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散人きどり<2> 家のまわりのぶらぶら歩き~バビロン再訪#35
散歩とは優れて都市的な行為であった
江戸時代においては「散歩は『はしたないことで、してはならぬ行儀であった』」という大佛次郎の説を川本三郎が紹介している。(「路地を歩く」 『老いの荷風』 白水社 2017)。
名所めぐりや物見遊山は江戸の最も盛んなレジャーであったが、同じ外出でも目的がないぶらぶら歩きの場合はそうではなかったようだ。身分制があり、勤勉が尊ばれた社会にあって、大の大人がさしたる
散人きどり<1> 家のまわりのぶらぶら歩き~バビロン再訪#34
無聊を託つ(ぶりょうをかこつ)という言い方がある。
広辞苑(第五版)には、無聊とは「心配事があって楽しくないこと」「たいくつ」とあり、託つとは「他のせいにする」「恨んで言う。ぐちをこぼす」とある。
ステイホームを強いられている現在(★1)のわたしたちのこころもちそのものだ。
「不要不急」という言葉がことあるごとに使われ、すっかり定着した。一体、なにが「不要不急」で、なにがそうではないの
マンションのルーツを体験する<3> 晴海高層アパート@集合住宅歴史館~バビロン再訪#33
日本における鉄筋コンクリート造の集合住宅について、その100年の歴史を展示するのがUR都市機構の集合住宅歴史館(★)です。すでに取り壊されてしまった歴史的な集合住宅(部分)が移築・再現されています。
前回<2>、前々回<1>に続き、八王子のUR集合住宅歴史館で今の日本のマンションのルーツを体験してみました。
公団初のエレベーターつき高層集合住宅、晴海高層アパート
1955年(昭和30年)に
マンションのルーツを体験する<2> ダイニング・キッチンという発明@集合住宅歴史館~バビロン再訪#32
日本における鉄筋コンクリート造の集合住宅について、その100年の歴史を展示するのがUR都市機構の集合住宅歴史館(★)です。すでに取り壊されてしまった歴史的な集合住宅(部分)が移築・再現されています。
八王子のUR集合住宅歴史館を訪ね、今の日本のマンションのルーツを体験してみました。
ちゃぶ台のある暮らしを一変させたダイニング・キッチン(DK)
前回の下記事「日本のマンションのルーツを体験す
マンションのルーツを体験する<1> 同潤会・代官山アパート@集合住宅歴史館~バビロン再訪#31
日本で初めての鉄筋コンクリート造の集合住宅は、1916年(大正5年)に作られた軍艦島30号棟だと言われています。軍艦島(端島)は長崎県にある三菱の炭鉱採掘の島だったところであり、30号棟はそこで働く労働者のための住宅として作られました。
世界で最初のコンクリート集合住宅は、オーギュスト・ペレによる1903年のパリのフランクリン通りの集合住宅です。ペレは当時の新素材だったコンクリートに世界で最初
昼下がりの文喫 本に囲まれるvol.5~バビロン再訪#30
六本木の夜の海に浮かんだ孤島のような存在だったABC(詳しくは下の「本に囲まれるvol.4」を)。
その跡に2018年末にオープンしたのが、入場料を払って利用するという新しい試みの本屋 文喫だ。
文喫の運営は取次大手の日販傘下のリブロプラス。名前から分かるようにリブロプラスは、西武百貨店池袋店の本屋からスタートし、セゾン文化の発信の一翼を担っていたリブロが母体となっている。
文喫を
孤独の不動産<後編> 風景の孤独な目撃者 ~バビロン再訪#28
『孤独のグルメ』を実践するには不動産業界に職を得るのが最適だ(孤独の不動産<前編>)。
物件を見に行く合間に、あるいは物件見地と称して、主人公井之頭五郎ばりに『孤独のグルメ』を実践できるのが<孤独の不動産>だ。
『孤独のグルメ』といえば、今は松重豊主演で放映されているテレビ番組(テレビ東京系)が有名だが、もともとは原作・久住昌之、作画・谷口ジローのコンビによる漫画(1994年~1996年月
