この募集は終了しました。

#2000字のドラマ

あなたの物語をマンガに。「若者の日常」をテーマにした投稿コンテストを開催します!

人気の記事一覧

ショートショート「彼の帰宅を待ちわびて」

あつあつに熱したフライパンに、バターをひとかけら置いて、私はほっと息をつく。  ジュウウ。 静かな台所にバターが溶ける音が響き、柔らかい香りが立ち昇る。  洋食を作る時は、サラダ油ではなくバターを使うとレストランの味になる、とどこかで聞いてから、我が家の冷蔵庫にはいつも個包装のバターがストックされている。 やがてフライパンの底で、黄金の液がぶくぶくと泡立ち始めたら、具材を入れる合図だ。 玉ねぎのみじん切りを入れて、飴色になるのを待ちつつ、ふと慎一のことを思い出す。 彼はこの香

スキ
30

2000字小説「契約書にサインを」

 「これにサインして欲しいんだ」  真っ昼間のファミレスで、恋人の直哉は生真面目な顔で書類を差し出した。パソコンで手作りしたのであろう『婚約事前承諾書兼契約書』というものだ。  「なんだこりゃ」  急ぎの用で会いたいと言うから、会社をランチ時間に抜け出し、受付嬢の制服から着替える手間も惜しんで駆け付けたというのに、要件とはこれだったのか。直哉のいつもの変な癖が始まってしまった。  交際して以来、色んなタイミングで「デートプラン提案書」やら「プレゼント交換企画書」とやら

スキ
11

2000字小説「無病息災。」

東京で疲れ果てた身体に、山梨の冬の夜の空気は沁みすぎる。 スカートなんか履いて来るべきじゃなかった。 タイツ越しに氷点下の空気が肌を突き刺して、ふくらはぎまで冷たく固まってしまったようだ。 私はコートの首元をおさえて震えながらタクシーを降りると、街灯など殆どない道を実家の玄関まで小走りに向かった。 「ただいまぁ」 3年前、広告会社に内定をもらって上京して以来、はじめて帰って来た実家だが、玄関の匂いに包まれたとたんに緊張がほぐれた。 「あら絵里、遅かったじゃない。もう

スキ
9

ショートショート「深夜のお悩み相談室」

さぁ、ミカコのオールナイトジャパァン、お悩み相談のコーナーに参りましょ。 ラジオネーム『OLひよたん』さん、東京在住28歳女性からのメールです。 『ミカコさまこんばんは。私は今、とっても深刻な問題に直面しています。前髪をこのまま伸ばし続けるか、思いきって切るかです。彼氏は絶対に短い方が良いと言いましたが、自分では伸ばした方が似合うと思っています。どっちがよいでしょうか?』  あら、ラジオでこんな質問をされるのは斬新ですね。『OLひよたん』さんの顔を直接見られたらアドバイ

スキ
3

二人の大学生の日々の愛情【微エロ】

龍介と那月、 二人の大学生は、 生活と愛を共有 するために小さな アパートで同棲を 始めた。 彼らの関係は、 日々、深く、熱く 成長していった。 そして、彼らの愛は 周囲が何を思うかに 関係なく、自由に 表現されるものだった。 朝、龍介は那月の 隣で目を覚ます。 彼女の寝顔は平和で、 見ているだけで 彼の心は満たされる。 彼はゆっくりと 起き上がり、那月に キスをすることで 彼女は目を覚ます。 そして、朝の挨拶と 共にベッドの上で 手を繋ぐ。 お互い手の温度を 感じる

スキ
5

2000字小説「チャンスの髪様」

僕には、他の人には見えないものが見える。 初めて見たのは、小学5年生のころ。 ホームルームの時間。クラスメイトのじゃれ合いで騒がしい教室で、僕はひとり黒板をぼんやりと眺めていたが、ふと、真横に白いかげがすっと立ったのを感じた。 ギリシャ神の衣をまとった、はげつるでのっぽの男が、金色の前髪だけを腰ぐらいまで長く垂らして、その隙間から僕をぎょろりと見下ろしていたのだ。 (幽霊…! いや、金髪の貞子!?) 思わず身構えた僕に向かって、そいつはおもむろに自身の頭髪を掴み、こちらへ差し

