わざわざ来なくたってこっちから行くわい。」

巡回員ブルー:「自らここへきた‥という事は”覚悟を決めてきた”‥そうだろ。」

”リング”:「‥大獣を切り離しにきた。
もうじき”スズモノ”がそろう。その時大戦がはじまる。そうなれば私もどうなるか分からない。
その前にやることがある。後悔しない為に。
だから来た。」

大叔母:「あなたにも信念や後悔って気持ちがあるのね?
(大叔母は女中を呼びBOO(武)を大広間へ呼ぶように伝えた)」

巡回員ゴールド:「‥それだけじゃないな?‥何を思い詰めている?俺から言わせればこれからどこから遠い所へ行く。もう娘にも会えない。だから最後に会っておきたい…そんな気配を感じるぞ。」

”リング”:「‥ったく‥もー。‥何なんだよーおまえー。ほんっと。昔からそーだよなぁ。
何でわかるのさぁー。」

巡回員ゴールド:「わかるさぁ。うちらが1番楽しくて輝いていた時はクライミングしているときだ。今のお前は何だかあの時が忘れられない。だから、あの時に戻るんだ。みたいな顔していたからさー。」

巡回員ゴールド:「お前。今の宙ぶらりんとした自分の立場がもう嫌になったんだろ。うちらの味方でもない。かと言って、”アイツラ”側でも無い。道化でその場を誤魔化しても心の中は虚しさと満たされない甘えと、どうにもならないもどかしさがある。」

”リング”:「お前のいうとおりだ。人のために全力を尽くしたい。と思うし、こんな俺を殺人鬼だ、残酷鬼だと言う人間を滅ぼしたいとの気持ちもあったり、俺なんかいなくてもこの”グランドライン”なんて何も変わらないだろ。とも思う。
でもやり残した事があるのだけは確かだ。最後にそれだけは気持ちがはっきりしていた。」

BOO(武):「大叔母。呼びましたか?」

大叔母:「あぁ。まぁまぁ。そこに座りなさい。」

巡回員ブルー:「BOO(武)はその左腕に付けている腕輪はいつから付けているの?」

BOO(武):「ええ?わかりません。意識してませんが昔、外そうとした時がありました。
そしたら何だか気分が悪くなって、それから腕輪を外そうとは思わなくなったので、そのまま付けてます。」

巡回員ブルー:「その腕輪の事は何も聞いていないの?」

BOO(武):「何かありました?」

大叔母:「BOO(武)。よく聞きなさい。大事な事よ。
お前の中には大獣が潜んでいる。それは性格の事を言ってるんじゃないの。
本当の大獣。昔ねここ”グランドライン”はその大獣に壊されかけた事があったの。それはそれは強い大獣でね、誰も敵う者はいなかった。
そこで生き残っている民は考えた。どうしたらこの”グランドライン”を救えるか?と。
その時に唯一の策がある事に気付いたの。
大獣と闘う事は出来ないが、”容器”には移す事ができる。とね。
しかし、その”容器”には条件があった。厳しい条件がね‥
それが、生まれたての赤ん坊になら大獣を移せる。という条件だった。
ここにいる”リング”の子供もちょうどその頃生まれていたが、3か月経っていた。よって候補からは外れた。それが、WA(輪)だ。
そして、その後君が生まれた。もはや”グランドライン”を救えるのは君、BOO(武)1人しかいなかった。君に”グランドライン”の運命は託されたのだ。君の母親は君を救おうと人目がつかない場所を探して逃げたが、お腹が大きく産気づいてしまった。君を産んですぐに体力の限界で亡くなってしまった。
君は薄々気付いていたのではないかい?
自分の中にいる大獣の存在を。」

BOO(武)は奥歯を強く噛み、涙を我慢していたが抑えきれずに涙は溢れた。一度溢れた涙は止まらない。少し落ち着いてから話しだす。

BOO(武):「夢をみました。度々同じ夢を。荒野を走り、月夜に峠の高い場所で仲間に遠吠えする夢を。悪い感じはなく、むしろ気持ちが良かった。自分がこの場所の王になったような気持ちで。まさかね。その夢は大獣の記憶なのね。
家族もいたわ。2匹の双子の男の子。母親は何者かに殺されたわ。人間よ。その時に怒りを人間にぶつけて沢山殺してしまった。」

”リング”:「2匹の双子の大獣‥?(大叔母と”リング”の目が合う)」

大叔母:「BOO(武)よ。これからその大獣をあなたから切り離す。良いか?」

BOO(武):「切り離す?さっきは私の中に”入っている”と言い、今度は”切り離す”と言う。一体あなた達!これはどう言う事?めちゃくちゃじゃない?私の身体はひとつ。あなた達の身体ではない!この腕輪は何?」

”リング”:「その腕輪が君を制御している。もし外せば君は大獣に変身する。その腕輪はここにいる大叔母が君の為に造ったものだ。その腕輪があるから君はここ”グランドライン”で皆んなと一緒に生活できている。」

BOO(武):「…うー、うー!こんな腕輪!こんな腕輪なんかなくても私はワタシよ!」

BOO(武)は自分で腕輪を外してしまった‥

腕輪はコロンとBOO(武)の足元に転がる。

”ゴゴゴゴゴゴ”(地鳴りが徐々に大きくなる)

BOO(武)の身体はみるみる大きくなり大広間の天井を突き破る。
大獣ウルフは久しぶりの巨大化で背伸びするように口から奇声と瞬時に叫び玉を発射した。巡回員ブルーが被害が最小限になるように玉を弾き軌道を変えたが、巨門とその一角が吹き飛んでしまった。強烈な地響きが”天路の頂”に染み渡る。大叔母が耐えきれずに大獣ウルフの足の毛を鷲掴みにし、テレポートをかける。その瞬間に”リング”と巡回員ゴールドも乗じた。







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