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弁護士・公認会計士。人生をおもしろがるため、備忘録を綴る場所。

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    文献等から得た知識や日々の経験を知性に発酵させるための場所です。知識・経験に自分なりの酵母を入れて、知性になるのを待つというコンセプトです。

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固定された記事

知識を吸収するだけでは足りない理由 学び方#3

我々は、日々、多くのことを学んでいるが、学び方は大きく二つに分類される。 ひとつは、知識を学ぶことである。書籍や論稿、雑誌、インターネットの記事、あるいは、セミ…

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10か月前
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組織でどう生きるか:『はじめての経営組織論』(有斐閣、2019) ブックレビュー#5

我々は、生まれたときから「組織」と共に生きている。 生まれて間もないころは家庭という組織に守られて。 保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学といった教育機関…

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9か月前
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想像力は組織を繁栄に導くか 醸造#7

戦争が起きたとき、見ず知らずの人たちを同じ国に住む仲間(国民)として、仲間のために命がけで戦う。 記憶に新しいワールド・ベースボール・クラシックを含め、ビックイ…

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9か月前
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私たちは正しく考えているのか:『考える方法 中学生からの大学講義2』 ブックレビュー#4

スマートフォンでSNSを開けば、瞬時に読める量の文章で、問題に対する“答え”らしきものが数多く提示されている。 殊更に、特定のSNSをやり玉にあげたいわけではないが、…

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10か月前
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あなたも私も聞いているようで聞いていない:『プロカウンセラーの聞く技術』 ブックレビュー#3

「あなたは人の話を聞くことができますか」 と問われたら、大抵の方は「はい」と答えるのではないかと思います。 では、 「あなたは人の話を聞くのが得意ですか」「あなた…

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10か月前
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仕事で感情との板挟みに苦悩する方へ:『のびのび働く技術』(早川書房、2020) ブックレビュー#2

「働く」という言葉から連想する言葉を挙げてください。 と問われたら、どんな言葉が浮かんでくるだろうか。 ・生産性 ・効率的 ・論理、ロジック ・統計、客観的な数値 …

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10か月前
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ラーニングログ#1「世界経済の歴史〔第2版〕」

1 学びの動機 大学受験は理系(センター試験は倫理選択(世代がばれる))、大学の学部は経済学部だが経済史はそこまで突っ込んで勉強していない(大学時代に歴史全般を…

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10か月前
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心を亡くすほどの忙しさを感じる現代人にとっての必読書:ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店、1976) ブックレビュー#1

「現代人は忙しい。」 というのは、日常的によく聞くフレーズだ。また、それは日々の生活の大前提となっている。 忙しい毎日の中で時間を効率的に使うためのテクニックが…

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10か月前
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法律実務家としての旅路をこれから歩む皆様へ(弁護士としての5年間の振り返りを添えて)

 皆様はじめまして。さむ(とむやむ)と申します。  この記事は、裏 法務系 Advent Calendar 2022の9日目のエントリーです。bkremoteさんからバトンを繋いで頂きました…

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1年前
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第3の○○という響きが癒してくれるものー本を熟成させるという選択肢ー

選択肢は少なすぎても、多すぎてもいけない。 選択肢が2つであるがゆえに、極端な結果になってしまう場合、第3の選択肢は救世主となり得る。 その証左として、世の中は…

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1年前
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「リファラル採用の落とし穴」との記事に触れて 醸造#6

以下の記事(「リファラル採用の落とし穴」2022年11月7日日本経済新聞電子版)に触れた所感を記しておきたい。 昨今では、優秀な人材を採用するために、自社の従業員から…

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1年前
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初心を思い出すーデータ漏洩防止に役立つ原始的なガジェットー

一昔前であれば、出張は、手持ちの仕事から距離を置くことができたかもしれません。 が、スマートフォン含めた電子デバイスにより、今はいつでもどこでも仕事ができる時代…

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1年前
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「天才」という言葉との向き合い方

世の中には、自分を天才だと信じて疑わない人と、自分が天才ではないと自覚した人がいる。 自分を天才だと信じたまま死ねたらどんなに幸せだろう(揶揄しているわけではな…

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1年前
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モチベーションを高める方法を探る前に考えるべきこと 学び方#2

巷では、モチベーションを高める方法●選といった記事や投稿が溢れている。 そういった情報が有益であること自体は否定しないが、モチベーションが上がらないときに必要な…

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1年前
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問題設定そのものを問う 醸造#5

1 相談内容≒検討課題 弁護士の仕事は、依頼者からの相談を端緒とすることが多い(弁護士の方から商品をパッケージとして作って営業をかけにいくということも昨今は増え…

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1年前
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その時々に自分にとって必要な本とは 学び方#1

