マガジンのカバー画像

日中文化交流誌「和華」第18号 特集:職人の技

10
日本と中国の文化について紹介しています。 18号「職人の技」 漆器 磁器 銅器 紙 服飾 日中の職人 各地の伝統工芸品・歴史・技法・現代の新たなスタイルを丁寧にお伝えします。
運営しているクリエイター

記事一覧

日中の職人たち~中国の精緻な彫刻~

日中の職人たち~中国の精緻な彫刻~

文:『和華』編集部 写真提供:日中民間工芸科家友好促進会(株)

伝統を受け継いだ上で、日々新しい技術を模索している職人たち。ここでは技術を磨きながら様々な取り組みをしている日中の職人たちをご紹介する。

黄楊木彫り黄楊木彫りは浙江地区の伝統的な民間彫刻芸術の1つで、黄楊木を彫刻材料とし、清潔さと光沢、繊細なテクスチャ、典雅な色などの自然形態を活かして彫刻する。生き生きとした造形と人物を描くことで

もっとみる
中国漆器の世界

中国漆器の世界

文:『和華』編集部   写真提供:CTP

 そもそも漆器とは、器物の表面を生漆でコー ティングした日用品や工芸品などのことで ある。生漆で加工した器物は彩り鮮やかで、 摩耗に強く、腐食しにくい性質があり、千年 の環境の変化を経てもその美しさを失うこ とはない。漆工芸はアジア共通の文化要素 である。奈良、平安時代にかけて中国の炝金、 描金等の技術が導入され、日本の漆器にも また深い影響を残している

もっとみる
日本の代名詞 漆器-japan- 螺鈿(高岡漆器"伝統とスマホカバー"~"螺鈿ガラス"は国内外で大人気)

日本の代名詞 漆器-japan- 螺鈿(高岡漆器"伝統とスマホカバー"~"螺鈿ガラス"は国内外で大人気)

高岡漆器「青貝塗(螺鈿)」の技法

取材・文/高谷治美  写真提供/姚遠

高岡を有名な漆器産地として発展させてきた「青貝塗(螺鈿)」 技法。螺鈿が青貝ともいわれるのは、薄貝によって青い色調が 出せるようになったから。その卓越した技術とは……。

 高岡の螺鈿細工は、0.1mmという透けるほどの薄いアワビ 貝を使うのが特徴。直接下絵を貝に書き写し、細い針で切り抜き、切った螺鈿パーツを漆地や木

もっとみる
日本の代名詞 漆器-japan-職人の魂(輪島塗~製造法まで)

日本の代名詞 漆器-japan-職人の魂(輪島塗~製造法まで)

文/『 和華』編集部  協力/一後晴之(漆芸家)

漆工芸はアジア共通の文化で、漆の木は、中国、 日本、朝鮮半島、ベトナムなどに自生している。そ もそも漆器とは、器物の表面を漆でコーティング した日用品や工芸品などのことである。生漆で加 工した器物は彩り鮮やかで、摩耗に強く、腐食しに くい性質があり、千年の環境の変化を経てもその 美しさを失うことはない。英語の「china」が中国の 磁器を示すよ

もっとみる
日中、職人の技

日中、職人の技



▲写真:姚遠

職人がひとつひとつ手作業統工芸品。
そこには、長きに渡りその土地に受け継がれてきた技術と歴史が詰め込まれている。 熟練しないと生まれないだろう、研ぎ澄まされた理にかなった美。
ところが、日中両国にとって低価格競争による産地の疲弊、後継者不足、職人の高齢化は深刻だ。
とりわけ、日本は分業による微細な技や高度な技、危険をともなう技であっても見合わない報酬が問題。 それに対して、

もっとみる
"宣紙"千年の秘密(中国安徽省涇県)

"宣紙"千年の秘密(中国安徽省涇県)

文・写真:任長箴

宣紙とは
 宣紙とは、中国の古典書画に使用する紙である。唐代に涇県で生まれ たと言われており、既に1500年あまりの長い歴史を持つ。独特の紙質 はしなやかで艶をもち、墨の発色がよく、光沢はあるがつるつると上滑りはしない。経年劣化せず、変色もなく、寿命が長いことが特徴である ため、古くから「紙の中の王、千年寿紙」と褒め称えられてきた。宣紙の制作には1,000幾ばくの日夜を要し、1

もっとみる
ユネスコ無形文化遺産に登録された細川紙の歴史

ユネスコ無形文化遺産に登録された細川紙の歴史

細川紙の歴史2014年11月、「細川紙」(埼玉県小川町、東秩父村)が、「石州半紙」(島根県浜田市)、「本美濃紙」(岐阜県美濃市)とともに、ユネスコ無形文化遺産の「和紙・日本の手漉和紙技術」として登録されました。これらの紙は、原料に楮のみを用い、伝統的な製法と製作用具によってつくられています。
 小川町周辺の製紙の歴史は非常に古く、奈良時代の「正倉院文書」には「武蔵国紙480帳」が納められたという

もっとみる
紙の力~中国から伝来し、日本で発展した「紙」の歴史~

紙の力~中国から伝来し、日本で発展した「紙」の歴史~

紙漉きの技術は仏教伝来とともに中国から日本に伝わった。その後、日本では自生していた楮などを原材料に、独自に紙漉きの技術が発展していく。 一方、中国では竹や藁、青檀などさまざまな材料を探索し、その原材料に基づいた技術が発展してきた。こうして、日本と中国の紙漉き技術は異なる道を進んだが、中国の紙は各時代の日本に「高級紙」として輸入され、大事に使われてきた。
本稿ではそうした歴史をたどり、ユネスコ無形

もっとみる
"漆画"~漆と絵画の出逢い~

"漆画"~漆と絵画の出逢い~

文:「和華」編集部 写真提供:周榕清

中国の漆工芸文化は歴史が古く、漆は八千年来、途切れることなく使われてきた。叡智 あふれる古代人は、漆を用いた数多くの芸術品を残しており、これらは中国の遺産の宝庫に無くてはならない重要な一部となっている。
漆画は漆文化における絵画芸術に起源があり、絵画と漆工芸二重の意味で芸術的価値がある。
福建漆画の周榕清氏とともに、漆画の世界を探ってゆこう。

周榕清

もっとみる
日中「うるしの彩り」~住友春翠コレクション~

日中「うるしの彩り」~住友春翠コレクション~

漆黒と金銀が織りなす美の世界

中国の漆工芸は彫漆、螺鈿をはじめとする多彩な技法によって発展を続け、皇帝貴族たちのステータスシンボルとなった。一方、日本で制作された漆器は平安以降、一貫して蒔絵が主流であり中国とは異なった展開を見せた。今回は、両者の好対照を観るとともに、住友春翠が愛した中国文物の好みとその美意識も探った。

▼「黒漆青貝芦葉達磨香合」明時代,16 世紀 泉屋博古館分館

香合の身は

もっとみる