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鈴を持つ物たちの音色  第十三話 【剣士の男③】

剣士の砦では、度々闘いのイベントが行われる。血が騒ぐのか。剣士という闘いの種族だからこそ闘いは避けられないのか。この日の闘いは前回からまだ2ヶ月と経っていない。傷が癒えていない者も、飢えたように涎を垂らしてこの闘いの日を待っているのだ。
勝者にもたらされる高価な武器や盾や鎧や道具は剣士にとっては、オマケのような物。
剣士が心から欲する物、それは闘いの瞬間なのである。

大男ガイム:「おーい!Gよ。ちゃんと勝って、うちら【伝奏の砦】に”レジスタンス”を貢いでくれいっ。頼むぞー。」

モリオ:「こっちはジェシーを応援だぁ。ジェシー!うちら【大願の砦】へ勝利の美酒を!グッドラック。願の念を唱えよ。」
(大願の砦の者はいつでもどこでも祈る。肩を組み合い、皆んなで声を合わせて、体を揺らして念を唱える。)

ガイムもモリオも砦は別だ。
しかし、ここには垣根を飛び越した友情がある。
この闘いの日も同じだ。
砦同士の闘いの時間だが、憎み合わずに素直に個の砦種族を応援する。
まるで、野球の試合を見守る御老人のようだ。

「それでは闘いをはじめます。闘いの戦士を紹介します。まずは、
【士魂の砦】代表:ジンダラボッチ(髪型に特徴があり、側面を剃り上げ、その残りを長い髪でひとつに結ってある。目はギョロ目で鼻は高く、パンツの膝に膝プロテクター。腕には腕エルボー。肩と胸にもプロテクターをしている。早く新しいプロテクターが欲しくて参加した。)
続いては、
【大願の砦】代表:ジェシー(背が高く髪が腰まである美人剣士。長く重い剣を細い腕で振り回す。いつも景品には興味がない。闘う喜びをスリルに味わっている。)
そしてー、
”積み木の丘”での闘いは天晴れ大活躍ー。
【伝奏の砦】代表:剣士Gー!

一同:「おおー。(どよめく)」

この3人で行われる、3人同時バトルではじまります。時間制限1時間。
ルールは簡単。
この舞台から落ちてしまうか、3回ノックダウンされるか、気絶するか、自ら降参するか、になります。
銃やミサイルなどの飛び兵器は原則禁止。使えば退場。半年間の闘技場の出入りも禁止となります。
「それでは、はじめっ!」

闘いははじまった。
先制攻撃でジンダラボッチが剣士Gへ奇声をあげて剣を振り上げ飛びかかる。
剣士Gはそれをヒラリと交わす。
その交わしたタイミングを見計らって次はジェシーが剣士Gを蹴り上げにくる。
それも剣士Gはヒラリと交わす。
今度は剣士Gがジェシーの胸ぐらを掴み背負い投げて空中へ放った。
ジェシーは空中で身体を上手く捻り、片手で地面を押し跳ね両足で着地する。
そのタイミングを容赦なくジンダラボッチがジェシーを斬りつけにくる。
ジェシーは長い剣を半分鞘から出し、その攻撃を剣で受け弾く。。
3人の攻防は目が離せない。
次々と攻撃は間髪入れず、誰かしらに入ってくる。

ジェシーは身長が高いが俊敏だ。
ヒラリと攻撃を交わすたびに長い髪が身体を移動したその空間を追っていく。美しい動きだ。まるで芸術作品を見ているかのようだ。
髪は乱れるが、動きが止まると綺麗にその髪は背中にまとまる。まるで髪にも意思があるように観客からは見えた。ひと動作ひと動作をジェシーは舞い踊るかのように空間を暴れると観客はその身のこなしに見惚れてうっとり見入るのだった。

ジンダラボッチの攻撃は野生的で疲れ知らず。
動きひとつひとつに無駄はあるが、正確に急所を狙い続ける。決め技は『電気クラゲ』だ。
剣を振るたびに、身体のどこかへ剣を擦り付け静電気を集める。仕舞いには自分自身の身体から出る電流をその剣に乗せる。その電気付きの一振りを食らったら、しばらくは動けない。
相手の動きを一時的に静止する技だ。

そして剣士G。
剣士Gの闘いぶりは、このふたりとは対照的だ。
動きという動きは無い。
どうしても動く必要がある時だけ動く。といった感じだ。
それは動線を最小限にし、体力を使わず、決める一瞬だけを狙っているかのようだ。
時には目を瞑る。
その方が相手の動きを読みやすいからだ。
剣士Gの一刀は空間を切り込む事ができた。
『空間斬り』と剣士たちは名前をつけた。
空間を斬ることで相手の間合いを自分の間合いに呼び込むことができる。それだけじゃない。
『空間斬り』は相手に言わせると、刃物が突然何も無い所から飛び出てきたように見える。という。
剣士Gと距離を取り離れていても突如、目の前に風刃のように斬り風が襲ってくるというのだ。

