ツノがある東館|ショートショート
私たちを部屋に案内する女将の頭には、どう見てもツノが生えていた。それも、鬼のように髪の毛に隠れてしまうタイプではなく、牡鹿並みの立派なツノ。
さっきから女将は天井が低い箇所を通るたびに、「頭上ご注意ください」と小声で注意を促し、自分は完璧な角度に体を曲げて通過しているが、こちらにはそんなツノはないので、屈むことなく廊下を歩いている。
私たちは女四人で風光明媚な温泉宿に来た。タクシーを降りて、受付で予約の確認をしたところまでは、良かった。
「本日のご宿泊は別館の東館でございま