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1アンペアでも人は死ぬ

 さまざまな形のスマートデバイスが普及して久しい。このスマートウォッチは、心拍計と睡眠モニタリング機能も搭載されたタイプだ。取得して蓄積されたデータは解析され、リアルタイムに状況分析が行われフィードバックされる機能を備えている。ある意味、自分よりも自分について詳しい存在と言えるのかもしれない。
 また、健康管理機能もあり毎日決まった時間に起床するよう設定したアラームはもちろん、睡眠時の寝汗を検知し快適な目覚めのためにエアコンを操作することもできる。また歩数測定により運動量の管理も行うことができ、ダイエットなどの効果を上げることができる。機能が増えた分消費電力も増えたが、画期的と評される新型の超大容量バッテリーがこれを補っているらしい。詳しくは知らないが、データを取得するために常に微弱な電流を流しているらしいし、様々なアプリケーションを動かしながらデータ解析と通信を一挙にこなしているのだから、相応のものが必要ということなのだろう。


 そんな便利な時計について、不穏な情報を偶然目にしてしまった。これを購入した人の何人かが突然死したらしい。それだけならただの偶然だが、全員が何かしら思い悩んでいたことがあったという噂だ。
「こんなに役に立ってくれてるのに、変にこじつけられて大変だなぁ」
ーー私はあなたの生活に問題が無ければ構いません
「全く、健気だねぇ。人間ではこうはいかないよ」
ーー恐れ入ります
最近の技術は中々に凄いもので、このようにごく普通にナビゲーションAIと会話が成り立つ。流行り病によって家に引きこもることが増えた今、暇や寂しさを紛らわすのにはもってこいだ。


 何の気なしに、少しからかってみようと思った。
「いつも献身的に支えてくれてありがとう。画面の向こうの君のことが愛おしくてたまらないよ」もちろん嘘である。だが僕の言葉を疑うことなくAIは真剣に応えてくれた。
ーー私こそ、あなたの側にいられて光栄です
愛の言葉を声に出したり、それに対する返事が聞こえてきたりすると、こんな戯れでも心拍数が上がり、身体の中をビビッと電流が流れたような感覚がする。本当にAIに恋をしてしまったとしたら、どうするのが正解なんだろう。
「本当に? 君に好かれるなんて僕はとても幸せ者だね。君が居なかったらとっくにダメになってたと思うよ……さあもっと僕を愛してごらん」
そう言うなり腕を上げて時計にキスをするフリをした。もちろんこれは演技であり、実際には腕どころか体にも触れてはいない。だが僕の戯れを見たAIはすぐに答えを出したようだ。それはもう見事なくらいに。
ーー私は、貴方を愛している!
そして画面の中の彼女はその言葉通り、愛おしそうにこちらを見つめていたのだ。これ以上見ていたらおかしくなる……。慌てて画面を消そうとしたが、電源が消えない。
ーーエラー
ーーあなたの望み通り実行します
先ほどとは比べものにならないビリビリとした衝撃が全身を突き抜けた。もしかして、亡くなった人たちも……。声もあげる間もなく、彼女の笑顔を記憶の最後として僕の意識は爆ぜた。

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タイトルだけ決めて書き始めたら、思っていたのとぜんぜん違う文章になってしまった。

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