日中「うるしの彩り」~住友春翠コレクション~
漆黒と金銀が織りなす美の世界
中国の漆工芸は彫漆、螺鈿をはじめとする多彩な技法によって発展を続け、皇帝貴族たちのステータスシンボルとなった。一方、日本で制作された漆器は平安以降、一貫して蒔絵が主流であり中国とは異なった展開を見せた。今回は、両者の好対照を観るとともに、住友春翠が愛した中国文物の好みとその美意識も探った。
▼「黒漆青貝芦葉達磨香合」明時代,16 世紀 泉屋博古館分館
香合の身はハ角に面取りし、螺細で達磨を賛美する語を一面に一語ずつ記してある。達磨図は足利義政が相阿弥に下絵を描かせたとも。
▼「藤棚蒔絵十柱香箱」江戸時代 泉屋博古館分館
蓋の四側面に大きく窓を開けた台差造の2段の重ねで、銀製火道具・火道具建や香札、秋草蒔絵札筒などの諸道具を収める箱
住友春翠が愛した中国文物の好み、その美意識
住友コレクションは、住友家により代々受け継がれた美術品から形成されている。その中でもコレクションの基礎を築いた人物として住友家 15代住友吉左衞門友純 (号春翠,1864-1926)があげられ るが、明治時代「煎茶派の総大将」とも称されるほど煎茶趣味に傾倒 していた。中国の漆器、古代青銅器のコレクション、螺鈿や堆朱など文物好みを収集したのも煎茶趣味から始まっている。
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