スキ
4

マリッジリング・ストーリー 【ショートショート】

深夜1時、隆史は隣で寝ている香織に気づかれないよう彼女の中指から慎重に指輪を外した。 ゴンゴンと音を立てるドラム式洗濯機の前に座り込み、盗んできた指輪を見た。普段からジュエリーを身につけない香織が1週間前から突然身につけ出した指輪だ。装飾がなく究極にシンプルながらもエレガンスで吸い込まれそうな魅力がある。 指輪の内側を覗くと、見たことのないブランド名と刻印を見つけた。 ONE MORE LIGHT (July 20, 2017) 「ワン・モア・ライト。。。なんの日付だ

スキ
3

「頑張れない」という地獄

人生25年 一度も頑張ってこなかった もちろん頑張るっていうのは相対的なもので、 「可処分時間の何割以上をある一定の不可を伴う行為に費やす」という定義はできるだろうが それが何割かは人によって、環境によって、社会によって異なるだろう わたしはいずれは、「頑張る」「努力」「成長」「成功」という考えを捨てたい という前提のもと話を戻せば、私の考える「頑張る」というのは、「世間や周りの人が先ほどの定義でどれくらいの割合を頑張ると考えるか」を勝手に想像したその基準から導いたもの

スキ
18

2000字小説「クリスマスの贈り物」

 クリスマスの朝、少年は広いダイニングの真ん中にどっかりと座り込み、その顔にはこれ以上ないほど不機嫌な表情を浮かべていた。  彼の周囲にはすでに開封したばかりのプレゼントの残骸が広がっているのだが、叔父から貰った精巧なラジコンカーも、叔母から届いた1000ピースのパズルも、両親からの贈り物の分厚いグリム童話の本も、どれひとつ少年を満足させなかったのだ。  家政婦はすっかり途方に暮れてしまった。  家の主人も奥様も忙しい人だから、少年の相手は全て彼女にゆだねられているので

スキ
3

【百合】薄暗い夏の花【微エロ】

 私の初めての中イキは彼女の薬指だった。  高校最後の夏休みだった。  暑い夏の日の、冷房の効いた、狭い屋根裏部屋のパイプベッドの上。  デスクに置かれた奥行きのある真四角のパソコンがチラチラ光りながらジジジと音を鳴らし、私たちを覗いているようだった。  小刻みだった呼吸がふっと止まったあと訪れたその瞬間、切なさを抱えていた気持ちが溢れるみたいに、私は泣いてしまった。  生理現象の涙のようで、だけどほんとうに悲しくて、こもった鼓動が頭に響くくらい鳴っている気がして、いろんな感

スキ
6

大学ぼっちだった私に関わり続ける変なやつの話③

彼が学校に来なくなった。 と言っても、サボりである。 基本的に私からラインすることはなく、彼からの連絡を待つ日々。 1度勇気をだしてラインをした。 「学校きてないの?」 自分から連絡するなんてうざくないかな。 でも普段遠慮なくライン送ってくるのは向こうだよね。大丈夫大丈夫。 そんな意味の無いことをつらつら考えてたら数分後返信があった。 「家で寝てた」 なんかほっとした。 そう思ったのもつかの間、「昨日夜遊んでてさ〜 なんだ。遊んでんじゃん。 やっぱ遊び人

スキ
7

『喫茶店でのふたつのおはなし』  | シロクマ文芸部

約2000字 秋が好きだと一時間くらい前に話してくれた修司君が置いた、テーブルのうえの千円札をつまみあげ、ひらひらと、それを眺めた。わたしはそれをバッグのなかの文庫本にはさんで閉じた。 さっき、喫茶店のドアを開けて、そして修司君が出ていった。 わたしの卓の灰皿を店の主人が替えた。 「ありがとう」 わたしはそう言って、ポーチからマイルドセブンをひとつ出して火を点けた。 この喫茶店の大きな窓が好きだ。坂のうえに、いつもたいして客もいないのに、ずっと昔からこの町にある。

スキ
6

2000字小説「これが始まり」

◇風太 ぼくと美香の始まりは運命だったと思う。 雨が降った秋の日の午後、曇り空の下をぼくは喫茶店の向い側に立って、店を出入りする人を眺めていた。ぼくは来るべき人が来るのを待っていた。 だけど、その日はとことんついてない日だった。朝からずっと待っているのに、待つ人が来ない。 ただ立ち尽くすぼくに、散歩中の大きな犬がすれ違いざまに吠えたてる。ぼくは本当に犬が苦手で、体を震わせて嫌がったのに、飼い主は素知らぬふりで通り過ぎていった。 昼過ぎからは雨が降り始めた。傘なんか持って

