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非行

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息子の非行の日々
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2020年6月の記事一覧

私が分かったこと

私が分かったこと

やっと思い出話が終わった。
現在に追いついた。
次男が非行に走ってから巣立つまでの7年間を一気に振り返った。

次男の非行というのは分かりやすい出来事であって結局は私自身のことを知るために起きたことなのかもしれない。

自分が何を怖がり何を守ろうとしているのか。
本当の自分の本音に気づけるまでに長く時間がかかった。普段感じる感情以外の本当の本音があることにも気づいていなかった。

自分の本音に気づ

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バイバイ

バイバイ

引越しの日。
次男の荷作りはあっという間だ。 
重たい荷物をいくつも運べるようになった次男。
夫が手際よくどんどん車に詰め込んでいく。

とくに会話もないが頼もしく感じた。

あっという間に部屋は空っぽになった。
この部屋での思い出は数え切れない。

何度もベットで乱闘をした。
何度も次男の部屋で言い合いをした。
物を投げられピシャリと目の前でドアを閉められた。

狭い6畳間に友だち、彼女、祖父母

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何度目の別れになるだろう

何度目の別れになるだろう

次男が我が家から独り立ちしようとしていた。
夫から自立を促されたこともあるが本人も考えていたようだった。

夫は18で家を出て働いた。
長男も18で家を出て大学へ行った。
次男は色んなところを出たり入ったり繰り返しながら結局1番長く家にいた。

「一緒に家探しに行こうか?相談に乗るよ。」
と言ったが次男は自分であっという間に決めてきた。次男が何かを始めるときの瞬発力はすばらいものがある。決断力を見

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私の在り方

私の在り方

次男が成人を迎えてから、それをきっかけに私も自分の在り方を意識するようになっていった。

次男が非行に走ったことで母親としての罪悪感からしなくていいことまで尻拭いし、責任を取り続けた。
本人に責任を取らせなかった。
未成年だから子どもだからと逃げられる環境を作り続けた。
逃げられる最後の砦は必要だったが、次男のためではなく私の保身のために動いていたことに気づいた。

そんな私の在り方を変えたかった

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自分の本性

自分の本性

ある日次男の腕にライオンの絵が描かれていた。
とても上手な絵でライオンがガォーと吠えていた。

見た瞬間
「それ……ボールペン?」と聞いた。
次男は返事の代わりに鼻で笑った。

「ボールペン?」
「…」
「ボールペンで書いたの?」
「…」
「ボールペンやろ?」
「…笑」
「えーーーーーーーー!!!」だった。

次男はタトゥーを入れた。
私のことを見もしない次男。ライオンだけは私と目が合う。

銭湯

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子どもから大人へ

子どもから大人へ

少年院を出てから免許を取ったり取り消されたりと相変わらずな次男ももうすぐ二十歳になろうとしていた。あの頃は次男が二十歳を迎えるのを心待ちにしていた。終わりの見えない毎日から解放されたかった。

未成年のしたことは親が責任を負わなければいけないと思っていた。成人するまで私は責任を持ったという証が欲しかったのかもしれない。
二十歳までは、二十歳までは…と指折り数えるようなそんな気持ちだった。

そうし

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悲しい思い出

悲しい思い出

次男の交通違反が続いた頃からまたうまくいかない。
仕事のお弁当の有無を聞いてもちゃんと返事しない、
起きる時間を聞いてもはっきり聞こえない、
夕食の有無を聞いても黙っている、
おはよう、おかえり、おやすみを言ってもすべて無視。

肉体労働でしんどいのかもしれないが目に余る勝手さだった。返事がないなら作らない、起こさない、を宣言し貫けばよかった。

あの頃の私には毅然とした態度が足りなかった。
こう

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理解できない

理解できない

次男は仕事へ行き休みの日は一日中遊んだ。
そしてある日ポストに手紙が届いた。
次男宛の手紙が届くときはいつも胸がぎゅっとなる。

次男がスピード違反をしてオービスに写真を撮られたことを伝える内容だった。
60キロのところを90キロ出していたようで即免停になった。

大きな道路でスピードが出てしまうのは多少理解できるが、免許とりたての初心者が一般道路でこのスピードを出せるのが信じられなかった。

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私に思うこと

私に思うこと

また一旦休憩して私のこと。

次男のことをきっかけにいろいろあったが結局は自分のことだと感じる。
次男はただの登場人物、息子2だ。
私が主役で私が中心でお話は進むだけのこと。
どんなに息子2のことで悩もうが夫のことで気を揉もうが息子1が励ましてくれようが私の話なんだ。

私が何を感じて何を怖がり何に後悔し何に喜ぶのか
全部私のことなんだ。

起こる出来事に過敏に反応する私。
怖がりたくなくて後悔し

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次男と車

次男と車

少年院を出た次男は無事に免許を取得した。
そしてあっという間に仕事も見つけてきた。
どこから見つけて来るのか分からないが、
ハローワークや履歴書などとは無縁の次男だった。

仕事にも行き、家にもお金を入れ新しい生活が始まった。

次男は時々家の車を貸して欲しいと言い、大きなワンボックスを運転して遊びに出かけた。
自分だけの空間で音楽を聞いたり、友達と遠くまでドライブに行くのは楽しそうだった。
保護

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次男の手紙

次男の手紙

誕生日に面会に行ったあと次男から何度か手紙がきた。

「にいちゃんがデザインしたTシャツはめちゃ良かったと思います。でも父さんが着こなしてるから良い感じに見えたのかなと思います。」

「父さんはいつも走ったり筋トレしてたけど俺はそういうの苦手だったのに、ここではずっと続けています。父さんが続けていたのも身体がなまるのが嫌だったからかなとか思います。」

「今回のことで父さんに迷惑をかけたことを数え

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夫と長男と次男

夫と長男と次男

次男の面会にも行かず様子も聞かない夫は相変わらずだったが、私はそれをよしとした。
やれるだけをやると決めた自分の気持ちを貫き、夫にも優しく明るく過ごしていた。

手放せないものがたくさんある時はしんどい。
どうなってももういいや、成るようにしかならない、ただ物事が起こるだけと思えたらずいぶん楽な気がした。

ある時夫と外食をした。
食事が終わるころ夫が泣いた。

夫は泣かないので泣くと悲しい。つら

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長男

長男

今日は初めて長男のことを書いてみようと思う。

長男は小さな頃から手がかからない子だった。
聞き分けがよくわがままを言うこともほとんどなかった。
誰の空間も邪魔しないような空気感で、家にいても居たの?と思うほど気配が無くよく驚かされた。

初孫で両家の祖父母から愛された。
大人の用事で連れ回すことがあっても自分なりの時間を過ごすことが出来た。
絵が好きで本が好きで静かで物を丁寧に扱う子だった。

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想いが変わること

想いが変わること

鍵のかかったドアをいくつも開けてもらい次男と面会をした。
あの頃どんなことを話しただろう。
あれだけ反抗していた次男でも話す相手は私しかいなかった。

テレビの話や新聞広告に載っていた本を差し入れして欲しいなどそんな話だった。

次男はどんなことを考えていただろうと思う。

なんとなく元気のない日もあった。
辛いとも言わなかった。
次男は自分の気持ちをあまり言葉にしなかった。
小さな頃は誰よりも喜

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