どんな本と向き合うべきか、というのが、本記事の主題です。 巷では、毎日のように新刊が発売され、インフルエンサーたちがこぞって本を宣伝します。 他人に勧められた本…

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1年前
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知識を吸収するだけでは足りない理由 学び方#3

知識を吸収するだけでは足りない理由 学び方#3

我々は、日々、多くのことを学んでいるが、学び方は大きく二つに分類される。

ひとつは、知識を学ぶことである。書籍や論稿、雑誌、インターネットの記事、あるいは、セミナー、ウェビナー、eラーニングなど様々な媒体を通じて、情報をインプットすることである。
「知識からの学び」は、対象が媒体を通じて伝達可能であることが前提となる。自明のことであるが、伝達可能なことしか学ぶことができない。
この学びは、客観的

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組織でどう生きるか:『はじめての経営組織論』(有斐閣、2019) ブックレビュー#5

組織でどう生きるか:『はじめての経営組織論』(有斐閣、2019) ブックレビュー#5

我々は、生まれたときから「組織」と共に生きている。

生まれて間もないころは家庭という組織に守られて。
保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学といった教育機関で社会の構成員になるための手ほどきを受ける。教育機関も組織である。
そして、教育機関を離れ、会社などの営利団体その他の組織に属して生計を立てる。あるいは、家庭という組織の運営メンバーになる。

「組織」における自らの立ち位置や組織構成員と

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想像力は組織を繁栄に導くか 醸造#7

想像力は組織を繁栄に導くか 醸造#7

戦争が起きたとき、見ず知らずの人たちを同じ国に住む仲間(国民)として、仲間のために命がけで戦う。
記憶に新しいワールド・ベースボール・クラシックを含め、ビックイベントでは、選手と面識がない沢山の人が、その選手の一挙手一投足を見守り応援する。

こういった事象について、『考える方法 中学生からの大学講義2』では、「こういったことが起きるのは、国民が同じ仲間だという想像力(イマジネーション)でつながっ

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私たちは正しく考えているのか:『考える方法 中学生からの大学講義2』 ブックレビュー#4

私たちは正しく考えているのか:『考える方法 中学生からの大学講義2』 ブックレビュー#4

スマートフォンでSNSを開けば、瞬時に読める量の文章で、問題に対する“答え”らしきものが数多く提示されている。
殊更に、特定のSNSをやり玉にあげたいわけではないが、世界は140文字(今はそれ以上の文字数での投稿も可能になっているので、短時間で読める文字数)で記述可能であるとの神話を、我々は受け入れ始めてはいないか。

映像と文字・音声をセットにされると、すぐにわかった気になることができる。隙間時

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あなたも私も聞いているようで聞いていない:『プロカウンセラーの聞く技術』 ブックレビュー#3

あなたも私も聞いているようで聞いていない:『プロカウンセラーの聞く技術』 ブックレビュー#3

「あなたは人の話を聞くことができますか」
と問われたら、大抵の方は「はい」と答えるのではないかと思います。

では、
「あなたは人の話を聞くのが得意ですか」「あなたは聞き上手ですか」
と問われたらどうでしょうか。
この質問にも、「私は人の話をきちんと聞くことができます」と答える方が多いのではないでしょうか。

ところで、
・あなたの部下は、仕事でのミスやトラブルを適時に情報共有してくれるでしょうか

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仕事で感情との板挟みに苦悩する方へ:『のびのび働く技術』(早川書房、2020) ブックレビュー#2

仕事で感情との板挟みに苦悩する方へ:『のびのび働く技術』(早川書房、2020) ブックレビュー#2

「働く」という言葉から連想する言葉を挙げてください。
と問われたら、どんな言葉が浮かんでくるだろうか。

・生産性
・効率的
・論理、ロジック
・統計、客観的な数値
・裏付け、エビデンス

上記のような言葉は比較的すぐに浮かんでくるのではないだろうか。

一方で、「感情」という言葉はなかなか出てこないのではないだろうか(財務・会計・経理の素養がある人は「勘定」という言葉が浮かんだかもしれない。)。

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ラーニングログ#1「世界経済の歴史〔第2版〕」

ラーニングログ#1「世界経済の歴史〔第2版〕」

1 学びの動機

大学受験は理系(センター試験は倫理選択(世代がばれる))、大学の学部は経済学部だが経済史はそこまで突っ込んで勉強していない(大学時代に歴史全般を丁寧に学ぶこともしなかった)、という歴史に難ありな私である。

世界史の教科書を読むのが即効性がありそうなものだが、何か特定の分野から歴史を紐解く書物の方が、まずは読み続けられそうだ。

ということで手に取ったのがこちらの書籍。

日々の

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心を亡くすほどの忙しさを感じる現代人にとっての必読書:ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店、1976) ブックレビュー#1

