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鈴を持つ者たちの音色  第三十話 ”同調②”

WO(女):「こんな場所に屋敷があるなんて誰が想像するのよ。」

ME(男):「誰にも見つからない場所‥って感じだな。」

WO(女):「この奥にはどんな人が住んでいるんだろう?」

屋敷の扉は引き戸で通常の大きさだった。
引き戸を引こうと手を伸ばすと勝手に開いた。
僕らが入ろうとしているのを察して裏側から2人の女助が開けてくれた。随分とここは親切だ。
なぜ入り口の巨門だけが高く大きく分厚くなっているのか全く意味が分からない。

広い玄関を靴を脱いで上がると襖の部屋が何部屋も何部屋も続いた。同じような襖の部屋。
正面の襖を開ける。
右側の襖の部屋を開ける。
正面の襖の部屋を開ける。

RI(凛)は慣れたように迷いもなくどんどん襖を開けていく。
襖は部屋の正面と左右にある。
どれも同じ柄の襖である。反対側の襖を開けるとどこへ行くのだろう?
まるで迷路のような襖部屋の最後の襖に滝が湖へ落ちる絵が描かれているものがあった。
どこかで見た事があるような滝の絵。
その滝は一塊の雲の上から湖へ流れ落ちていた。

RI(凛):「この襖を開けると大叔母がいらっしゃいます。」

滝の襖を開ける。
目の前には厚みのある赤い座布団に座った年齢はわからないが老け込んだ老婆が居た。
皺は深く腰が曲がり痩せている。厚みのある座布団がより、厚さを目立たせ存在している。
大叔母は曲がった腰をシャンと伸ばし丸い眼鏡を上げながらこちらをまじまじと見つめてきた。

WO(女):「(目がきれい。力がある。年齢はかなりいってるように見えるけど、何なの。この生気に満ちたオーラは。)」

ME(男):「(大叔母といった?なんだこの年寄りとは思えない気迫は。僕には、体のまわりを守るように青白い放射体が発しているのが”トオシ”でわかる。)」

大叔母(J):「RI(凛)よ。彼らを連れてきてありがと。いつも助かるわ。
(WO(女)とME(男)の方に向き直す)
初めまして。
私は大叔母と言います。
あなた達はこの”グランドライン”に選ばれてここへきました。
あなた達は選ばれし者なのです。
いいですか。よく聞きなさい。
あなた達は”鈴を持つ者たち”
略して”スズモノ”です。
じき、ここにあなた達以外の”スズモノ”も集まる事になってるわ。
あなた達が1番乗り。
なぜあなた達が1番乗りでここへ来たか分かる?」

ME(男):「わかりません。僕らは【聖水の壺】を探していました。【聖水の壺】を探していて、こちらに、”とばされた”という事は、こちらに【聖水の壺】がある。という事じゃないですか?」

大叔母(J):「…。」

WO(女):「だんまり。という事はあるんですね?ここに【聖水の壺】が。」

大叔母(J):「【聖水の壺】の事はしばらく忘れなさい。それよりも今は優先すべき事があるのです。あなた達には、先ず”力”をつけてもらいます。今のままでは”アイツラ”に”逆同調”されてしまう。それをされない為にしっかりと”力”の使い方を覚えるのです。」

WO(女):「”力”の使い方?私たちに一体どんな”力”がつくというの?さっぱり想像できない。そしてあなたが私たちにご指導してくださるの?その年齢で大丈夫?」

大叔母(J):「失礼な娘ねぇ。”力”をつける指導はこのRI(凛)にまかせます。私が教える方はまた、少し方向性が違うもんでねぇ。”その時”がきたら今度は私が指導します。
”力”についてはRI(凛)。あなたから説明してもらえるかしら。」

RI(凛):「”力”とは、その能力別に何が特性として強く現れるかは実際やってみないと分からない。未知なのだ。
その中でも私を例えに、分かりやすく大別するなら、
・重力を操る(浮いて素早く動ける、壁を自在に走れる、重いものを軽々と持てる)
・テレポートできる
などです。
基本的に私が”力”のつけ方を教え、大叔母は
・”迷い”という病気の治し方
・感情の抑え方
・グランドラインの歴史
・海図の読み取り方を覚え、地上を取り返す方法
を教える事になる。」