孤独の不動産<前編>『孤独のグルメ』を実践するには不動産業が最適だ ~バビロン再訪#27
『孤独のグルメ』を実践するには不動産業界に職を得るのが最適だ。
それもマンションやオフィスや商業ビルの開発業務に携わるのが最適だ。営業やマーケティングや商品企画もいい。
人と物件、それだけで成り立つのが不動産業だ。実際は宅建免許もパソコンも必要だが・・・。
会社の売り上げも利益もリスクもたったひとつの物件に左右される。たったひとつの物件が会社を飛躍させ、あるいは会社を倒産させる。それが
麻布と坂と図書館と 本に囲まれるvol.3~バビロン再訪#25
理想的な一日というものがあるとするならば、麻布の坂と図書館をめぐる一日は、僕のなかでは、かなりそれに近い一日といえる。
麻布とは旧15区の麻布区だったエリア。現住居表示でいうと、麻布とついている住所、六本木とついている住所、南青山6丁目、7丁目そして南青山4丁目の一部を指す。
大使館とホテルと私立中高と高級マンション、そして六本木。麻布といえばそんなイメージだろうか。今ではいくつかの大規模
本に囲まれるvol.2《ショウナイホテル スイデンテラス》のライブラリー~バビロン再訪#24
あなたがホテルを選ぶときの基準はなんでしょうか?
観光や街歩きに便利な立地、話題のカフェやレストランがあり、ロビーは豪華で、客室はクリーンで広々、素晴らしい眺望や庭園が楽しめ、至れり尽くせりのコンシェルジュがいて、できれば星付きブランドのお墨付きも欲しいし、おまけに料金が手ごろetc.
せっかくの旅行だし、苦労して休みを取ったのだか、どうせ泊まるのならと、あれもこれも、ついつい欲張りになり
本に囲まれるvol.1 ライブラリーという宇宙~バビロン再訪#23
ライブラリーは、今やマンションの共用施設の定番のひとつと言っても良いアイテムです。
マンションの共用施設にライブラリーが設けられるようになったのは《センチュリー・パークタワー》(三井不動産、1999年竣工)あたりからでしょうか。
《センチュリー・パークタワー》の33・34階に設けられた共用施設のコンセプトは、マナー・ハウス(英国荘園領主の館)というものでした。そこに設けられたライブラリーも
ベトナム料理事始め<下>~バビロン再訪#20
1970年代。まだに見ぬベトナム料理への妄想を掻き立てられたのが開高健のエッセイでした。
「この国の人がよくやるように焼肉をレタスの葉にくるみ、ツンツンとドクダミのように匂う香葉(シャンツァイ)をいっしょにそれにくるみ、ニュクマムをちょっとつけて食べると、惨禍の国にも夜の一瞬の鼓腹撃壌はあらわれるのだった。
みんな
『デップ(いい)』
『デップ・ラム(とてもいい)』
と口ぐちにいった。」(
映画が描くバブルの実相とメンタリティー<4> 『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』~バビロン再訪#21
80年代バブルを描いた日本映画は少ない。『バブルへGO!! タイムマシンはドラム式』(馬場康夫監督 2007年)はその数少ない一本。
これまで紹介したハリウッドの3作(★1)が、金融バブルの崩壊の当事者たちをリアルに描くフィクションだったり、リーマンショックの実態を暴露するノンフィクションだったりするのとは打って変わって、こちらは80年代バブルへの思い入れを込めて描くノスタルジック・コメディー
映画が描くバブルの実相とメンタリティ<3>『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実』~バビロン再訪#17
リーマンショックの内実を描いたアカデミー・ドキュメンタリー映画賞受賞作
2008年のリーマンショックの際、日本でもディベロッパーやゼネコンの倒産が相次いだ。80年代バブルの影響が少なく、急拡大、急成長を誇っていた新興ディベロッパーや中堅ゼネコンがバタバタと潰れていく様子は「突然死」と呼ばれた。
「突然死」の理由は、開発の失敗や保有資産の値下がりや営業赤字ではなく、世界的な信用収縮による資金