心を亡くすほどの忙しさを感じる現代人にとっての必読書:ミヒャエル・エンデ『モモ』(岩波書店、1976) ブックレビュー#1

「現代人は忙しい。」
というのは、日常的によく聞くフレーズだ。また、それは日々の生活の大前提となっている。

忙しい毎日の中で時間を効率的に使うためのテクニックがもてはやされ、私たちの時短をサポートする様々なサービスの広告が流れる。娯楽のためのコンテンツも倍速で見る時代だ。

時短テクやサービスの利用によって、時間を節約しているはずなのに、忙しさはちっとも変わらない。それどころか、テクノロジーの発

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法律実務家としての旅路をこれから歩む皆様へ(弁護士としての5年間の振り返りを添えて)

 皆様はじめまして。さむ(とむやむ)と申します。
 この記事は、裏 法務系 Advent Calendar 2022の9日目のエントリーです。bkremoteさんからバトンを繋いで頂きました。

 法務系 Advent Calendarには今年が初参戦となります。どうかお手柔らかに、温かい目でご笑覧ください。

 この記事では、第1で、キャリアを考え始めた受験生、実務家になるべく歩み始めた司法修習

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第3の○○という響きが癒してくれるものー本を熟成させるという選択肢ー

選択肢は少なすぎても、多すぎてもいけない。

選択肢が2つであるがゆえに、極端な結果になってしまう場合、第3の選択肢は救世主となり得る。

その証左として、世の中は「第3の○○」で溢れている。

「最近、第3の○○って流行ってるよね。ところで、第1と第2って何だったっけ?」。

コロナ禍で在宅ワークの時間が長くなり、自宅の書籍は冊数が増えるばかりである。

ワーケーションという言葉も世の中に溶け込

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「リファラル採用の落とし穴」との記事に触れて 醸造#6

以下の記事(「リファラル採用の落とし穴」2022年11月7日日本経済新聞電子版)に触れた所感を記しておきたい。

昨今では、優秀な人材を採用するために、自社の従業員からの紹介・推薦に基づき採用を基づきリファラル採用が行われることが少なくない。

リファラル採用は、採用する側にとっても採用される側にとっても、メリットが大きいが、この記事は、多様性という観点から、リファラル採用のデメリットに触れている

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初心を思い出すーデータ漏洩防止に役立つ原始的なガジェットー

一昔前であれば、出張は、手持ちの仕事から距離を置くことができたかもしれません。
が、スマートフォン含めた電子デバイスにより、今はいつでもどこでも仕事ができる時代です。

逆に言えば、仕事と距離を置くのが難しい時代ともいえます。

仕事との距離は人それぞれですが、スマートフォンとの距離感が遠くなりすぎること、つまり、スマートフォンをなくすなんてことがあると一大事です。

そして、出張はものを無くすリ

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「天才」という言葉との向き合い方

世の中には、自分を天才だと信じて疑わない人と、自分が天才ではないと自覚した人がいる。

自分を天才だと信じたまま死ねたらどんなに幸せだろう(揶揄しているわけではなく、心からそう思う。)。

しかし、悲しいかな、人間という種に生まれ落ちた大多数は、天才ではない(というより、天才というのは、相対的な側面を帯びており、少数のことを指すことが暗黙の了解になっているため、大多数が天才ということは原理的に難し

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モチベーションを高める方法を探る前に考えるべきこと 学び方#2

巷では、モチベーションを高める方法●選といった記事や投稿が溢れている。

そういった情報が有益であること自体は否定しないが、モチベーションが上がらないときに必要なのは、モチベーションを高めるテクニックなのか、ということには気を付けたい。

試験勉強を例にとろう。

想像して頂きたい。
あなたは、とある試験に合格することを志して勉強をスタートした。
はじめのうちは勉強の新鮮さもあって、勉強が楽しかっ

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問題設定そのものを問う 醸造#5

1 相談内容≒検討課題

弁護士の仕事は、依頼者からの相談を端緒とすることが多い(弁護士の方から商品をパッケージとして作って営業をかけにいくということも昨今は増えているが、それも、依頼者の潜在的なニーズ(相談)を見越していることが多い。)。

依頼者からの相談内容は、検討の端緒であって、検討課題そのものではない。

具体例を挙げる。
顧問先から、「この業務委託契約書をざっとレビューしてください。」

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その時々に自分にとって必要な本とは 学び方#1

どんな本と向き合うべきか、というのが、本記事の主題です。

巷では、毎日のように新刊が発売され、インフルエンサーたちがこぞって本を宣伝します。

他人に勧められた本が、そのときに自分が読む本として適切とは限りません。人それぞれ知的な背景が全く違うので、誰かにとって適切な本が、他の誰かにとって適切とは限らないのです。

また、やもすると、読むべき本が無限に増え、自らの可処分時間の短さを(あるいはこの

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