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【小説】ご注文はいかがなさいますか?(#たいらとショートショート)
「先にお飲み物お伺いしましょうか?」
「じゃあ……カシスオレンジ2つ」
「かしこまりました」
20歳になった記念にと、仕事帰りにやってきた居酒屋。
帰路にあるので知ってはいたが、実際に入るのは今日が初めてだった。
一緒にやってきたカエデは、飲み物を頼んだきり、ずっと下を向いてスマホをいじっている。
最近の彼女は常にそうだ。スマホも体の一部なんじゃないかと思えてくる。
「何見てるの?」
「
ドラレコとあおり運転と俺
最近、”あおり運転”の影響もあって、会社の車にドライブレコーダーが設置された。
前後に一つずつカメラが付いている。おまけに、運転技術が採点される機能付き。
毎日運転するたびに、誰かに見張られているようで緊張する。
今日も取引先を回るため、車に乗らなければならない。
乗車する前には、必ず点呼をする。
『お酒を飲んでいませんか?アルコールチェックお願いします。』
『薬を飲んでいませんか?』
『睡眠時
二重人格缶詰【ショートショートnote杯】
二重人格缶詰なるものを製薬会社が発売した。A缶、B缶とセット販売すると、ネーミングのインパクトからすぐに話題になった。慎重のA缶、大胆なB缶という相反するイメージが、二重人格缶詰という商品名になったようだ。
ただ、消費者は慎重だった。まず、価格が合わせて一万円と高額だ。第二に中身の形状がまた消費者を困惑させた。缶詰の蓋を開けると気体状のものが出てくる。それを浦島太郎の如く、吸う事でABそれぞれ
よみがえるドライバー
壊れたものを何でも「ドライバー」を使って直すことができる男がいた。
どこに頼んでも修理できなかったものがその男の手に渡ると元通りになるのだ。
そのため徐々に口コミで有名になり、その男の元へいろんな人がやって来るようになった。
そしてついにテレビの取材がやってきた。
「どうして誰も直せないものを、何でも簡単に直すことができるのですか?」
「それはね…実は私が使ってるこの特殊な『ドライバー』
その手を離さないで。
ヒロトシは僕の親友だ。
クラスの人気者だったヒロトシと、教室の隅で本ばかり読んでいた僕。なんで仲良くなったかは忘れたけど、毎朝ヒロトシは僕を迎えに来てくれた。
中学生になり、僕は陸上部に入った。足だけは速かったから何度か県大会で入賞した。
3年の体育祭。リレーでヒロトシとのアンカー勝負に勝った僕は一躍人気者になった。おかげで人並みに友達はできたけど、女の子の目を見て話せないのは相変わらずだっ
コイツを好きとかありえない。
#2000字のドラマ
「中村薫(なかむらかおる)って、女かと思った」
その言葉にカチンときてキレなかったのは褒めて欲しい。
初対面でそんなデリカシーのない発言をした堀綾香(ほりあやか)の印象は最悪だと思った。
そんな堀は自分が所属する天文部で唯一の女子であり、自分と同じ学年の部員だった。
男子しかいない天文部で女子の堀の入部は歓迎されたものの、堀は女子でありながらおしとやかの欠けらも