WO(女)は口笛で答えた。

ME(男):「”鈴を持つ者たち”について教えて欲しい。」

RI(凛):「”スズモノ”についてはお前たちは会っている人間だ。”α”地帯の巡回任務があるだろ?その仲間達だ。中には会っていない”もの”もいるが。お前たちを除いて皆”α”地帯をクリアーしている。
そしてお前たちにもやろう。
これが任務を完了した時にもらう”鈴”だ。
お前たちは”グリーン”だ。」

ふたり:「おおー。きれい!(チリンチリンと鳴らし早速首に掛ける)」

ME(男):「ん?‥これ。確か”海モグラ”も付けていた気がする。確か‥」

WO(女):「イエローよ!」

ME(男):「そう。イエローだ。彼はイエローの鈴を付けていた。もしかして、”海モグ”も”スズモノ”??」

WO(女):「ええー。まじか!あんなんで、すげえなぁ。どんな”力”持ってるんだろ?すげぇの隠しているんだなぁ。きっと‥」

RI(凛):「…ああ、いや。‥彼はちょっと、違うんですけどねぇ。‥まぁ、そこんとこはそのうち分かるっていうことで。」

大叔母(J):「いいかい?この”グランドライン”には段々と時間が無い。出来るだけ早く”力”を学び、君たちが”力”をつけたら、今度はWO(女)とME(男)とRI(凛)で各地に”とんで”残りの”スズモノ”をここへ連れてくるのです。
ここへ来た”スズモノ”は皆ここで”力”を学び、そして”アイツラ”との闘いははじまる。
この何百年挑めなかった”アイツラ”との闘いをようやく始める事ができるのじゃ。そして”アイツラ”との闘いは再度人類が地上への生活を取り戻すきっかけとなるのだ。」

RI(凛):「それではおふたりの部屋を案内します。男女は棟が分かれます。おふたりはここでしばらく暮らすことになります。
”スズモノ”に”力”を教えるまで泊まりますから、腹を括って下さい。部屋に入ったら道着が置いてあります。それに着替えてまた、ここへ集合してください。

ふたり:「わかりました。」

道着に着替えたふたりがやってくる。

ME(男):「なんで今更道着なんですか?」

WO(女):「動きやすいからじゃない?見て。ホイっ。ホイっ。すごく動きやすいよ。」

RI(凛):「ふふ。トレーニングときたら道着でしょ?と、まぁカタチから入るんだけど、本当の意味を教えよう。
場所を移動します。」

一同は、大叔母(J)のいる部屋を出て滝と湖の描かれた襖の左側の襖を開ける。
ひと部屋やり過ごし、その正面の部屋の襖を開けた。
真っ暗な部屋。
床もあるのかどうか分からない。
その部屋の中央にRI(凛)は移動する。
入り口から踏み止まるふたりの方を振り返り言う。

RI(凛):「そこから踏み出せば、”暗黒の谷”へと落ちるだろう。”暗黒の谷”はそれぞれの心の闇が敵となる。その闇に打ち勝つのだ。
もし心の闇に呑まれたら、この部屋には永遠に帰って来れない。
それが嫌なら今、足を踏み出すな。鈴を置いて勝手にここから去るといい。家で指を咥えて、この”グランドライン”が崩壊してゆく様を黙ってみているがいい。
あと、道着の件だが、この道義は特殊な素材でできており、暑い寒いどちらにも対応。衝撃にも強い。試してみるか?」

RI(凛)は素早い動きでME(男)のみぞおちに一拳衝撃を喰らわした。ME(男)は後ろへ何メートルか吹っ飛んだ。

ME(男):「いててて。ほんとだ。結構な衝撃だったのに、そんなでもない。すごいな。」

WO(女):「ちょっと待って。もしかして、私も道着を着るってことは、私もこんなパンチ喰らうこともあるってことなの?いやーん。お嫁にいけないー。(きゃーきゃー。)」

RI(凛):「それでは幸運を祈る。いいか。ちゃんと”手懐ける”を活用するように。巨門を開けた時のことを思い出せ。中途半端なら”逆同調”されるからな。気をつけろ。」

ふたりは腹をとっくに括っていた。
すぐに”暗黒の闇”の中へと身を投げた。

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