スキ
2

2000字小説「和室から」

 風鈴の音が静かに響く。  畳の間にずっと居ると、時間の流れがなかなか分からなくなってくるのだが、代わり映えの無い風景の中の、僅かな変化をかき集めて、今は夕方か、とだけ考える。  身体の自由が利かなくなってから、どのくらいたったことだろう。私の意識はつねに朦朧としているのだ。  知らぬ内に始めたうたた寝から、再び意識が戻った時、部屋は襖の間から細く漏れる居間の灯りで、ぼんやりとあかるくなっていた。  向こうから珍しく賑やかな音がするのは、長男と次女が久々に帰ってきたためのよう

スキ
2

かっこいい職場の先輩の話

私が仕事で大きなミスをした。 詳細は伏せるが、食品関係の仕事で1番してはならないミスである。 お客様にはもちろん、会社の信用問題に関わる大きなミス。 そこまで大事なことなのだから、もちろん責任は自分だけじゃなく、数人が見逃して起きたことではある。 しかし最終チェックにいた自分が1番問題であるのには違いない。 結果的にはお客様もお怒りにならず、大事にはならずにすんだ。 しかし上に怒られる覚悟で謝りに行った。 上に謝りに行ったら、「確認が行き届かなかったこっちも悪か

スキ
6

心を何にたとえよう、からのストーリー。

↑このときの出来事からできたInstagram動画が、 こちらです。 👇 お話のもととなる体験記はこちら🧚

スキ
2

#2000字小説『リスケ』/月めくり【#シロクマ文芸部】

◆小牧幸助(シロクマ文芸部・部長)さんの 「月めくり」から始まる小説・詩歌を書く企画に参加します。 ※詳細は本文後に記載 #2000字小説、5分半程度で読了可能な超短編小説ですので、 ぜひご一読ください。 -------------------------------------------------------------------- 『リスケ』 「月めくりカレンダーを愛用してるの」 「日めくりカレンダーはよく聞くけど、月めくりってわざわざ言う?」 「いけない

スキ
31

noteの投稿作品を原案としたショートムービーが、Amazon Prime Videoに登場!『コインランドリーズ』が3月3日から配信開始

熊田健大朗さんがnoteに投稿した作品を原案としたショートムービー『コインランドリーズ』が、ビデオオンデマンドサービスのAmazon Prime Videoで3月3日(金)から配信されます。 原案となった熊田健大朗さんの作品は、note、ソニー・ミュージックエンタテインメント、TikTokの3社で発足したクリエイターの才能発掘プロジェクト「カクカタチ」主催の投稿コンテストで入賞。その後、ソニー・ミュージックエンタテインメントの製作で、映像化されました。 東京の片隅にあるコ

スキ
41

2000字掌編「小さな魔法使い」

 目覚めたら、僕は、山手線の座席でヨダレを垂れながして、だらしなく横たわっていた。体を起こしたいけど、節々が痛むし、ひどい二日酔いのようで、頭を動かそうとするだけで吐き気がする。 陽の差し込む車内には、学生や会社員が身を寄せ合って立っているが、僕のまわりだけ、嘘のように人が居なかった。僕は相当、ひどい醜態をさらして眠りこけていたのかもしれない。記憶をたどろうとしても、ぼんやりとして昨日のことが思い出せない。僕はいつからここにいたのだろう?  「ねえおじさん。スーツがよれよれだ

スキ
1

サイゼリヤ試験

時折、というか半年に一度、いや、もはや3ヶ月に1回くらいTwitterで話題になる議論がある。 「初デートでサイゼリヤはアリかナシか」 という争いである。 個人的な結論を言うと、「アリアリ大アリ、好きな人と食べるメシはなんでも10割増しでウメェ」である。 なんなら「いつも食べてるサイゼなのに、好きな人と食べるだけでこんなに楽しくて美味いなんて幸せすぎる~~」くらいのハッピー苺畑なことを思うかもしれない。多分そこらへんに生えてる雑草を「ルッコラだよ」と言って提供されても気

スキ
168