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隣町の花火を盗み見た|ショートエッセイ

8月31日。
夏の終わりですね。

8月31日と言えば、夏休みの終わり、というアイコン的な日付ですが、最近では2学期制やら、クーラー導入やら、脱ゆとりなんかで、8月2X日に始業式をおこなう学校も増えているとか。少しばかり、寂しい気もいたします。

暦の上ではもう秋ですが、残暑、と呼ばれるには強すぎる暑さにも、もう慣れたからでしょうか。天気予報の30度という数字に、涼しい、と感じてしまいます。

先日、隣町の花火大会を家の窓から盗み見ました。
夜ご飯を食べていると、遠くからどん、どんと低い唸りが聞こえてきて、ぱっと2階に駆け上がりました。

窓から見えたのは、満月よりもひと回りほど大きい花火でした。
そうだった、この部屋から花火見えるんだった。
久しぶりの感覚でした。そういえば花火大会の開催は3年ぶりだとか。

隣町の花火なので、音はだいぶ遅れてきて、連続するとどの音がどの花火のものだったのか、わからなくなります。
下の方で打ち上がるものは、木立に隠れて見えなくなる。見せ場の大輪の花火でも、手元の500円玉くらい。
それでも、電気を消した部屋で、ひとりでゆったりと花火を見る時間は、しっとりと心に沁みました。

あの花火の下には、たくさんの見物客がいる。何人かは浴衣かもしれない。
骨まで響く花火の音と、火薬の匂い。
そんなことを想像しながら、贅沢にも家の中から花火を鑑賞しました。

花火を見る。スイカを食べる。8月31日。
そうやって、夏のアイコンにひとつひとつ印をつけながら、季節の巡りを感じて生きているんだな、とぼんやり考えました。

そうやって書いている手元には、皮を剥いた梨がひと切れ。
もう、秋はすぐそこ。

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