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déjà vu|読書感想文

出会い

私があと1冊小説を借りようと棚を物色していた時、図書館には閉館10分前を知らせる「蛍の光」が流れていた。

タイトルが目に留まり、その本を手にした。
『夏の名残りの薔薇』恩田陸

時間もないし、これでいいやと、その本と残り数冊の本を手にカウンターへ向かった。

déjà vu

家に帰って、ゆっくり本を開いてみると、中扉にある文字を見て、衝撃を受けた。

引用文献 『去年マリエンバートで/不滅の女』アラン・ロブ=グリエ著 天沢退二郎・蓮實重彦訳(筑摩書房)

あぁ、だから私はこの本を手に取ったのか、とさえ思った。

アラン・ロブ=グリエ

私は学生時代、フランス文学専攻だった。
それほど勉強熱心ではなかった私が、文学の深淵を覗いてみたところで、文学は覗き返して来なかった。

けれども、ひとつだけ好きな作品に出会った。
アラン・ロブ=グリエの『ジン』である。不思議な作品だった。物語が円環構造をしていて、話の筋を一言では説明しにくい。小説という体裁をとりながら、フランス語学習者向けのテキストである点も興味深い。

私は『ジン』を卒業論文の題材にしようかと考えたが、結局ルソーを書いた。社会人になってから、何かの拍子に卒論の話になった際に、「卒論ではルソーを書いたの」と言いたいがための見栄を張った選択だった。

とにかく、『ジン』はそれくらい好きな作品だった。

『夏の名残りの薔薇』

私が卒業論文を書いてから数年後に、偶然手にしたその本は、ロブ=グリエの世界観を忠実に再現していた。

この作品にあらすじは存在しないと思う。
現実と虚構と、現実と虚構のいずれでもない記憶とが絡み合い、倒錯する。時間は流れず、ループを描き、読者はdéjà vuを経験する。

本当に好きな作品だ。気になった方は是非手に取ってみてほしい。

出会い(déjà vu)

図書館に閉館10分前を知らせる「蛍の光」が流れる中、私は小説をあと1冊借りようと棚を物色していた。

タイトルが目に留まり、その本を手にした。
『夏の名残りの薔薇』恩田陸

パラパラと本を開いてみると、中扉にある文字を見て、衝撃を受けた。

引用文献 『去年マリエンバートで/不滅の女』アラン・ロブ=グリエ著 天沢退二郎・蓮實重彦訳(筑摩書房)

あぁ、だから私はこの本を手に取ったのか、とさえ思った。

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