背後にご注意|ショートエッセイ
通勤電車を降りる。ここは朝夕以外には無人駅になるような小さな駅である。普段は同じ駅で降りる人はまばらだが、この日は降車する人がたくさん目についた。
改札に向かう人々の黒いカラスのようなスーツ姿を見て、あぁ、新入社員だ、と思い当たった。その前の週に、 新入社員たちとは一度だけ挨拶を交わしていた。研修会場に顔を出しただけの先輩社員の私に、新人たちは一様に緊張した面持ちで、礼をした。研修を担当する人事部の社員が二名、 その傍らに立っていた。大切な羊を守る牧羊