観衆はそれぞれの決め技を一目見ようと一瞬一瞬の攻防から目を離せない。

乱打戦が続く。
ジェシーはひとりで、
ジンダラボッチと剣士Gへ両者同時に攻め入る。
右脚でジンダラボッチへ蹴り出した、と思ったら同時に剣士Gへ右肘を上半身の回転を加えて打ち込む。ジンダラボッチも剣士Gもそれを受け止めたが、あまりの力強さに受け止めきれずに弾き飛ばされた。
30分が経過した。
3人とも体力はまだまだある。
ジンダラボッチが特殊な剣を背中から抜いた。
決着をつけにきた。とみた。
その剣を身体に擦り付ける。
腕から腋。腿から脛へも。
ジンダラボッチの毛が逆立つ。
ジンダラボッチの剣は幅が広く団扇を縦に引き伸ばしたような形をしていた。
「くるっ。」
剣士Gに飛びかかる。
剣士Gも剣を鞘から抜いた。
ジェシーも清潔な白い肌に巻いている皮の鞘唐長い大きな剣を抜き出して身構えた。
観客は見逃さないぞ、と息を呑む。

剣士Gとジンダラボッチの剣がぶつかり合う。
ジンダラボッチの静電気の影響か、共鳴音が高い音でコロッセウムに響いた。「キョイーン!」
コロッセウムのステージを照らす灯りもチラチラと回線が飛ぶ。
剣がぶつかり合う付近の観客は髪を逆立させ、バチリと熱い白光りを浴びる。少々焦げ臭い。
髪かまつ毛が焼けたのだろう。
司会者側の方へふたりが揉み合い移動していくと、司会者の持つマイクも共鳴し、雑音が鳴った。
「バッッ!」とジンダラボッチが隙を見て剣士Gから離れ、後ろへ飛び跳ね、間合いをとった。
「やるぞ」
観客も唾を飲み込む。ゴクリ。
その誰かの唾を飲み込む音のタイミングでジンダラボッチは【電気クラゲ】を放った。
と同時に剣士Gも負けじと空間を斬りつけた!
空間は斬りつけられ、2人の空間は斬られた分縮まった。
【電気クラゲ】は剣士Gの右頭横を空かし、振り切られた。そして、その波動だけが剣士Gの後方へ飛んでいく。
空間が縮んだタイミングで同時に剣士Gの剣はジンダラボッチの腹部を真っ二つに平行斬りした。
、、と思ったが、そこは剣士Gの人の良さ。
かろうじて寸止めをしていた。
刃先を腹部へ若干押し当てた血が、ジンダラボッチの素足を赤くさせた。左足の爪が赤いマニキュアを塗ったように見えなくともない。 
勝負はついた。と、もうひとつ。同時刻。
ジンダラボッチの【電気クラゲ】の波動は剣士Gが交わした後、そのまま剣士Gの後ろへいたジェシーへと向かっていた。
ジェシーは動じず、その波動を見極め、自らの長い剣を差し出し、グルグルと綿飴を巻きつけるように、その波動を剣に巻きつけた。
そしてそのまま剣士Gへ斬りつけてきた。
【電気クラゲ返し】だ。
剣士Gはジェシーの持つ、その巻きついた【電気クラゲ】の剣を、嗜むようにグリップ部から剣先までと一瞬のうちに、魚を捌くように真ん中から斬り分けた。【電気クラゲ】はパカンッと斬り落ちた。
剣士Gはそのまま斬り分けた勢いでジェシーの頭上へ跳ぶ。
剣を地面に釘刺すように持ち変える。そのままジェシーの真上から剣で、釘刺すように落ち迫ってくる。
突然のようにジェシーはそれを交わす。後退して避ける。剣士Gが地面に剣先を突き刺すと同時に、剣士Gへ斬りつける段取りで狙いを定める。
剣士Gが落下し、剣は地面へ何ともなく突き刺さった。
ジェシーがこれぞ、とばかりに斬りつけてきた。
「ビリ、ビリ、ビリ、ビリー、、!!」
ジェシーは感電した。。

剣士Gが地面へ剣を突き刺したと同時に、斬り分けた【電気クラゲ】が剣士Gの剣へ集まり、電気クラゲの矛柱となったところにジェシーが接触し感電させた。という。
この一瞬、数秒の間に剣士Gは落下しながら空間斬りをしていたのだった。剣士Gの剣にはジンダラボッチの腹から電気を移し取っていた為に、斬り分けた分の【電気クラゲ】も呼び寄せたのだった。
ジェシーは電気クラゲになった。。

強い静電気ぐらいだった為、ジェシーは何分か後には身体を動かすことができた。
触れただけでこの威力。これで斬りつけられたら傷口はなかなか治らないだろう。なかなかの技だが相手にも利用される所が良くない。
剣士Gはジンダラボッチに教えてやった。

こうして最強防具”レジスタンス”は【伝奏の砦】が手に入れた。
”コロッセウム”での闘いでは勝者になった側の砦、全員に報酬品が配られる。
【伝奏の砦】の者はみんな”レジスタンス”を手に入れたのだ。
強い剣士がいる砦は、こうしてどんどん強くなっていく。若い剣士にも良い刺激になるのだった。

剣士の者が集まるこの場所は”ソールドチャイルド”と言う。
自然と強さを生む環境である。


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